第九話 天変地異
私はテノールたちが居るであろう場所に、料理長に連れられて戻った。
テノールとマリア、メイサに叱られてしまったわ……。
心配させないでって。
で。
双子なのだけれど、私を蔑みの目で見てきたの。
おまけに無言で『馬鹿』って言ったのよ。
酷いわ……。
こうして私がテノールたちの傍に戻り。
槍を受け取ってすぐに耳の聞こえが悪くなり。
目が見えなくなって、体の感覚が鈍くなってきた頃。
敵国から降伏の使者が来て。
戦争が終わった。
お姉さま方が何をして、敵国を追い詰めたかなんて、知りたくなかったので、知らないということにしました。
えぇ。
知りませんとも。
これ見よがしに敵の国の王都。
王城を狙い。
強力な陣で作った光の球をいくつも落とし、破壊。
その後。
雷を落として城下に火災を引き起こし、それに逃げ惑う者たちを土色の柱で消して。
さらには火災を広げるべく炎の竜を作り、国中を駆け巡らせて火の海に。
すべてを焼き尽くし。
国中の川と言う川を氾濫させ、焼き尽くしたそれらすべてを飲み込んだ。
何てこと。
知りたくなかったわ…………。
なんで余計なことまで私に教えてくるのかしらね。
この槍は……。
「リースーッ!!」
元気な、聞きなれたミリーの声。
私にはそれが聞こえなかった。
でも、槍が教えてくれます。
『彼女は正面にいる』と。
だから私は動かず、彼女が来るのを待つ。
私の目には、もう何も見えない。
でも、槍が教えてくれる。
槍が……私の頭の中に直接映像として、教えてくれるの。
「リースッ……。ご、めん……なさい……」
ドンとミリーが抱き着いて来て、私は彼女を落ちつかせるように、抱きしめ返す。
「大丈夫よ。ミリー……。料理長、ミリーを陛下のもとへ。きっと心配しておられるでしょうから」
「あぁ。分かった」
「お願いね」
料理長は一つ頷いて、微笑み。
ミリーを連れて消えました。
「お嬢さ―――」
「ねぇ、皆。ミリーとこの国をお願いね。拒否は許さない。どうしても嫌って言うのなら、命令よ。ミリーとこの国を守りなさい」
テノールの言葉を遮り。
少し高圧的に言うと、皆は少し動揺しているわ。
…………とても罪悪感を感じます……。
……でも、はっきり言っておかなくてはなりません。
私が、声を発せるうちに……。
「皆、ごめんなさい。私、貴方たちが大好きよ。今までありがとう」
「お嬢様。それは、別れの挨拶のようですから、やめてください」
困った顔で言ったテノール。
私は彼の問いに頭を振り、槍に『隠した傷を見えるように出来るのか』それを問うと同時に、テノールたち皆が激しく動揺したわ。
当たり前ね。
だって即死でおかしくない場所に刺さったんだもの。
……でも、私が今生きているのも、あの魔導師のせい。
呪が矢に込められていなければ、私はあの瞬間に死んでいたのだから…………。
きっと、あの魔導師が呪に長けていなかったおかげね。
だって。
私みたいに呪に適性が過多より過ぎた者であれば、矢なんて必要ないの。
弓ですらね。
呪はそれ自体がモノなの。
だからそれの姿を変えさせることなんて、簡単なモノよ。
『それが出来ないということは、あの魔導師は呪に長けていない』
そう、導けるの。




