第十四話 引きこもりの王女
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セフィニエラさんのお仲間さんと別れ。
あれよあれよと言う間に、何故かセフィニエラさんが力を貸して下さり、私は祖国の王城に居ました。
とはいっても、実体ではないのよ?
私も良くわからないけれど、セフィニエラさんが『その子に会うまで見えないし、誰もあなたに気づかない』っていう術をかけて下さったの。
そして。
私はそれを良い事に、人気のない廊下を歩くメイド姿の女性二人に近寄る。
彼女たちは親しげに話をしながら歩いていた。
「まったく、二年もたったと言うのに王女殿下ときたら……」
「今でもお嘆きになっているんですものね……」
「でも、困ったモノよね。公務もせずに部屋に引きこもりっきりなんて」
「ちょっと、そんな本当のこと言っちゃ……陛下がお気の毒よ」
「そうよね。一度、陛下が王として謁見の間にお呼びになった時ですら、激高して手におえなかったし……」
『困ったものだ』と疲れた雰囲気と共にため息をついた彼女たち。
そんな彼女たちを咎める声も、人の気配すらなかった。
私はそれを聞いていてとても不安になったわ。
だって、ここにはミリーの味方がいない気がするの……。
それに彼女たちの話からして、ミリーは一人で泣いているのかしら……?
もしそうなら、急がないと……。
あの子に泣き顔は似合わない。
一番似合うのはあの笑顔よ……。
だから私はセフィニエラさんが教えて下さったように、ミリーの姿を浮かべた。
きっと、あの子の事よ。
自室のベットルームで膝を抱えて泣いているわ……。
早く。
早く、行ってあげないと……。
あの子は笑って、幸せでなければいけないのよ。
そう思ったと同時に、体が温かい何かの上に落ちた。
「……な、に…………?」
懐かしい声が聞こえた。
でも、それは酷く落ち込んだ、涙声……。
私の視界は真っ暗。
音だけが聞こえるの。
嗚呼……。
こんなことになるのなら、あの時。
自分と同じ目が嫌だからって、閉じた形にしなければよかったわ……。
まぁ。
こうなったらしかたないわ。
開けさせちゃいましょう。
と、言うことで。
閉じた人形の目を元の開いた形に変えました。
ミリーが涙に濡れて真っ赤な目を見開いてこちらを見ています。
うん、まぁ。
…………仕方無いわよね……?
「どう……いう、こ、と…………?」
驚愕の表情のまま、彼女は私の脇に手を入れて持ち上げた。
そして顔を近づけ、しげしげと私の顔を覗き込む。
だからこれ幸いと両手を広げ、勢いよくあの子の顔を挟むようにして、両頬を叩いた。
「痛っ……なに、なんで……?」
『この馬鹿! 誰が自害しろと言ったのっ?! 私はあなたに幸せになれって言ったでしょう!!』
動揺したミリーについつい怒鳴ってしまう。
でも声は変に反響して、私の声とは違って聞こえる。
だけれどあの子は私だと分かったようで、びくりと肩を震わせた。
そして、泣き出したの……。
「りー、す……。っ?! リース! やっぱり無事っ!! わ、わたしっ。あ、あいた……会いたかっ……っ~~ぅ」
ギュウッと抱きしめられた。
実体じゃないから、苦しくなんてないわ。
でも、この体。
ビクスドールなのよね……。
しかも私(初心者)が作った。
ね……?
だから『何が言いたいのか』っていったら……そうね。
関節があらぬ方向に曲がってるって事かしら?
つまり。
曲がらない方向にムリやり曲がってるから、その関節を受けている部分が痛むから止めて欲しい訳なの。
……ひび割れしちゃうかもしれないわ。
…………でも……そうね。
ミリーに止めるようには言えないわ……。
『もう……困ったお姉ちゃんね』
「むぅ……リース、笑うとか酷い…………」
『ふふ。ごめんなさい』
と言うより、この人形。
私の表情まで反映するのね……。
なんて感心していたら、ミリーが頬を膨らませた。
「もう、反省してないじゃん……」
『……思ったより元気そうでよかったわ』
「うん! だって、リースに会えたんだもん!」
『(……相変わらずお気楽なのね…………)………………そうなの……』
「? どうしたのリース。話しよう?」
『えぇ。そうね。私も会いたかったわ。ミリー』
「うん、私も! 会いたかったよ、リース!」
そう言ってまた、ギュッと抱きしめてきた彼女に少し笑った。
だから私は『【私】を殺す』という選択をした説明をしたの。
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読んで下さり誠にありがとうございました。
また近いうち時間見て投稿します。




