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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
ギルド長の閑話 
97/104

第十四話 『遺書』

「じゃぁ見逃す?」



 ニッと笑う。

 時と記憶に干渉することの出来る能力――もっともローダン伯は魔力の量が少なく、役に立たないと言っていた――を父親から受け継ぎ。

 術者に面識があり、尚且つ良い感情を強く持つ者のみを思うがままに操る能力と、いかなる術すらも施行する大量の魔力を母親から継いだ。


 それだけでなく、重要書物から抹消された紫の瞳も……。


 紫の瞳は王の証。

 国を背負う者の色。

 支配者の瞳……。


 ……その事実全てを、フィルフィリア様がローダン伯を操り。

 闇に葬った。


 何故。

 私がそれを知っているのか……。

 以前、ミフェイアの教師を引き受けた際。

 フィルフィリア様の遺書。

 それに魔力で記されていた。 


『【紫の瞳は王の証】【国を背負う者の瞳】【支配者の瞳】。私は紫の瞳を持ち生まれた愛しい娘の未来を自由にするべく、眠る愛する夫を操りその事実を消した。罪を犯した。だから、尊き彼の方の怒りをかった。でも、後悔はしていない。ただ、罪悪感はある。だから、これを読めたあなたしか知らない。誰も分からない。だって、この文は一度読めば消えるんですもの!』


 ……と、まぁ。

 そんな感じのふざけた分だったと思う…………。


 

「はぁ……。私は『何も見ていない』、『この場には化け物二人と私しかいなかった』」



 まったく。

 ……術者死亡で、解呪が完全に不可能となり。

 その内容を口にも文字にも出来なくなるような、高度で強力なもの仕掛けるくらいならば、記さねば良いものを…………。 


「うん。それで良し!」


 と。

 諦めの境地に居る私に対し、頷くミフェイア。


「お母様って、意地悪だよね」

「…………ミフェイア。私はなんと言ったか?」

「ふふ。大丈夫。ウチだって、そんな面倒なの請け負いたくない」


 無邪気に笑い、ウインクをかますミフェイアに。

 重い溜息が出た。


「まぁ、そんなどうでも良い事は置いといて。『姉さんは自分でも破れない結界をこの国に張って? ナルシはここの修復』」


 そう言うとともに、セフィニエラはオリジナルの術式を展開、発動させ。

 複雑な絵のような文字のような陣で国を覆い、その場に膝をついて倒れ込み。

 『ナルシ』と呼ばれた隣国の第二王子は言われるままに修復を行い。

 セフィニエラと同じく、地べたに臥した。

 その際。

 顔を盛大に強打していたが、見なかったことにしておこう。


「さて。氷も解けて、すべて。元通り……でも、時間はそのまま。ウチが言いたいこと、分かるよね?」


 整った顔をにたりと歪ませ。

 手を差し出してきた。


「…………少しは残せ」

「もちろん。貴方には仕事があるんだ」


 そう言い晴れやかに笑い。

 時間を戻し。

 切り取り。

 歪め。

 時を止めたところに繋げた。

 これにより。


『私が張った術式は複雑なもので、それを壊すべく。

 セフィニエラと隣国の王子が張り合い、力をぶつけたため。

 二人は魔力不足となり、眠りについた。

 そして。

 その二人が破壊しつくした場を、私が修復し、その二人を送り届けたため、魔力が底を尽きかけた状況で自宅に戻った』


 と言うことになった。

 当然、記憶を操作された人々は誰一人として、それを疑う者はいなかった。


 私はそれが毎度釈然としない。



 それから数日後のことだ。

 ミフェイアがセフィニエラとローダン伯を和解させるべく、動き出したのは……。


「良い? ウチ――」

「ミフェイア。再教育が必要か……?」

「……私、は。姉さんを『化け物』、『悪女』と恐れている少女になるから、ゼグロさんはお父様の書状を持って、迎えに来る役。で、ランはゼグロさんが乗ってくる馬車の御者。後は私の方でなんとでも出来るから、そう言うことでお願いね」 


 指摘すると苦虫を噛み潰した様な顔をしたが、直ぐに言い換え。

 そう、楽しげに語った。




 ――――――――――


 ―――――――



「んで、お前。嫁どおしたよ?」

「マディスタが着せ替え人形にしている」

「……お前の嫁だよな?」

「………………」

「陛下が書類書いてたから、正式にそうなってんだろ?」

「…………あぁ、そうだな。だが、私は認めていない」

「……おまえなぁ…………」


 と。

 まぁ、ゼグロに溜息をつかれた訳だが。

 しばらく若い女に近づきたくないんだ。

 ……男も勘弁だがな。

 まぁ。

 もうしばらくしたら、話くらい聞いてやらんこともない。


 【end】

最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございました。

この後に続くのが、セフィニエラが主人公で短編なんだけど、続編で②と③がある【私の天使はいずこ……?】になります。

でもって【私の天使はいずこ……?】が【名門貴族の変嬢】の基盤になっています。

ちなみにこの閑話は只の補足にかきました。

補足も終わったし、リスティナの話を続けようにもエンド迎えてるし、ごちゃごちゃし過ぎてムリー!

なので、終わりです!

ありがとうございました。

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