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気付けば幼女、気付けば異世界  作者: パンセ
一章 学院都市イールギール編
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第二話 お近づきの印にパンツでも

学院編、気づいたら下ネタばっかし。

話、進まねえ。

 エルフの少女、ルイルに会ってから十数分後。


 俺たちは目的の学院、魔法学院イールギールの門の前にいた。


 「って言うか学院の名前が都市の名前なのかよ」


 「この学院はこの都市が造られる切っ掛けになった歴史ある学院だからのう。日夜この場所で様々な魔法関連の研究が行われている。今も昔も魔法の最先端をいく、近隣の国とも比較しても最高峰の学院じゃ。じゃから、この学院に入学するのは並大抵の事ではない」


 ああ、前の世界でいう東大みたいなものか。いや、近隣の国とか言ってるからオクスフォード位なのかも知れない。....魔法使えないから入れないとか言ってたけど、魔法使えても入れなかったような気がする。


 そういえば、ルイルも学生ぽかったけど、どこの学生なのだろうか。出来れば、会いたくは無いが。


 「お主、先程のエルフのことを考えておるじゃろう?」


 何時の間にか眼前にエリスの顔があった。俺は慌てて首をふる。


 「えっ、いや」


 「顔が曇っておるぞ。ーーいいか、あのエルフの事は忘れろ。精霊名フェアリーネームが無くても、エルフ以外誰もお主を貶めたり、見下したりせん。エルフの価値に振り回される必要はない。お主はエルフである前に、転生者じゃろうが」


 俺を見つめるエリスの瞳は力強く、俺の爛れた思考を正常なものに立ち直らせていくような気がした。幾分胸がスッキリし、エリスに頷きながら言葉を返す。


 「わかった」


 俺の言葉にエリスはにかっと笑った。


 「ならば、よし!では、行くぞ」


 「ちょ、待て!」


 エリスが駆け足で学院の門を潜る。俺も慌てて、エリスの後を追った。


 





 

 「なあ、これおかしくないか」


 「煩い、さっさと登れ」


 学院に入って十数分。俺とエリスはなぜか建物の壁(・・・・)に手と足をかけてよじ登っていた。どういう事だ、これ。


 「何で壁によじ登ってんだよ。どう考えても犯罪者の手口だぞ、これ」


 なんとか三世とかよくやってる気がする。でも、夜ならともかく真昼にやるってどうよ。


 「ええい!これには深い訳があるんじゃが、今説明する暇はない。兎に角!わしとお主はこの塔の頂上の部屋に辿り着けばよい!」


 「頂上の部屋には何があるんだ?」


 「学院長がおる」


 「何で、中からいかないんだよ!」


 「驚かすためじゃ!」


 何をいっているんだこいつ。ついていけない。俺だけ、ちゃんと中から行こうかな。


 「飛んでいけば、ばれる。気づかれぬよう、学院長の部屋に辿り着くにはこの方法しか無いんじゃ!」


 そんな力説されても困る。大体何で驚かす必要があるんだよ。驚かさなくて良いじゃないか。そのままスッと真っ直ぐ学院長の部屋に行けよ。何で壁よじ登ってるんだよ。


 俺は上にいるエリスに視線を向ける。


 「エリス!」


 「なんじゃ、煩い!」


 「パンツ見えてるぞ!」


 真っ黒のやつがな。


 「見るな!助平!!」


 ちっ、ババアの癖に恥じらいはあるのかよ。因みに俺はノーパンだ。転生の際にパンツが都合よくついてくるだろうか?いや、そんな事はない。全裸ではなかったが。来ていたのは縫い目もない真っ白な貫頭衣だった。


 そうだ、エリスにパンツ借りればよかったじゃん。


 「エリス!」


 「なんじゃ、煩い!」


 「後でパンツ借して!」


 「自分で買いに行け!!」


 確かに。ここは都市なんだから普通にパンツ売ってるな。エリスにパンツ借りる必要無いな。そもそも、あんな真っ黒の大胆なパンツ恥ずかしくて履けねえわ。真っ白で無地のやつ買おっと。


 もちろん、上で黒パン見せつけてる奴の金で。タクシー料金はまだ払ってもらって無いからな。乗り心地は自己責任だ。


 「ねえ、まだ!?」


 風が強いのなんの。いい加減寒いわ。もう大分登っているのに、中々たどり着かない。


 「もうすぐじゃ!そろそろ窓が見えてくる。ふっふっふっ、やられっぱなしだと思うなよ、エルク・イールギール!今度こそ、泡を吹かせてやるわ!」


 『誰が泡を吹くって?』


 「ぎゃっ!?」


 その時、塔の壁が変化し人の顔になってにょきっと飛び出してきた。エリスに目の前で。


 吃驚したエリスは思わず塔の壁から手を放して、真下にいる俺に尻から落下してきた。エリスの黒パンが俺の顔面に迫ってくる!


 「ふぎゃ!?」


 「くろっ!!?」


 とりあえず、尻から人の顔面に落下してくるような無作法な奴のパンツは剥ぎ取っておきました。







 ところかわって、学院長の部屋。


 エリスの馬鹿な計画はばれてしまったのでちゃんと下から塔の中に入って登ってきた次第だ。二度手間だ。


 「随分と時間がかかったね」


 俺たち二人の目の前にいるのはこの学院の学院長、エルク・イールギールだ。背が高く、細身の眼鏡をかけた知的な男だ。見た目は二十代後半。学院長といえば、ひげもっさもっさの白髪のお爺さんというイメージだが、全然若い。こんな人が学院長なのか。


 「ちょっと、剥ぐのに手間取って」


 「い、言うな!」

 

 となりでエリスがローブを押さえながら、もじもじしている。一丁前に乙女振ってんじゃねえぞ。


 「?何があったかわからないが、エリス、君が来てくれて何よりだ。魔法学院イールギールは君を心から歓迎するよ。私の要請に答えてくれてありがとう」


 「あ、ああ」


 壁をよじ登って驚かそうとしたことはなかった事になったんだろうか。学院長、凄い笑顔だ。


 「それで、そこのエルフの子は?」


 学院長の視線がエリスから俺の方にむく。彼はどっかの雇われロリババアと違い、権力者だ。さっきの惨状を見て、エリスの推薦が何処まで効くかどうかもわからない。


 とりあえず、媚を売っておこう。


 「あのー、これはつまらないものですが」


 「うん、これは?」


 「お、お主!?」


 俺は学院長に懐にしまっておいた、黒い布切れを渡した。後ろでロリなババアがこの世の終わりのような声をあげているが知ったこっちゃない。


 「ふむ」


 「え、エルク!」


 学院長がその布切れの端と端とを持って広げる。あらわれたのは、小さな真っ黒な三角形の布。それはパンツと呼ばれるものだ。それは、前の世界での女性下着と酷似している。おそらく、転生者達がこれほどまでない情熱を注いで再現したものだろう。極限までのコンパクトさと美しさを兼ね備えたそれはこの世界独自で発展してきた産物とは到底思えない。


 そして、大胆なまでの真っ黒。これを履いていた人物は一体どれ程の猛者であったのか。俺如きには到底及びもつかない。


 断言しよう、その布切れにはそれと同じ重さの黄金の価値がある。


 ーーあんま、ねえな、価値。


 「生憎ーー」


 学院長はその黒パンツの端に人指し指を通して、くるくると回し始めた。


 「ーー僕には、子どもと年寄りの趣味はない」


 ぐさぐさと隣のロリババアにぶっとい杭が突き刺さるのを幻視した。


 かつかつと学院長は悠々とパンツをくるくると回しながら俺たちの周りを歩く。まるで見せつけるかのように。誰かに回しているパンツを見せつけるかのように!


 学院長は何度もローブを押さえながら下を向いて赤面する誰かさんの周りを何度も周りながら、パンツを回す。


 な、なんて鬼畜なんだ!


 流石、最高峰の魔法学院のトップ。半端じゃねえ。


 やがて、満足したのか、学院長は元の位置に戻った。


 「ふむ、君の名は何と言ったかね。エルフの少女」


 俺は答えた。


 「コウです」


 「素晴らしい贈り物を有難う、コウ君。僕にとってこれはただの布切れに違いないが、ある方々にとっては万金の価値があるものなんだ。とても、嬉しいよ」


 方々、ね。その方々はあの布切れに万金を払ってどうするつもりだろうか。考えたくもないな。


 「有難うございます」


 すると学院長は近くにあった棚の引き出しから白いハンカチを取り出すと手にもったパンツをその上に置いて包み始めたではないか。


 ちら、と横をみる。そこには顔を真っ赤にした少女が涙目になっていた。助けを求めるかのようにこっちを見ている。知るか。


 学院長はしっかりとハンカチでパンツを包むと、包みをハンカチのあった引き出しになおしこんだ。パタンと引き出しの軽やかな音が部屋に響いた。


 「エリス」


 学院長がこの場にいるもう一人の少女の名前を呼ぶ。


 「ひ、ひゃい!」


 おい、口調。


 「次、あんな事をしたらーーさっきもらった贈り物は学院の運営資金になるからね。覚えておいてくれたまえ」


 「は、はい」


 あちゃー、やっぱ、なかったことになってなかったか!


 




 




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