その三
ガシッ!
意識がうすれかけたアゲハ蝶の羽が、木の枝に激しくぶつかりました。
(ウッ!)
あまりの痛さに、アゲハ蝶が声を上げようとした時ー。
(−!)
アゲハ蝶は、思わず、息をのみました。
アゲハ蝶の前に、突然、金色の、不気味な二つの光ー。
そして・・・。
「フッ、フッ、フッ、フッ、」
光よりもっと不気味な、低い笑い声が聞こえてきます。
アゲハ蝶は、全身に氷水を浴びたようにこごえ、心臓が止まってしまいそうになるくらいの恐怖におそわれました。
それでも、光と声の正体をつきとめようと必死で目をこらし耳を緊張させます。
すると、瞳が暗闇になれてきたのか、まわりの様子が、ぼんやりと見えてきました。
そして、だんだんと、それがはっきりしてきて・・・。
「あっ!」
アゲハ蝶は、また、全身が凍りつきそうになりました。
そこには、アゲハ蝶よりひとまわり大きい灰色の蜘蛛ー。
不気味な二つの光は、その蜘蛛の目だったのです。
「フッ、フッ、フッ。また、獲物がやってきたぞ」
金色に光る両目の下がもぐもぐと動き気味の悪い声が聞こえてきます。
アゲハ蝶は、気が遠くなりそうになりました。
バタッ、バタッ。
バサッ、バサッ。
まわりで、何か、音がします。
アゲハ蝶は、まわりを見回します。
そこにはー。
蜘蛛の巣にからまり、もがき苦しんでいる無数の蝶たち。
中には、力尽きたのか、身動きしないでうつむいたままの蝶もいます。
「どうして来たんだ!」
突然、なつかしい声がしました。