第八話 血
私はそれを感じた後。
別の手を打つ事にしたわ。
何をするのかって?
決まっているでしょう?
この体から流れ出ている大量の血を使うの。
だってこのままではもったいないわ。
なんて考えながら、私はすぐに闇色の陣を発動させる。
すると地面やドレスを濡らしていた血をすべてそれが吸い上げた。
おかげでドレスは穴が開いているけれど、血がなくなって、綺麗になったわ。
これでテノールたちに怪しまれないかしら?
あぁいけない。
急がなくては。
思い浮かべるのは、サラ様。
でも、私はお姉様が良いわ。
だって『お姉様』って憧れていたの。
私。
一人っ子だったから……。
本当はね。
とっても、とっても嬉しかったの。
お姉様が私を家族と。
妹だと言ってくれて……。
ミフィとお父様が私を――他人である私を家族として扱ってくれて……。
とても、幸せだった…………。
そのきっかけを作ってくださったのは、お姉様。
『ありがとう』
そう、お姉様に伝えてなかったけれど、本当に感謝しているの。
なんて。
過去の思いを何気なく振り替えているうちに、お姉様が十人。
私が作ったお姉様方は皆、仮面のように無表情。
つまり、人形なのです。
このことについ、ホッとしてしまいました……。
いけませんね。
まだまだ終わっていませんのに……。
「お姉様。私、この戦争を終わらせて、ミリーを助けてたいの。力を貸してください。あとついでに、この傷を隠してくださいませ」
私の言葉を聞いて、十人のうち九人がふわりと浮かび、空に消えました。
残りの一人は私の前で何かの術式を展開、発動させ。
私の傷を隠してくれました。
「ありがとうございます。お姉様」
ついつい癖でお礼を言って、お姉様の無表情が変わらないことに気づき。
少し、自分に呆れてしまいました。
「お姉様。ミリーを、私のもとへ連れてきてくださいませ。あの子は一人で、泣いているのですから……」
そういうと、目の前に居たお姉様は転移の術を使っていなくなりました。
だから私は人形の姿をとる。
何故人形になったか。
それは、この体であれば上空へ上がることが出来、遠くを見渡せるからです。
こうして私は、お姉様方が向かったであろう方向。
つまりは敵が居る方角を見つめました。
そこにはすさまじい光を放つ、複雑な陣から生まれる丸い無数の球体。
お姉様方は九人でそれを作り。
王のいるであろう城へと放つ。
それらはモノにあたるとともに、激しく光輝き。
盛大に地面を抉っていました……。
…………これを見たら、ギルド長とゼグロさんが呆れるのもわかるわ……。
お姉様。
とてもじゃないけれど規格外すぎるわ……。
でも、ふふふ。すごい。
どうしてあんなにすごいことが出来るのでしょう?
不思議だわ……。
私なんて、生きた人形しか作れないというのに…………。
「姫さん!」
「? あら、料理長。どうしたの、そんなに慌てて」
「怪我、してねぇな?」
「あら。あたりまえでしょう?」
「…………なら、いいんだ」
「ふふふ。心配性なんだから」
「これくらいがちょうどいい」
「そうかしら?」
「あぁ。そうだ」
「じゃぁ、そう言うことにしておくわ」
くすりと笑って、料理長に言えば。
彼女は安堵の笑みを見せてくれた。
…………ごめんなさい。
嘘をついて……。
でも、私は心配をかけたくないの。
だから……ごめんなさい…………。




