第十六話 瀕死
「ふふ、どうしたの。そんなにぽかんとしちゃって」
『おかしいわ』といって微笑み。
私(人形の方よ?)の頭を撫でるセフィニエラさん。
「姉さん。この子可愛い」
ふわりと微笑む天使様。
金色のキラキラとした巻き毛なお髪が神々しいの……。
眩しすぎて私の目がつぶれそう……。
そして。
私の本体の顔色が危険な色になっているわ…………。
このままだと私、死ぬのかしら?
「でしょう? 私たちの家族にしても良いかしら?」
「もちろんよ。こんなに可愛い双子の妹なら、大歓迎!」
「嬉しいわ。じゃぁ、そういうことで決定ね」
微笑みを浮かべつつ、そう言った二人。
私はこの会話より、自分の体の方が心配だったの……。
『み、皆。わ、私が死にそうに見えるのは、気のせい……よ、ね…………?』
「「「「「?!」」」」」
ついつい怖くなって声をかけた。
そしたらハンカチを目元に当てていた皆がハッと気づいてくれました。
こうして、私が居候しているお屋敷に男女の絶叫が響いたのです。
「え……? 皆、どうしたの?」
一人理解していないミリーの声がした様な気がしたけれど、それはかき消され。
上手く聞こえなかったの……。
こうして。
死にかけていた私の本体はなんとか一命を取り留め。
ミリーは私の本体に抱き着くのを禁止されました。
もちろん。
怖い顔のテノールに……。
うん。
私、私の本体が死にかけたのは貴方のせいでもあると思うの。
気のせいかしら?
なんて事。
怒っているテノールに言う勇気など私が持ち合わせている訳もなく。
ただただ、人形に入ったまま、それを見届けました。
え?
『人形じゃなくて、生き物になったのじゃないか?』
違うわ。
人形よ。
でも……そうね。
腕をもいだり、切ったら血が噴き出すんでしょうが、これは人形です。
誰が何と言っても人形なのです。
私はこれを生き物だと認めません。
ましてや、これが私の第二の体になったとか、そんなこと絶対に認めないんだからっ!
「あぁ。混乱してる所悪いのだけれど、今日からあなたは私たちの妹よ。だからあなたの名前はリセスティ・ルディ・ローダンになったから」
満面の微笑みのセフィニエラさんと、天使の微笑みの巻き毛の天使様。
お二人は私の頭を撫でつつ、嬉しそうです。
なぜかしら……?
『……失礼。今なんとおっしゃいまして? 私、ちょっと混乱しているみたいで、幻聴が――』
「幻聴なんかじゃないわ。今日からあなたは私の妹で、ミフィの双子の妹。【リセスティ・ルディ・ローダン】よ」
『えっと、すみません。よくわからないのですか……』
「名前、無いのでしょう?」
『え? はい』
「だったら問題ないじゃない。あなたは私の妹のリセスティ。愛称はリース。どうかしら?」
『えっと、『どうかしら?』と言われましても……』
さて。
私はなんと返せばよろしいのでしょうか?
なんて考えていたら、天使様が悲しそうな顔になりました。
……もう! どうしろって言うのよっ!!
「…………ねぇ、リース。私たちと家族になるの、イヤ……?」
『え、えっと……イヤじゃないけれど……その、えっと…………今日会ったばかりの方に、そんなことを言われるようなことは――』
「あら、リース。やはりあなた、私を知らないのね」
『? セフィニエラさん、それはどういうことですの?』
「もう……『お姉様』でしょう?」
セフィニエラさんはそう言って『そう呼んでくれるまで返事しないわ!』って。
そっぽを向かれました。
……意味が分かりません…………。
読んで下さり、誠にありがとうございます。
突然ですが、次回最終回です。




