第八話 消費
人形に魔力を与え初めて三日。
本日で四日目。
初日までは幸福そうにしていた人形は二日目には複雑そうな顔をするようになり。
三日目には涙を零すようになってしまった。
……魔力の量が多すぎたか?
自室の寝台に腰かけ。
人形を見つめて少々頭を悩ませたが、陛下の気まぐれには付き合っている。
死なせてはいない。
ゼグロの馬鹿が面白がって狸に報告したせいで、明日。
あの狸のもとを訪れねばならん。
しかも、人形は私が着いてから転送するようにと言われている。
まったく。
人形が見たいのであれば『転送しろ』と言えば、喜んで転送してやるというものを……。
狸と馬鹿に割く時間は無い。
明日は、王都より北西の国境警備隊より報告のあった術式のほつれの確認とその強化。
それが済み次第、南東の山中の村へと向かい、魔獣の駆除隊への応援及び怪我人の救護。
その後。
南西とへ飛び、あの化け物がやった大規模破壊の修復。
それらに伴う書類の整理及び、ギルド組員の依頼成功の書類など。
はぁ……。
隣国のナルシスト第二クソ王子が来なければなお良いのだがな……。
そして化け物とそれが衝突し、止めに入らねばならないという状況にならねば良いのだが、無理だろう。
…………職員と組員には、『修復が出来ない』『自分たちでは何十年かかる』と泣き付かれてはいるが……。
まぁ。
変わってしまった地形はもうそのままで良いのではないか?
平原が高原になろうが、土地が沈み湖が出来ようが、雷が常に降るようになろうが、山が消し飛ぼうが。
……そのすべてを私が直さねばならんのだろう……?
…………この国の王族は、魔力量は多いが使える力が他人の心を読み、記憶を書き換えると言う特殊な力以外、これと言って力はない。
と、言われている。
真実かどうかは信用ならん。
記憶を書き換える相手だ。
歴史すら書き換えていても不思議ではない。
ただ真実として言えることは。
全てを私に押し付け動こうとしないということだけだ。
おかげで【ギルド職員=過労死】という方程式が出来あがっている。
【宮廷=過労死】もあるがな。
それは私には関係のないことだ。
ただ、ギルド職員が過労で倒れているのは事実。
辞めさせてくれと泣き付かれたこともある。
数日で出勤してこなくなったこともある。
ブラックという事実はどうしようもないが、それの原因はあの化け物と第二王子だがな。
いっそあの化け物どもを国外に締め出すか……。
力のある魔導師の上位者全てが所属しているこの国ですら、もてあますのだ。
上位者ではなく中位者しかいない周辺国が壊滅する様が目に浮かぶ……。
……嗚呼。
この国も周辺国同様に魔獣の力も弱く、量も少ない上、魔獣化するモノもすくなければな……。
苦戦などありえんというのに……。
まったく、この国の魔獣は強すぎる……。
「はぁ……」
下らんことを考えたな……。
やらねばならんことが山のようにある。
が。
私の魔力はもう少ない。
今夜は明け方まで眠り。
少量でも魔力を回復せねば……。
…………残りを使い切れば、私の体は魔力回復のための長い睡眠をとるのは間違いない。
だが、そうなっては山になった仕事が出来ん。
……今日ぐらい、喰わせずともよいであろう。
そっと寝台から腰を浮かせ、人形から距離ととろうとした。
「っ…………?!」
しかし、腰を浮かせたと同時に強い力で布団の中に引きずり込まれた。
言うまでもなく。
あの悪意がなく得体のしれない酷く淀んだ恐ろしい力によって、だ。
たちの悪いことに私を引きずりこみ、人形を抱え込ませてから魔力を食らってきた……。
「チッ……」
結果。
残り少ない魔力はすべて喰われ。
仕事があるというのに、私は強制的に眠りにつかされた。
魔力すべてを消費した私は、何日後に目覚めるのだろうな。
…………以前は十日ほどであった。
嗚呼……。
国境の(我が国の化け物どもと、その力が余所に行かぬための)術式が修復出来ておらぬ……。
……………………大陸の地形が、大きく変わっていないことを祈ろう…………。
―――――――――――
――――――――




