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ヒカリとキオク  作者: 有沢 諒
ほんとうのじぶん
12/45

気づいた気持ち

「・・・ヒカリ、居るか?」


 いつものようにリュウがベランダから声をかけてきた。


 あんな別れ方をしたから、今日はさすがにこないかもと思っていたから少しホッとする。

 でも謝らなきゃと思ったらまた緊張して、少しどきどきしながら鍵を開けた。


 そのままガラス戸も開けると、リュウは少しホッとしたような顔をしていて。

 リュウもやっぱり来にくかったんだなって思ったら、急に怒鳴り散らしたこととかが恥ずかしくなった。

 顔が見れなくて、うつむきながらリュウが部屋に入ってくるのを待つ。


 けれど、いつもはすぐに定位置の椅子に座るのに、今日はベランダに立ったまま部屋にすら入らない。


「リュウ?」


 さすがに不安になって顔を見ると。


「ごめんっ」


 目が合ったとたんに頭を下げられる。

 驚いて瞬いていると、顔を上げたリュウがまっすぐこちらを見て。


「俺、すげえ無神経なこと言った・・・悪かった」


 そして、もう一度、深々と頭を下げるから慌てる。


「待って、違うわ。あれは私が勝手にひがんだっていうか、八つ当たりしただけだから・・・私のほうこそ、ごめんなさい」


 謝ると、意外だったのか頭を上げたリュウはちょっと驚いた顔をして、それからふっと気の抜けたように笑う。


「・・・俺だけには・・・か」


 呟いた言葉が小さくて、よく聞き取れなかった。


「え?」

「・・・なんでもねーよ。それより、今度はあんなふうに爆発する前に、不満があったら言えよな」

「うん、ごめんなさい。・・・セイにも同じようなこと言われたし、これからは気をつける」


 言うと、ちょっと眉間にシワを寄せて。


「つーか、なんだよ気をつけるって、また変に遠慮してるだろ」


 すっと伸びた手が、頬に触れる。

 まだ、少し腫れぼったい感じがする目じりを優しく撫でて。


 急なことに驚いて固まっていると、それに気づいたらしいリュウも少し照れたのか、目線を逸らしてぱっと手が離れていく。


「一応、誤解の無いように言っておくけど」


 少し、強い口調で言う、その頬が赤い気がした。


「う、うん」

「今のお前のこと、信用してないわけじゃないから」


 逸らしていた視線が戻る。


「でも、言い方が悪かったし・・・確かに過保護って思われても仕方ないことをしたって思う。・・・でも」


 真っ直ぐに見下ろしてくる視線は真摯で。


「ただ、心配なんだよ」


 言われた言葉に嘘は無いんだと信じられた。


「うん、ごめんなさい。・・・本当はちゃんとわかってるの。皆が、リュウが心配してくれてるって。

 ・・・だから、明日からも一緒に学校行ってくれる?」


 言うと、リュウはすごくホッとした顔になって。


「ああ、もちろん」


 頷いた顔が満面の笑みで。

 いつもは気の強い印象を与える、つり気味の目じりが少し下がって。

 ちょっとだけ幼く見える笑顔。

 すごく可愛いなって思った。


 ああ、やっぱりこの笑顔が好き。


 思ったところでハッとなる。


 ・・・私、今なにを考えた?


「あ、でも。明日からは学校内ではちょっと距離置くな」

「え?」

「教室ではユリちゃんもいるしさ。俺、今までちょっとウザかっただろ?」


 そんなことは無いけど、それより別のことに気を取られていて、否定の言葉がすぐに出てこなかった。

 それをリュウは肯定と取ったようで、ちょっと真剣な表情になる。


「でも、できたら一人になんのだけはさけろよ。・・・今日のあいつもだけど、中にはちょっと強引なヤツもいるしさ」


 えーと、確かに断っても食い下がられるのはめんどくさいし、それ以前にそうそう告白されたりって無いと思うけど、一人にならなければそもそも告白とかされない・・・か?


 無意識に頷くと、リュウはホッとしたように頬を緩めて。


「じゃあ、今日はこれで帰るな。また明日」


 だけど、ベランダの柵に手を掛けたところで、急にこっちを向いて真顔になる。


「あのさ、・・・セイって・・・」

「え?」

「・・・いや、やっぱなんでもねえ。じゃ、おやすみ」


 そうして、リュウは今度こそ柵を越えて帰っていった。

 その姿が部屋に入って、窓が閉まるまで見送って。

 ガラス戸を閉めてカーテンを引く。


 そして、そのままずるずるとしゃがみこんだ。


 私、リュウが好き・・・?


 気づいた気持ちに愕然となる。


 ああ、そっか。

 だから私は。

 ヒカリじゃなくて今の自分を見て欲しかったんだ。


 ・・・リュウにだけは。


 だけど、この気持ちになんの意味があるんだろう。

 いずれ消えてしまうだろう『私』なのに・・・。

 それに、リュウは『私』じゃなくて『ヒカリ』の方が大切なのに・・・。


 ・・・気づいたときには失恋って・・・本当にバカみたい。


 自嘲するように笑って、両手で顔を覆った。



 **********

キリのいいところで分けたらまたかなり短めに・・・(^^;

難しいなあ・・・(汗)

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