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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
ギルド長の閑話 
83/104

第一話 憂鬱

 人里離れた森の奥深く。

 そびえ立つ巨大な白亜の壁。

 私の馬車は、どこででもみることのできる大きさで、巨大な壁にしては不釣り合いすぎるほどに小さく、珍しくもない黒に近い木製の門をを潜り抜けた。

 巨大な白亜の壁は、奥が見えぬほど、巨大のようだ。

 そして。

 恐らく壁の中央辺り。

 白い煉瓦のような壁に、屋根は茶色の陶器のようなモノに覆われた平屋建ての。立派な館が広がっていた。


 ・・・・・・約二百年前に記された【ナーマス夫妻の遺言】に記されている禁忌。


 その禁忌に触れることをしながら、無事に生きているという異端者がいると噂を聞き。


 私は館の主と話をつけ。

 この館を訪れた。


『どぅどぅ・・・・・・』


 馬の嘶きに続き、聞きなれた御者の声が聞こえ。

 しばらくして、扉がノックされ、扉が開いた。


 私は馬車を降り、軽く御者の男を労い。

 館の玄関たる両開きの焦げ茶の扉へと向かい、蛇がこちらを向き、顔を上げているノッカーを鳴らす。


 音が響いた直後に、扉は開いた。


 中から出てきたのは、黒髪黒目で燕尾服を身に着けた小奇麗な男。

 男は隙のない礼をし、顔を上げた。


「ようこそお越しくださいました。ヴィセロード・ラン・ファルヴェス様ですね。私は案内を務めさせていただきます、執事のテノールと申します」


 朗らかな笑みを浮かべ、屋敷の中へといざなわれた。


 ―――――――――


 ―――――――



 ――カツン、カツン


 硬質な床にあたる踵の音が、美しい白の廊下に響く。

 前を行く執事は唐突に口を開いた。


「お客様皆様に申し上げておりますことが二つ、ございますので……お聴き逃しの無いよう、お願い申し上げます。まずは一つ。この屋敷内で身分を振りかざすようなことはおやめください」


「…………」


 何を言っているんだこの男。

 私が持っているような身分など、あの化け物変態シスコン女侯爵が居ては、無いに等しかろうに……。

 ……仮に、振りかざそうものならば、プチッとやられるだろうて…………。

 …………さてはこの執事。

 アレの恐ろしさを知らぬな……。

 まぁ。

 知らぬがよかろう……。


 嫌なものを思い出してしまい、少々憂鬱な私の心境などお構いなしに執事は続けた。


「二つ。我らの主に危害を加えようとする行為も……おやめください。以上、この二つをお守りいただけないようであれば……――その命は無いとご理解ください」



 『命は無い』と告げる際、ひやりとする殺気を向けられ。

 それと同様なものを何処からともなく感じた。


 …………嗚呼。

 どうやら要らぬ好奇心を働かせてしまったようだ……。


 ……まぁ、良い。

 いつ巻き添えで死ぬか――否、殺されるか分からん命だ。

 …………つまり、明日が私の命日やも知れん……。

 いっそ、陛下に風邪でもひいたと連絡してしまおうか…………。


 はぁ……。

 そのようなこと、出来るのであればとっくにやっているのだがな。


 …………明日の今頃、私は墓の中だろうか……?


「お客様。こちらでございます」


 執事がそう言い、扉をノックし、それを開けた。


「お客様をお連れしました」

「ご苦労様。どうぞ、お入りになって」


 若い、女の声がした。


 ……もしや、アレの妹ではあるまいな……?

 もしそうであれば、私は早々に引き上げるぞ。



 ―――――――――――


 ――――――――

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