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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
【true end】のその先
79/104

~~~~

 ――――――――――


 ――――――


 ―――時は少し遡り、リスティナの私室。

 

 そこには侵入者と、それを排除するべく屋敷の実力者たちが集結していた。

 後からやってきた料理長も侵入者を見つめ、ため息を一つ。


「…………お前は何をしている?」

「嗚呼。姉さん! 会いたかったっ……! 探したんだよ。居るって言ってた国に行ってみたら居なくて、心配したんだよ? それより、その物騒な皮脱いでよ。せっかく美人なのにもったいないよっ!!」

「黙れ。質問に答えろ愚弟」

「あぁあ……姉さんの声――――良い……」


 恍惚とした表情を見せ、自身の肩を掻き抱いた青年。

 それをただただ。

 どうしたモノかと見つめる料理長の背後ろのテノールたち。



「「「「「…………」」」」」


 否。

 ただただドン引きしていた……。

 そして目の前の青年に『姉さん』と、呼びかけられていた彼女の背を無言で見つめている。


「………………」


 ついでに、そう呼ばれ。

 恍惚とした表情で熱い眼差しを向けられている彼女ですら、テノールたちと同様――否。それ以上に引きまくっていた。

 そう。


 出来うることならばこの場から逃げ出したいとすら、考えてしまうほどに……。




「? 姉さん? ねぇ? もっと……もっと、僕を罵って…………?」

「……………………」

「姉さん? 姉さん。ねえさん……ねぇさん…………!」



「「「「「「………………」」」」」」


 これに、青年を覗くこの場の人間が口を閉ざし。

 料理長は頬を引き攣らせ。

 目の前の現実を受け入れることが出来ず。

 一瞬のうちに術を展開し、発動させ、青年を青年の国に転送した。

 

 静寂に包まれた室内。

 そこに棒を飲んだように直立不動となった使用人たち。


 彼らは突如として現れた青年により。

 底知れぬ恐怖を味わったのだった……。



 ―――――――――


 ―――――――


 さて。

 もう結構時間がたったのですが、誰一人として口を開きません。

 本当に、どうしてしまったのかしら……?

 でも、このままだと料理長たちが休めません。

 それは由々しきこと。


 ……と、言うより。

 もう私が眠いの…………。

 皆のおかげで安心したせいね。

 まぁ。

 あの男がどうなったのかを聞くまでは、本当に安心できませんけれど……。

 今の所は脅威は去ったということよね。


 ……ただ…………。

 ゼシオ以外の三人の様子が気になるのだけれど、離しにくい事なのかもしれないわね。

 少し時間をおいて、考えがまとまってからでも遅くは無いと思うの。

 そう、提案してみようかしら……?


「ねぇ。テノール、ルシオ、料理長。何か話しにくいことなのでしょう? 無理しなくていいわ。話せるようになって話してくれて」

「…………ひめ、さん……。すまねぇな、気ぃ使わせちまって……」

 

 と、困った顔の料理長。

 何処か困惑したようにも見えていたテノールとルシオ。

 彼らは私の言葉に若干ではありますが、ホッと安堵の表情を浮かべました……。

 

 ………………よほど、話にくい事なのね……。

 

「それじゃぁ私、もう一度眠るわ。おやすみなさい」

「あ、あぁ……。おやすみ、姫さん」

「おやすみなさいませ、お嬢様」

「「…………」」


 こうして。

 リビングで四人と別れ、自室に戻りました。


 が。

 何故か、私のベットにあの男が腰かけているではありませんか。

 

 え?

 あれ?

 テノールたちが処理したのではなかったの……?

 

 もしかして、幻覚?

 私、もしかして幻覚を見せられているのかしら?

 


 もしそうだとしたら悪趣味ね…………。 


 

 ……………………。



 …………………………。



 ……………………………………。


 しばし無言で、ドアノブに手を掛けたまま扉を開け放ち。

 私のベットに座っている男を見つめあい。


 ――――男が立ち上がった。


「ッ! いやぁぁああああああああああ!!」


 ――バタァンッッ!


 荒々しく扉を閉め。

 とっさにリビングを目指し、駆けだした。


 え?

 淑女としてのプライド?

 成人している人間としてのプライド?

  

 そんなもの、命には代えられないわ!!


 

「テノールッ! 料理長っ! ルシオ、ぜしおぉぉぉ! だれか、誰かぁぁぁああああ!! ぅわあぁぁぁあああん!!」


 思わず子供の様に泣き叫びながら廊下を疾走……。


 ……なりふりなど、なりふりなどかまっていられないのよっ!! 

 

「姫さん?!」

「お嬢様?!」


 突然並んで現れた料理長とテノール。

 私は恐怖のあまり二人にぶつかるようにして、彼らの片方の腕(料理長は右腕、テノールは左腕)を両腕に抱きしめた。


「り、りょうり、ちょ。ての、る、ぅ、ぅうううっぅぅ……っ…………!」

「ど、どどどうしたんだ?! 姫さん!」

「お嬢様。落ち着いて下さい。何があったのですか?」

「……ひっ……ひっく……。ぅ、ぅうぅぅ……お、おとこ、男が……、さ、さっきの……男が、居たの…………!」

「「?!」」

 

 二人が驚く気配を感じ。

 私達の居る場所に、あっという間にやってきたルシオとゼシオが武器を構える気配を、背後で感じた……。


 そして。


 彼らの少し先に、あの男の気配も…………。

弟 ハ 真正 ノ 変態 二 進化 シテ イタ。

姉 ハ 現実 ヲ 拒否 シタ。

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