挙動不審
「はよ、ヒカリ」
「・・・おはよう」
迎えに来てくれたリュウは、登校時間を早めたからか、生あくびをかみ殺している。
一方、私はというと・・・。
昨日の今日で気持ちの整理がついていなくて、リュウの顔すらまともに見れない。
なのに。
「ヒカリ? ・・・どうかしたか?」
急に顔を覗き込まれてびっくりする。
「な、なにが・・・?」
「・・・なにがって」
覗き込まれて否応なしに合ってしまった目を逸らす。
リュウはちょっと驚いたような呆れたような雰囲気で、瞬いていて。
わかってる。どう見たって挙動不審だってことは。
でも、本当にどうしたらいいのかわからないから、ちょっと放っておいて欲しいっていうのが本音だ。
下手したら赤くなりそうな顔を必死で抑えて、とりあえず表情には出さないようにしてそっぽを向く。
理由はどうあれ、放っておいて欲しいという雰囲気は伝わったのか、リュウはちょっとため息を吐いて。
「ま、いっか・・・行くぞ」
そう言って歩き出したから、ほっとした。
**********
学校に着くと、リュウは宣言どおり、昨日までみたいにずっと一緒にいる事はなくて。
休み時間は、仲が良いらしい男子たちとしゃべったり、お昼もユリちゃんが私と一緒なのを確認してから、同じ仲間で食べていた。
リュウの前にいると、どんな顔をしたらいいのかわからないから正直ほっとする。
けど・・・。
こうして離れてみると、複雑な気持ち。
ずっと、リュウはヒカリにばかりを気にかけてくれていて。
ウザいとか思ったことは無かったけど、過保護すぎとは思っていた。
そうやって一緒にいたときは気づかなかったけど。
リュウには普通に友達がいて、仲が良いのはヒカリばかりじゃなくて。
そんなの当たり前のことなのに、現実に目の前にすると、なぜかモヤモヤする。
・・・なんだろ、これ・・・さみしい・・・のかな。
ずっと、自分ばかりを見てくれていたリュウの存在が遠くなったから。
そんな気持ちになったのかなと漠然と思った。
お弁当を食べながら、こっそりリュウのことを見ていると。
「・・・あの、ヒカリさん」
「あ、なに? ユリちゃん」
リュウが『ユリちゃん』と呼んでいたから、いつの間にか同じように呼んでいるが、彼女は特に嫌そうな顔もしなくて、ちょっとほっとする。
ユリちゃんは、少しだけ後ろの・・・リュウたちのいる方を気にして、なにやらバカ話で盛り上がって、こっちを気にしてない様子なのを確認してから、少し声を潜めて言った。
「昨日の放課後、リュウ君とケンカしたってホントですか?」
食べてたものを噴出さなかったのは奇跡だろう。
咀嚼途中だった卵焼きをごっくんと飲み込んで。
更にペットボトルのお茶で流し込んでみたけど、動揺する気持ちまでは飲み込めなかった。
ええと、つまり・・・・・・。
「それって、もしかして・・・ウワサになってるとか?」
質問で返すと、ユリちゃんはちょっと困ったみたいに眉を下げて、こくんと頷く。
あああぁぁぁ・・・マジですか。
いや、ちゃんと考えれば昨日の自分は普通に目立っていた。
止まらなかったとはいえ、泣き顔のままこの教室に入ったし、クラスメイトも何人か残っていたし。
そのまま校門まで行ったから、クラスの子たち以外にも、泣いてるところを見られてる。
それに。
「ヒカリさんの目じり、ちょっと腫れてるっぽいですし」
言われて、つい頬を触る。
さすがに昨日あれだけ泣いたらちょっと腫れてしまったのだ。
それでも、良く見れば程度なんだけど。
でも・・・。
「ケンカじゃないの・・・私が情緒不安定になっちゃって、一方的に怒鳴り散らしたっていうか・・・泣きまくっちゃって。でも、おかげでちょっとすっきりしたの」
微笑むと、ユリちゃんは目を瞬いて。
「なら、良かったですね」
微笑んでくれたから、嬉しくなって頷く。
だけど、昨日のあれは失敗だったと、ひそかに落ち込む。
ヒカリがウワサになりやすいんだって、昨日認識したばかりだったのに。
やっぱり泣きながら移動するのは良くなかった。
でも、不慣れな学校で一人きりで泣ける場所なんてわからなかったし。
とにかく帰りたくてしかたなかったから。
しかもウワサの内容がリュウとケンカって・・・。
あながち外れてもいないから性質が悪い。
その上、今日からは少し距離を置くことにしたから、傍から見たらケンカしてるって思われても仕方ない。
・・・でも、リュウとずっと一緒にいたら、今の私は心臓がもたない。
ちらっと視線を投げると、ちょうどリュウもこっちを見て、目が合ってびっくりして視線をそらしてしまう。
リュウはちょっと驚いたみたいに目を見開いていて。
うわあ・・・余計に変なウワサがたちそう・・・。
でも、どうしたって平静ではいられないんだから仕方ない。
バツの悪い思いでいると。
「・・・でも、それなら今日はなんで、そんななんですか?」
心底不思議そうなユリちゃんの声にハッとする。
自分でもわかってる・・・挙動不審だって事は。
すみません、長くなりすぎたのでシーンぶった切ってます(^^;




