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ヒカリとキオク  作者: 有沢 諒
ほんとうのじぶん
14/45

知られたくない想い

 だからって説明なんて出来ないし、どうしようと困って。


「えっと、それは・・・」

「ヒカリちゃん!」


 言葉を濁そうとしていると、突然戸口から呼ばれる。

 大きな声に、驚いて見ると昨日の茶髪の・・・アキラとか言う男子が、手を振っていて。


 そういえば、去り際に教室に行くとか言ってたっけ?


 そして、そのまま教室に入ってくる。

 クラスのみんなは大声に驚いて、しかも、堂々と別のクラスの教室に乗り込んでくるアキラにあっけに取られている様子。

 でも、当の本人はは全くそんな視線は気にしていなくて。

 イケメンだからたいていの事は許されるという自信なのか、はたまたただのKYなのか。


 うわあ、やっぱりこの人、苦手・・・。


「遊びに来たよ」


 語尾に音符がついてるみたいな、軽い調子に閉口する。


 正直な話、遊びに来て欲しくないんですけど・・・。


「あの、まだお弁当中だから・・・」

「あ、そっか、ゴメン・・・あ~いいな、おいしそうなお弁当。もしかして、ヒカリちゃんの手作り?」

「え? いえ、お母さんの・・・」


 ヒカリは自分で作ることもあったみたいだけど、記憶をなくした自分には母親が気を遣って台所には立たせてもらっていない。


「そっか、ひとつちょうだい」


 言って、返事も聞かずに私のお弁当から、からあげをひとつ摘んで口に放り込んだ。


 んな・・・!?


 突然のことに、驚いて固まると。


「・・・お前、なれなれしすぎだろ」


 リュウの低い声がした。

 見ると、剣呑な表情のリュウがいつの間にか近くに居て。


「・・・また、あんたか・・・あんたに関係無いって言ったよね?」


 私とユリちゃんの座っている席をはさんでにらみ合う二人。

 距離を置こうと言っていたリュウも、さすがに図々しい態度のアキラには黙っていられないみたいで。

 そのこと自体は、自分ひとりじゃ心もとなかったから助かったんだけど。

 二人がにらみ合っている状況は、それ以上に困った。

 だって、ユリちゃんがいきなりのことにびっくりして、心なしか怯えてるみたいに見えるから。


「あの、アキラ君!」


 意を決して声をかけると、呼ばれたアキラもリュウもちょっと驚いたみたいに目を丸くして。


「教室で騒ぐとみんなに迷惑だし、ちょっと廊下で話したいんだけど」


 とりあえず、ここから離れるのが一番と思って声をかける。


 それを聞いた二人の反応はまさに真逆で。

 アキラは嬉しそうに顔をほころばせて、リュウは苦虫を噛み潰したみたいな顔になった。


「ヒカリ・・・」

「うん、じゃ行こっか」


 なにか言いかけたリュウを遮るみたいにアキラが声をあげる。


 立ち上がり際に心配そうなリュウに、大丈夫と笑顔を見せて。

 歩き出そうとしたら、エスコートするみたいにアキラの手が背中に伸びてきて、びっくりして避ける。

 そのまま足早に廊下に出た。


「ヒカリちゃん・・・なんか警戒してる?」


 出たとたん、アキラがこんなことを言ってくるから目を丸くする。


「え?」

「なんか・・・」


 そう言って手を伸ばしてくるから、触れられない位置まで離れる。

 アキラは苦笑してこっちを見ていて。


 そういえば、昨日はここまで触られたくないとか思ってなかったかも。

 意識しているとかそういうんじゃなくて、どうでも良かったから。

 でも、今は厭なんだ単純に。


「もしかして、ヒカリちゃん・・・好きな人、できた?」


 突然言い当てられて目を見開く。


「な、なんで・・・?」

「うーん、勘? 俺、そういう勘はいいんだよね」


 ちょっと強引でただのKYかと思ったら、意外な面もあるらしい。

 感心するよりもなんだか呆れが勝ってしまっていると。


「それにさ、今のヒカリちゃんてわかりやすいよね。・・・好きなヤツってあれでしょ」


 後半、ちょっと顔を近づけて声を潜めて言う。

 そして少しだけ後ろを振り返った、その視線の先にいるのはリュウで。


 なんでわかったんだろ・・・もしかして、私の態度ってバレバレ? いやいや、そんなわけないし!


 そうは思っても、ばれちゃったことが恥ずかしくて、思わずカッと赤くなる。


 っていうか、アキラって勘がいいっていうか、エスパー並みじゃないの?


 なんて思って見上げると。


「やっぱりそっか・・・」


 って、呟いた。


 ?? ってことは、まさか!?


「もしかして・・・カマをかけたの?」


 アキラはどこか楽しそうに笑って。


「今のヒカリちゃんて素直だよね~。ホント、残念」


 すっごい好みなのにさ、とかいう顔が本当に楽しそうで。

 理解できずにボケッと見返してしまう。


 ・・・やっぱり、この人、苦手。


「でも・・・」


 そう言うと、アキラは急に肩に手を回してきた。

 びっくりして、突き飛ばそうとしたんだけど。


「しかたないから、あきらめてあげる」


 耳もとでささやかれた、楽しそうな声に驚いて手が止まる。

 意味と口調がぜんぜん合ってないけど、それは今までも同じだったから、これがアキラの普通なのかもしれない。


「俺、勝てない勝負は最初からしない主義なんだよね」


「・・・離れろ」


 急にリュウの声がして、アキラがぱっと手を離して、なおかつ距離を置いた。


「・・・ホント、怖いな~。俺、暴力嫌いなんだけど?」


 言いながらも、やっぱり怖がっているように見えない、どこか人を食ったような態度。

 いつの間にか近くに来ていたリュウが、そんなアキラを睨みつけるように見ている。


「まあ、いいや。話は終わったし。・・・そんな怖い顔をしなくても、もうヒカリちゃんには近づかないから安心しなよ」

「・・・は?」


 急なアキラの宣言に目を丸くするリュウ。


「ヒカリちゃん、好きなヤツがいるんだってさ。しかたないよね」


 そして爆弾を落として。

 じゃあ、俺、戻るわ~と、とても振られたとは思えない笑顔で自分の教室に帰っていった。

 その軽い調子に、あっけに取られて見送る。


 やっぱり理解できない・・・でも、これで付きまとわれないなら、良かったのかな・・・?


 少しホッとしていると。


「・・・ヒカリ」


 リュウの低い声に呼ばれて、見上げる。


「今の話、本当か?」


 真剣な眼差しにぶつかって驚く。


 今の話って・・・なんのことだっけ?


 思わず瞬くと。


「・・・好きなヤツ、居るのか?」


 そりゃ居るよ、目の前に・・・・・・って。


 そこで初めて、アキラが落とした爆弾に気が付いた。

 カアッと頬が熱くなるのを感じた。

 頭から湯気が出るみたいな。


 どんな顔をしたらいいかわからないから、ずっと見ないように、目を合わせないようにしていたのに。

 アキラの行動に振り回されて忘れていた。


 慌ててうつむくけど、きっと今の顔見られた。

 しかも、こんな至近距離で。

 恥ずかしくって、どうしたらいいのかわからない。


 絶対に叶わない想いなら、はじめから知られたくなんて無いのに。

 そもそも記憶が戻ったら、こんな感情は消えてしまうはずで。

 だから、リュウには絶対言いたくない。知られたくない。

 そう思っていたのに。


「だれ?」


 聞かれて、肩が震える。


「・・・私、お昼途中だから」


 リュウの横を通って教室に戻ろうとすると、手首を掴まれて止められる。


「・・・もしかして、セイか?」


 ぜんぜん考えもしなかった人の名前を挙げられて、びっくりしてリュウの顔を見る。

 眉間にシワを寄せた顔は、心配しているのか怒っているのか、よくわからないような表情で。


 あ・・・。


 ちかちかと何かが瞬いた気がした。

 懐かしいような、嬉しいような感情が湧き上がる。


 ・・・これって、もしかして。

 ヒカリの記憶・・・?


 思った瞬間、怖くなって、リュウから思いっきり顔を背ける。


「・・・言いたくない」


 すると、掴んでいたリュウの手から力が抜けて。

 その隙に手を抜くと、そのまま顔も見ずに教室に入る。


 席に戻ると、ユリちゃんが心配そうにこっちを見ていて。


「ごめんね。騒がせちゃって」

「大丈夫ですか」

「うん」


 安心させようと笑顔をつくると、ユリちゃんもようやくいつもの表情に戻る。

 私がユリちゃんと話していたからか、教室に入ってきたリュウも何も言わずに友達のところに戻っていって。

 少しホッとして残りのお弁当を片付けた。



 **********

この辺でキャラが暴走して、超短編のつもりが無理だとあきらめました(^^;

ヒカリもリュウも言うこと聞いてくれない・・・当て馬でアキラ君まで出したのに・・・(涙)

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