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第二話 魔物も当然います

 そういえば、異世界って魔物とかいう危険生物がいるんだっけ?


 今更ながらに思い出す異世界の基本設定。魔物がいない異世界なんて異世界じゃない。魔物がいてからこそ魔王はいるのだし、俺tueeeができるのだ。どうして、そんなことを忘れていたのか。俺の馬鹿!


 「ぐぎゃ、ぐぎゃ」

 「ぐぎゃぎゃ」

 「ぐぎ、ぐぎゃ」


 「はー、不味いよこれは」


 食べ物を探して森を歩き回って十分。こん棒をもった俺と同じくらいの背丈の痩せた緑色の肌をした奴等と出会ってしまった。これは、あれだ。異世界ものでお馴染みのゴブリンだ。あの、めっちゃ弱いやつ。


 だが、俺は手ぶらだ。しかも幼女だ。戦う術なんてしらない。耳長くてエルフっぽいけど魔法なんて使ったことなーい。


 うわ、詰んでる。


 「不味い、不味い、不味い」


 「ぐぎぐぎ」

 「ぐぎゃ」

 「ぎゃぎゃ」


 ゴブリン達は何か話あうと、俺を囲むようにじりじりと迫ってきた。徐々に手に持っているこん棒が上に上がってきている。どうやら、やる気は満々のようだ。


 しかし、俺は無力だ。このままでは殺されてまう。


 「こんなときは破れかぶれで魔法を唱えてみるとかあるけど....一か八かやってみるか!」


 俺はゴブリンの一体に向けて手のひらを向けた。


 「ふぁ、ファイヤボール!!」


 「ぐぎ?」


 しかし、何も起きなかった。うわ、恥ずかしい。技名とか言ってなにもでないのが一番恥ずかしい!思い過ごしだろうけどゴブリン達の視線が痛い。いや、恥ずかしがっている場合じゃない。


 「だったら残された手段はただ一つ。逃走!」


 俺はその場でくるっと回り背後に向くと全速力で逃走を始めた。


 三十六計逃げるに如かず。つまり、逃げるが勝ちだ。逃げ切ってしまえばこっちのもんである。


 「ぐぎ!」

 「ぎぎゃ!」

 「ぐぎぐぎぎゃ!」


 背後でゴブリン達が怒ったような焦ったような声が聞こえる。ふふ、意表を突かれたな猿ども!俺は逃げ切る!


 幼女といっても侮ることなかれ。ゴブリン達は俺をおってきていたようだが段々ゴブリン達が発する声が小さくなっていった。だが、安心は出来ない。俺は走り続けた。

 

 かなり走って背後を振り返った。そこにはもうゴブリン達の姿は一切見当たらなかった。


 「はん!どうだゴブリン共め、口ほどにもなむぎゅ!」


 走りながら、中指を立てて今はもう見えないゴブリン達を罵倒していたら何か柔らかいものにぶつかった。前方不注意だ。勢いよく突っ込んだからそのぶん勢いよく体が跳ね返されて、たたらを踏んで尻餅をついた。


 しりが痛い。


 「いってー、何にぶつかっ....た?」


 「グルルルルルルル」


 一体何にぶつかったのだろうと前を向くと、そこには茶色の毛がもふもふとしたでっかい熊さんがいた。熊さんとかそんな生易しい感じじゃないけどね。

 ぶつかられて気が立ったのか、めっちゃうなり声を上げて威嚇している。今にも食いついて来そうだ。


 「やっべー」


 「グオオオオオオ!!!!」


 熊の咆哮が森中に響き渡る。声量半端ねえ。思わず耳をふさいだ。


 しかし、これはやばいな。ゴブリンとかレベルじゃないわ。一般人だったらワンパンとかそういうレベルだわ。


 「に、逃げないと。あっ、」


 立ち上がろうとする。けれど、無理だった。足にうまく力が入らず、立てない。


 「こ、腰抜けた」


 「グルルルルル」


 最悪だ。うまく立てずに四苦八苦するなか、熊は一本だけでも人体に大穴を開けられそうな五本の爪が備わった腕を振り上げた。


 殺される。


 振り上げられる熊の腕をみて、そう確信する。そう考えると背筋がぞくっとするような恐怖が身体中に走り、思わず頭を抱えて地面にうずくまってしまった。

 そんなことをしても助からないことはわかっていた。


 だが、その時背後から少女のものと思われる声が響いた。その声に思わず頭を上げる。


 「《麻痺の衝撃パラライズ・インパクト》」


 次の瞬間、どこからともなく閃光がやって来て目の前の熊に直撃し、熊は倒れ伏した。


 魔法、か?


 「おや、エルフの幼子がどうしてこんな場所で血染め熊に襲われておるのじゃ?」


 先程と同じ少女の声が後ろから聞こえた。俺は背後を振り向く。そこには、俺と同じくらいの背丈をした赤髪を腰まで伸ばした少女が草木を掻き分けて出てきていた。


 初の異世界人との遭遇。


 ....つくづく幼女とは縁がありそうだ。


 


 


 


 


 


 


 

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