表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名門貴族の変嬢  作者: 双葉小鳥
第一章 名門貴族の変嬢
17/104

第十七話 別れ

「そ、そなたたちは……? っ……?! その娘はっ…………!」

 ベッドで上体をお越し、震える声でそう告げた陛下。

 私はスッと膝をつき、頭を垂れた。

「ご無礼をお許しください、陛下。彼女は記憶と、二年もの年月での成長を封じられております。解除を試みたのですが、私の力では不可能でした」

 じわりと目が熱くなり、鼻の奥が痛い。

 それを必死に抑えて、涙が出そうになるのを堪え、続けた。

「なので、どうか……どうか、彼女にかけられている術を、解いていただきたいのです」

 上手く言葉が見つからなかったわ。

 でも、言いたいことは言えたと思う。

「…………分かった。最善を尽くそう」

 心強いお言葉をいただけた。

 陛下のお言葉が嬉しくて、堪えていた涙がこぼれ。

 床に落ちた。

 ………………これで、私の役目も終わり……。


 そして。



 私は殺されたくないから…………【リスティナ・ファスティ】を殺して、この国を出るわ……。



 だからミリーに会えるのも、これで最後……。

 だって彼女はこの国の王女様。

 私は名門とはいえど、ただの貴族。

 王族の方々から見れば、ただの臣下。

 ……これまでのように、親しい間柄であってはいけない。

  

 私は陛下の許しを得ずに立ち上がる。

 そして、彼女を抱きしめた。



「【起きて。ミリー】」


 耳元に小さく囁きかけると、ミリーは小さく『んぅ……』と呻いて、ゆっくりと目を開けた。

 だから抱きしめるのをやめて体を離した。


「りぃすぅ……? どーしたの?」


 目をこすりつつ、ぽやんとした様子で問いかけて来たミリー。

 私はそんな彼女が微笑ましくて。

 つい微笑んで、彼女をまた、抱きしめた。


「ミリー。私、あなたのことが大好きよ。愛しているわ。私の可愛いお姉ちゃん」

 笑顔を浮かべて言って、すぐにミリーの肩に顔を押し付けた。

 そうしたら、ミリーが酷く狼狽えたわ。

「え? リースと私、同い年だよ……?」

「…………いいえ。違うわ、違うのよ……。ごめんなさい、もっと……もっと、早く、気づいていれば……っ…………」



 こんなに……こんなにも、離れるのがつらいなんて…………思わなかったはずなのに……。

 

 別れたくないわ。

 離れたくないのよ……。

 姉のように、妹のように大切な……家族と…………。


「え、な、なんで。なんで泣いてるの? リース」


 良くわからないと狼狽えているミリー。

 私は……そんな彼女に『さよなら』を告げなければいけない………。

 だからせめて、最後くらい…………笑顔で……。

 そう考えて私は彼女から離れ、料理長の傍に向かった。


「え? なんで……?」


 酷く戸惑ったようなミリーの声が聞こえた。

 理由は分かっているわ。

 私が、ミリーがついてこれないよう、彼女に足止めの術を使ったからよ。

 後。

 料理長に何も言っていないのに、彼女はさっき展開させたモノと同じ術を展開させていたわ……。

 

 本当、良く気がつくんだから…………。 


 なんて思いながら、彼女の陣の上に向かい。

 ミリーを振り返る。

 そうしたら。

 戸惑い、泣き出しそうな顔のミリーと目があった。

 だから。

 私はいつも通りに、笑顔を浮かべた。

 上手く出来たのか、なんて分からない。

 


「さようなら、ミリー。幸せになるのよ」


 そう私が告げるとともに、料理長が術を発動させ。

 私の言葉に絶望の表情を浮かべたミリーを置いて、私たちは屋敷の私の部屋に戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ