その十三
「な、なんだ、これはっ!」
「大変だあー!」
黒い森の入り口近くで、蝶たちが騒いでいます。
「あっ!」
やって来た蝶たちは、みんな驚き、目をおおいます。
そこには、無数の蝶の羽が、無残に散乱していました。
「い、いったい、誰が、こんなひどいことを・・・」
「これ、何かしら・・・?」
地面に散乱した蝶の羽の間に、曲がりくねった細長いあとがあります。
「こ、これは・・・、そうだ。間違いない」
蜘蛛が、つぶやきます。
「蜘蛛さん・・・、もしかして・・・」
アゲハ蝶が、おそるおそる蜘蛛にたずねます。
「そう、アゲハ蝶さん。これは、蛇のしわざだよ」
「蛇!」
何匹かの蝶たちが、ふるえ出しました。
「おい、黒い森には、蛇・・・が、住んでいるのか?」
「ええ、その通りよ。その蛇は、蜘蛛さんのお父さん、お母さん、そして仲間を殺したの。それだけじゃないわ。黒い森へ行った蝶を殺したのはー」
「アゲハ蝶さん!」
蜘蛛が、アゲハ蝶の話をさえぎります。
「いいんだよ、アゲハ蝶さん。それより、蛇をなんとかしないと。おそらく、蛇は森の中に食べる物がなくなって、この菜の花畑にやって来たんだ。もし蛇をこのままにしておいたんじゃ、みんな蛇のえじきになってしまう」
「そうだ!」
「でも、どうやって、蛇を・・・、やっつけるの?」
蝶たちは、みんな、黙りこんでしまいました。
目の前に散らばった、仲間たちの羽を見ていると、蛇と戦うなんて、おそろしくてみんなしりごみしてしまったのです。
その時、
「みんなで、力を合わせて蛇と戦うんだ。みんなで力を合わせれば、きっと、蛇にだって勝てる!」
蜘蛛が力強く言いました。
「蜘蛛さんの言う通りだ。みんなで、蛇を、やっつけるんだ」
アゲハ蝶のお兄さんも、蜘蛛に続いて、力強く言いました。
蝶たちは、大きくうなずきました。