第十話 故郷で……
「私ね。この国に生まれて、この国で死んで、この国の土に帰りたいの。だから、この国がなくなるのはイヤなの。だから、守ってくださらない?」
「おじょう、さま……。それでは、死ぬというのですか?」
「えぇ。もう目も耳、匂いが分からない。おまけに、体も……感覚がなくなって、きているの。もう少しで、死ぬこと、は、間違い……ないわ」
「っ……」
「おねが、ぃょ……。み、な……」
急激に声が出なくなったけれど、お構いなしに微笑んだ。
皆は怪訝そう。
しょうがないわよね。
だってさっきまで普通に話していたに、声がおかしくなるんだもの。
でも、私ね。
苦しくないの。
きっと呪いのせいよ。
私が一人納得して笑みを深めれば、皆ひどく悔しげで、悲しげ。
私だって、皆と別れたくないわ。
でも……
いずれ会えるわよね。
いずれ…………。
そう考えると、急激に先ほどまで見えていたモノすべてがみえなくなりました。
おそらく槍が私の手から離れたのでしょう。
構わないわ。
もう、なんだか疲れたの……。
あぁ。
そう言えば、お姉様に『ちゃんと帰って来る』って。
『私の事を話す』って、約束、したのに…………。
約束、やぶっちゃった……。
ごめんなさい。
お姉様……。
………………あ……。
このままだと、お姉様が暴走しちゃいそうね……。
だって私が死んでも私が増やしちゃったお姉様とあの変態は消えないのですもの。
あの二体はもうすでに私の手を離れていて。
お姉様と変態が本体で、あれらは分身の様な形になってしまっていますの。
だから、お姉様と変態の本体が死なない限り消えません。
…………どうしましょう……。
そうだわ。
私、まだ意識があるということは、まだ術を使おうと思えば使えるはずです。
幸い、術は体の感覚は必要ありませんもの。
でも、誰を作ったら良いのかしら?
お姉様を、確実に止められる方……。
まぁ良いわ。
その人を作りましょう。
代償はまだ無事な私の体すべて。
全部あげる。
だから、お姉様を止めて。
お姉様の悲しみを。
暴走を。
それらすべてを、確実に止められる人……。
そんな人が本当にいるのか解らないわ。
でも、絶対に居ることを願うのと共に、まだ体が動くことを願って、術を発動させた。
成功したかなんて、分からない…………。
でも。
成功していると、良いわね……。
さようなら。
みんな……ありがとう…………。
* * *




