表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
ギルド長の閑話 
84/104

第二話 対面

 部屋にいざなわれ、対面したのは長く美しい漆黒の髪に、菫の瞳を持つ少女。

 若干目が釣り目ではあるが、愛らしいと表現できるだろう。



「さて。ご用件は何かしら?」


 こてんと小首を傾げ、少女は問うた。

 一瞬何を考えここを訪れたのか忘れてしまっていたが、慌てて思い出す。


「人を、作れると聞いたが、誠か?」


 問うと。

 少女は左手の人差し指を唇に当て、俯き。

 暫し考えるような仕草を見せた。


「……『人』というより、『生身の人形』が正しいと思うわ」


 パッと顔を上げ、言う少女。

 私はその少女の考えが上手くわからない。


「『人』とソレ、どう違う?」

「そうね……。……『動かない』、ということかしら?」


 再び考えるような仕草ののち、少女はそう答えた。

 が。

 良くわからない。



「『動かない』?」

「えぇ。脈と呼吸はしますけど」



 脈と呼吸をしていれば十分、人だろうて……。



「…………『人』ではないのか?」

「えぇ。『意思がない』のよ」

「つまり、魂が入っていないということか?」

「う~ん……。おそらく、そうかしら?」

「…………では、一体作ってもらいたい」



 そのために、この館へ来る前。

 館の主と話をつけた段階で大金をぼったくられたのだからな……。

 今後のため、何も得ることなく帰るわけにはいかんのだ。


「もちろんよ」


 少女はそう言って微笑み。

 自身の隣に、黒くてまがまがしい。

 背筋がゾッとし、胆が冷えるほどの魔力で作られた陣を展開。

 その直後。

 少女の指に一筋の小さな傷が出来、あふれてきた血を、陣が引きこんだ。


 刹那。

 黒くまがまがしい陣は、床にへたり込む、一糸まとわぬ女性へと変わっていた……。


「さぁ、どうぞ。貴方のための人形よ、さっさと持って帰って。言っておいた服は用意してあるのでしょう?」


 『さようなら』

 少女はそう言って執事と共に部屋を立ち去った。


 部屋に残されたのは私と、コレ。


 ……そう言えば、女物の服を一着持ってくるようにと言われていたな。

 まぁ。

 それは馬車の中だがな……。

 さて。

 これを如何にして運べばよいのやら…………。

 しばし考え、着ていたジャケットを脱ぎ、ソレの肩に掛けた。

 すぅ、すぅ、と。

 穏やかな寝息が聞こえた。

 首に手をやると、とくり、とくりと、脈を感じる。


「本当は、眠っているのではあるまいな」


 正直に言って。


 持って帰りたくはないな……。


 だが。

 持って帰らねばならんのだろうなぁ…………。


 嗚呼。

 もう、このような仕事は受けんぞ。


 今回はあのシスコンとこちらの二択だった故。

 仕方なくだ。

 二度は無い。

 あぁ。

 無いとも。

 誰が好き好んでこのような、殺気しか感じぬ所なぞに来るものかっ……!


 一歩でも間違えば、あのシスコンを相手にするのと同じではないかっ……!!


 …………今回の件。

 金銭ともに精神面でも交渉する余地はあるな。


 陛下に詰め寄ろうではないか。


 覚悟しておくがいいさ。


 陛下……。



 私は意気込み。

 ジャケットを掛けた女を抱え。

 馬車へと戻った。


 その際。

 御者役を買ってでた友。

 ゼグロ・フォーズにギョッとした目で見られた……。

 揚句。


『おいおい……それはないだろう』


 と。

 呆れ顔に、瞳に軽蔑の眼差しを浮かべて。


 ゼグロよ。

 勘違いするな。

 私は女気は無いが、こんなものを相手にするほど落ちぶれてなどいないぞ。

 分かっているだろう……?


 お前と同様。

 あのシスコン女のせいで仕事に忙殺されていることを……。 





 ――――――――――


 ―――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ