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名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
第三章 伯爵家末娘となった変嬢
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第十三話 外見が。

 なんて諦めを含んだ目を料理長にむけてみました。

 まぁ当然のように、彼女の目は私のほうへ向いてはいないわ。

 どこに向いているかなんて、言わなくても分かるわよね? 

 私のベットに腰かけ。

 料理長の射殺すような目を熱い視線と感じ違いして喜んでいる変た――失礼。言い直しますわ。

 えぇっと……。

 『隣国の宝』と言われる芸術的なほどに完璧な外見が。

 そう。

 が・い・け・ん、が!

 あくまでも『外見』が、ですからね?

 良いですわね?

 大事だから何度も言っておきますわ。

 だから、その『外見』が完璧で中身が自己陶酔症で自分大好きなナルシストです。

 変人です。

 もうこの際なので変態で十分だと思います。

 まぁ、もう変態という認識にしかなっていませんけど……。

 事実なのでしょうがないですよね?

 そう。私、とっても正しい。

 えぇ。

 きっと私の認識は正しいわ。

 だからね。

 この変なのと一緒に居るのが嫌なの。

 酷いとは分かっているわ。

 だけれどね。

 『早く着替えたいから帰って欲しいわ』って目を向けたら、この変態。

 『見惚れている』と勘違いしてくれましたの。

 ……でも、しょうがないわね。

 こんなに自分自身に酔いしれてしまっている変態を、視界に映した私がいけなかったのよ。

 もう覚悟決めて料理長に任せちゃおうかしら?

 きっとうまくやってくれると思うの。

 そうしたらもう二度とこのめんどくさい変態は私の前に表れない――って。

 いけないわ。

 ついつい現実から目をそむけてしまっていました……。

 第一、その辺の下級貴族ぐらいなら上手くやれるでしょうけど、こんなのが消えたらすぐにバレてしまうわ。

 だから料理長はあっという間にお尋ね者に…………それだけはダメ。

 料理長の事だから『『料理長』をやめる』って言いかねないわ!

 そうしたら私、またテノールの………………それだけはイヤ。

 だから絶対。

 この変態、始末しちゃダメ。

 皆に良く言い聞かせておかなくては……!

 ……って。

 あぁ。

 テノールが常識人だったわ。

 だから彼が居る限り、料理長が変なことするはずないわよね!

 もう、私ッたらおバカさん!

「はいざいまーす。姫さん、飯ですよ~」

 ガチャリと音を立てて扉が開いて、四号がいつものヘラへラっとした顔でいったわ。

 相変わらずのようすね。

 ……でもちょっと待って?

 顔色、悪くないかしら……?

「おはよう。顔色が悪いけれど、具合悪いの?」

 少し様子が変な気がするのだけれど……。

 でも、待たせるわけにはいかないからと、いそいそベットから出ると上着を着せられたわ。

 だからお礼を言って、立ち上がる。

「あー……俺の顔は気にしなくて良いんで、さっさと行きゃーしょーね~」

 そうしたらスッと手を握られて、また四号はへラッと笑った。

「え? えぇ。そうね」

 少し心配だけれど、大丈夫ならいいわ。

 という訳で部屋を横切り、扉の前へ。

 四号は私を先に部屋から出して、扉を後ろ手に閉めた。

 その時、室内の様子は四号の体に遮られて見えなかったわ。

 ……厄介ごと、起こしてないといいけど…………。

 大丈夫よね?

 テノールが居るもの。

 きっと大丈夫よ。

 軽く考え始めた時、繋いだままだった手が引かれた。

 だからそれにしたかって付いて行くと、四号がいつもと変わらないように口を開いた。

「今日のメニューはスクランブルエッグにカリカリに焼いたベーコンと、姫さんの大好きな黒ゴマパンですよ~」

「まぁ、本当?」

「嘘なんて吐きゃーしませんよ」

「嬉しい! じゃぁパンは料理長が?」

「もちろんですよ~。長の愛情たーっぷりです」

「料理長のパンはとてもおいしいくて食べ過ぎちゃうわ」

「そうですか。そりゃ良かったってもんですよ」

 と、まぁ。

 四号の様子は食堂に着く頃にはいつも通りに戻っていたわ。

 ……私の気のせいだったのかしら?

 まぁ、良いわ。

 気のせいだったのよね。

 ――――リスティナを送り、ダッシュで調理場に引っ込んだ四号はと言うと……。


「マジ怖ぇ、マジ危ねぇ……。ぜってぇアレ、始末する気だろ。二人してやる気満々…………」

「……茶でも飲んでろ」

「おぅ、ありがと―――って、熱っちっ!! これ熱湯じゃねぇかっ!!」

「当たり前だ」

「……せめて氷ぐらい――」

「テメェで入れろ」

「うぅ、鬼め……」

「熱湯かけてやろうか?」

「あははははは! お茶が熱くておいしいなぁ! もう一号超優しいっ、超オットコ前ぇ!!」 

「………………」


 ――――と、まぁそんなわけで。四号は一号から冷たく冷めた目を向けられ、仲間からは憐みを向けられていたのだった……。

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