第一話 使用人の種類
新章突入、しちゃった……。orz
広い屋敷。
廊下は迷路のように入り組み。
私の部屋は二年前からこの屋敷の中心。
だだっ広くない、程よい広さの室内。
私はこの広さが好きよ。
寂しくないもの。
ただ残念なのは窓がなく、朝も昼も蝋燭が無ければ暗くて何も見えないし、四季の移ろいを感じられないということだけ……。
私はせっかく庭師が整えてくれている庭がみれないから、この部屋にあまりいない。
なので、この部屋は基本的にベッドルームね。
などと考えながら、私はリビングに向かう。
リビングは大きな窓があり、庭が一望できるの。
素敵でしょう?
誰が考えてくれたのかなんて、分からないけどね。
私は黙々と迷路のような廊下を進む。
時折、使用人に会うから、挨拶を交わす。
ついでに使用人は三つの種類に分けられるわ。
一つ目の種類。
愛想の良い、メイドと使用人。
薬とか、病気、怪我に詳しい。
二つ目の種類。
顔とか体に大小さまざまな傷があって、料理長を『長』と呼ぶ、料理長の使いっ走りたち。
名前は番号。
三つ目の種類。
【返事をしない。無表情】がデフォルトな、目つきの鋭い使用人および庭師。
数名、返事を返してくれて、つつましく微笑む綺麗なメイドさん……。
…………お気づきでしょうか?
一つ目がテノールの手下で、二つ目が料理長。
三つ目がルシオとゼシオの手下だということを……。
ついでに、皆。
ファスティ家に居た人たちなのよ……。
勝手な推測だけど。
テノールの手下は闇医者とか、薬師だと思うの。
料理長と双子の手下はそのままだと思うわ。
て言うか!
どうして私、いつでも殺せるポジションに居るのかしら?
使用人たちは、四人に忠誠を誓っていたとして!
私はどうなるの?!
違うの?
ねぇ、やっぱり違うのかしら?
嫌よ、私。
後ろからブスリとか、ドスリとか……。
なんてね!
嘘よ。
嘘。
とか思って振り返ってみた。
…………鋭く銀色に光る何かを所持した人が居ました。
「あら? どなたかしら?」
顔に布を巻いて、目元しか出ていないけれど……。
『暗殺者です』
なんて言わないでよ?
お願いだから……!
私の顔引きつってるから!!
「この館の主人だな」
そう言った声は男。
バリトン、かしら……?
でも『この館の主人』なんて、誰かしら?
私、テノールたちが作ったこの屋敷に居座って、金持ち相手に商売しているだけ。
この場合は、どうなるのかしら?
「さぁ……少なくとも私じゃないわよ? だって私、この屋敷で勝手に金持ち相手に商売して、使用人の人たちにお給金を出してるだけだもの」
「………………」
「あら? どうしたの? 急に黙って」
「…………馬鹿なのか」
「え? 何……? 小さくて良く聞こえなかったわ」
「……もう一度聞く。この館の主人だな」
「いいえ。違うわよ? さっきも否定したでしょう?」
「……では質問を変えよう。金持ち相手に商売をしているのは、お前か…………?」
「えぇ。さっきそう言ったでしょう? あなた、耳でも悪いの?」
声からして若いと思ったのだけれど……違ったのかしら?
でも若くて耳が遠いのは可愛そうね。
お医者様を呼んであげようかしら?
「…………………はぁ……。興が冷めた」
「あら、寒いの? だったら温かいお茶でも出してあげるわ。こっちよ」
そう言って、私はバリトンボイスな彼の手を引いた。
彼はなぜか驚いていたけれど、手に持っていた凶器はどこかにしまって、私に引かれるままについて来る。
だから私は彼に問う。
「ねぇ。あなた、なんて名前なの?」
「………………」
「……………………」
「………………………………」
「………………あなたも無言で何か言いたいの? でも、ごめんなさいね。私、あなた達みたいな人は初対面だと何を考えているのかなんて、分からないのよ」
だから数日一緒に居たら『何を考えているのか』とか、『何がしたいのか』が分かるのだけど……。
ちなみに、この屋敷に居る使用人はたいてい『何を考えているのか』、とかは分かるわ。
でも。
本当にそうなのか、自身はないのだけどね?
ルシオとゼシオは絶対間違ってないって自信はあるわ。
彼らほどわかりやすい者はいないわよ……。
「…………それはそれで恐ろしいぞ?」
「あら、そう? でも、一緒に居たらわかる様になるじゃない?」
「……あぁ。そうだが…………もういい。手を離せ」
「え? これからお茶に付き合ってくれるのではないの?」
「………………誰が付き合うと言った」
「? ついて来てくれているし、凶器もしまってくれたじゃない」
「…………俺は帰る」
「良いじゃない。少しくらい……付き合ってくださらない?」
「嫌だ」
「もう、酷いわ……。テノールと料理長、双子。メイドに使用人、庭師。皆、私とお茶してくれないのよ? あの子が居たら――」
そう言って。
微笑みを浮かべ、紅茶を入れてくれていたミリーを思い出し、ジワリと視界がかすんだ。
嗚呼、いけない。
別れて二年もたつのに、まだ悲しいなんて……。
「ごめんなさい、何でもないわ。ただ、誰も話し相手をしてくれないの……だから少しだけ、少しだけで良いの。話し相手をして下さらない?」
「…………はぁ……良いだろう…………」
バリトンボイスの彼が付き合って下さるのですって!
嬉しいわ。
最近。
皆、忙しそうで私の相手までしていられないって感じだったんだもの。
だから。
大金を落としてくれる豚――じゃなかった、良い金づるとしか会話がなかったのよ?
……普通の話がしたかったの。
たわいもない話が、ね……?
読んで下さり、誠にありがとうございました。
リスティナが落ち着いてくれなかったので、続けちゃいました……。
もう勢いです。
『うらぁぁぁあ』って感じです。(笑)
進む方向性は、【彼女の日々】。
ほのぼの、のらりくらりです。
もう一話続きます。