最終話 家族
「姉さん。リースは他国から来たんだもの、姉さんを知らなくて当然よ」
「……そうね。じゃぁ、戸籍作って来ようかしら?」
「それがいいわ」
「じゃぁ行ってくるわ」
「行ってらっしゃい。また王様と喧嘩してお城、壊しちゃだめだからね?」
「……あの狸がふざけたことぬかさなければ大丈夫よ」
セフィニエラさんは満面の笑みで物騒なことを言って姿を消しました。
私を膝に乗せている天使様は『もう、姉さんったら……』と、呆れ顔です。
そんな顔も天使様には似合っています。
この世の物とは思えないほど、綺麗……。
ついつい、ぼぉ……っと見惚れていると、天使様が私の様子に気づいたようで、小首を傾げた。
そして。
何かに気づいたような顔になって、また微笑んだ。
「自己紹介が遅れたけれど、私。ミフェイア・ローゼ・ローダン。あなたの双子の姉で姉さんはあなたの姉になるわ。よろしくね」
『えっと、私。血がつながっていませんけど……』
「あぁそれなら気にしなくてもいいのよ。だってあなた、姉さんと同じ髪色で、私の同じ瞳をしているんだもの」
『あの、意味が分からないのですが……』
「リース。姉さんがあなたを『妹だ』と言えば、あなたはこの国では私たちの家族になるの。だから覚えておいて。姉さんが白だと言ったのもは例え黒だとしても……白になるの」
『? それはどういう――――』
「安心して。姉さんを敵に回そうと考える馬鹿はこの国にはいないから」
そう言って天使様改めミフェイアさんは微笑んだ。
意味が分からなくてテノールたちを見たけれど、ミリーとテノールとの言い合いに気を取られて、右往左往していた。
私は必死に断わりの言葉を並べたけれど、手ごたえは無し。
頭を抱え始めたころ、楽しそうなセフィニエラさんが戻ってきました。
もちろん。
戸籍の写しをもって……。
こうして私はこの日。
半ば無理やりと言うか、強引に【リセスティ・ルディ・ローダン】となり。
一人の姉と、同い年で双子の姉が出来た。
そして、いつまでもテノールに食い下がるミリーを国に返した。
この時酷く駄々をこねられたの。
だからミリーに似た人形を作った。
で、ミリーが体を休めたとき――夜、寝た時――に意識だけこちらに飛ばすって言う術を、セフィニエラさんが掛けて下さったわ。
ミリーはそれに喜んで国に帰って行った。
後日、セフィニエラさんたちのお父様を紹介していただいたわ。
とても穏やかな方で、私を見て嬉しそうに微笑まれ。
『可愛い娘が増えて嬉しいよ』といってくださったの……。
私は彼のその微笑みが、セフィニエラさんにもミフェイアさんにも見えてとまどった。
それからしばらく。
つまり、私がセフィニエラさん達のお父様を『お父様』って呼んで、セフィニエラさんを『お姉様』、ミフェイアさんを『ミフィ』と呼ぶことに少しだけ慣れたころ。
料理長が赤ちゃんを産んだわ。
赤ちゃんは私が思っていた通り。
料理長の優しい緑の瞳と、バリトンの緑の髪色を受け継いだ可愛い女の子だった。
二人に『名前をつけて欲しい』って言われたから、人形の中に意識だけで飛んできたミリーと必死になって頭を捻って寝不足になる羽目になったわ……。
でも……そうね。
私はこんなに毎日が幸せよ。
ただ。
一つ言うなら……。
お姉様がこの国の王が居る城とか、参加している『ギルド』と呼ばれる何でも組合? の、建物とかをことあるごとに破壊したり。
初対面の時に一緒になって落ちてきたあの生き物の様な変なもの。
つまり。
魔獣と呼ばれる変な生き物を討伐するときに、山ごと消したりするのが気になるわ。
そんなお姉様だけれど、とてもお優しいのよ?
お姉様の兄弟子にあたると聞いた男性と、お姉様が『組合長』と呼んだあの男性は、お姉様が行った破壊の数々の後処理に走り回っているわ。
それに私とミフィは、ちょっとどころかすごく同情しているの。
まぁ。
同情しかできないのだけれどね……。
ついでにお姉様はミフィが通っている学校の先生らしいの。
え?
私が通わないのかって?
通わないわ。
だって変な客が、何故なのか一層増えて忙しいんですもの……。
でも私、幸せよ。
とっても……ね……。
ここまでお付き合い下さり、誠にありがとうございました。
短い間でしたが、第二章。
これにて完結となります。
『新年あけて落ち着いた頃に第三章を書けたらいいな』と思っています。
といっても、予定は未定というもので、ぽややんとしてる奴です。
ちなみに、もし第三章書くとしたら、こんな感じでほのぼのです。
以上。ありがとうございました。




