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Mari&Golds  作者: 田中 友仁葉
閑話1
9/14

五百蔵旅行記 1

今回は、番外編としてセイメルさんがいなけりゃ、いつも息詰まるようなマリゴルメンバーに休暇を楽しんでもらいます。

シリアス要素は皆無ですし、ただの青春ラブコメですので本編とは全く関係ありません。


シリアスがシリアルになってもOKよって人はどうぞ見てください。

5月病になることもなく、無事6月を迎えることができた。

平日に休みがない月だというのは残念だが、高校に入り無事夏が迎えられたというのは喜ばしいことだ。


…いや、「無事」というと語弊があるかもしれない。


「イノウエェェ!!ごめんネェェ!!」


「な、泣かないでよ!私にも原因があるんだし。」


…僕のために二人が喧嘩(?)してたと聞くとなんだか変な感じだな。


「五百蔵。」


「あ、おはよう宮本くん。」


宮本くんにもはやテンプレートと化されつつある挨拶をする。


「二人、仲直りしたようだな。」


「うん、良かったよ。」


宮本くんはいつも生真面目そうな顔をしている(そこが女子からすれば逆に魅力らしい)が、今回ばかりは顔をほころばせた。


「Seiya〜!」


突如セイメルさんから声がかかる。

話は終えたらしく、あとほんのり目が赤くなっている。泣き跡だろう。


「セイメルさん。イサギと仲直りしたんだね。」


「Yes!…それでハナシなんだケド…」


「五百蔵。今度、温泉行かない?」


本題はセイメルさんの代わりにイサギが話した。


…っていうか温泉?


「…井上。五百蔵を誘っているのか?」


「?…そうだけど。」


イサギは難なく答えた。


しかし、イサギは宮本くんの言葉の意味に気がつき顔を赤くした。

起こっているようにも見える。


「ち、違うっ!何勘違いしてるのよバカ五百蔵!」


「ええ!なんで僕!?」


もちろん顔は驚いていない、が理不尽だ。


………


「つまり、セイメルさんがお詫びにと温泉旅行を企画してくれたってこと?」


「Yes!」


セイメルさんは手を大きく振って嬉しそうにしている。


「でも悪くないかな…」


「ノープロブレム!温泉はワタシのシユウチでーす!」


私有地…ねぇ…。


「…なあ五百蔵。ティラビスさんはどんな家に住んでいるんだ?」


「…忘れたけど…すごく美味しくて楽しかった気がする。」


正直、すごい家だったのは覚えているんだけど…


「フレンド呼んでもOK!」


「でも僕、誘う人って言っても…」


「五百蔵、友だちいないのか?」


「いや、いるにはいるんだけど…」


「良かった、五百蔵にも友だちと呼べる人が居たんだな。」


「…。」


「…どうしたんだ?五百蔵。」


意外とこういうところあるよね、宮本くんって。


******


「アライブ アァット!」


「おっきいー、高ーい。」


「これは…すごい旅館だな。」


「ゆっくり出来そうだね。」


「っていうか、私の知らないところでこんな話があったんだね。」


僕たちは泊まる温泉旅館を見て口々に感想を述べた。

これなら裏で誘った折本さんも少しは楽しめるかもしれない。


「チェックは済ませてマース!とりあえずルームに荷物アズケましょー!」


早速だがセイメルさんはノリノリなので黙って行くことにする。


………


「セイメル様、ご来場ありがとうございます。」

「セイメル様、こちらが本館の鍵となります。」

「セイメル様、マスターキーはご所望でしょうか。」

「セイメル様、温泉は貸切になさいますか。」

「セイメル様、テレビの有料チャンネルはご所望でしょうか。」


セイメルさんは旅館に入るや否やスタッフの人たちに言葉責めにされていた。

ってか、マスターキーはマズイだろ。


「…すごいなセイメルさん。」


「…なぁ五百蔵。ホテルの有料チャンネルって何か知ってるか?」


「…知らない、WO○OWとかじゃないの?」


「簡単に言えば18禁だ。ホテルの個室のテレビのしたに黒い箱があればピンクモザイクと肌色のテレビ網も近くにあるはずだ。」


宮本くん。

…なんで知ってるの?


「あ、あのさ五百蔵っ!私まで誘ってくれて良かったの?」


セイメルさんの対応中、イサギがあたふたと問いてきた。


「電車でも言ったじゃないか。それにセイメルさんとの縁を深くして欲しいというのもあるし。」


「そ、そうだけど。…うん、わかった。」


僕が困るのを察して引いてくれたみたいだ。

なんか申し訳ない…のか?


ちなみに折本さんは携帯端末をジッと弄っていた。最近女の子の育成ゲームにハマっているらしい。


******


「…おお、すごいな。」


「広いねー。」


「むしろ立派すぎだよ、高校生には勿体無くないかな。」


「ソ、ソンナッ!…Seiyaがそういうなら窓なしの音抜けにするヨ?」


「…五百蔵っ!あんたのせいでセイメルさんが変なこと言い出したじゃない!?」


「えぇ…」


部屋を見て口々に感想を…及び雑言を垂らす。

これも僕のせいなのか。


しかし本当に立派な部屋だ。


どうやら一つに見える部屋も襖で2つに隔てられているらしい。

おまけにベランダからは温泉街が眺望出来る。

セイメルさん恐るべし。


「…さて、宮本くん。僕達も部屋移動しよっか。」


「そうだな、じゃあティラビスさん。鍵をくれないか。」


「部屋は一つだケド…?」


…まじか。


******


「信じらんないっ!!なんで五百蔵と同じ部屋なのっ!(歓喜)」


「私は気にしないよー。」


「そ、そんな嫌なのか…」


つい落胆してしまう。はたからみたら分からないけども。


「ゴ、ゴメンネ、イサギ。ニホンのカルチャー分からなくて…」


「私は気にしないよー。」


「そ、そうじゃないの!全部五百蔵のせいなの!」


「それは、さすがに理不尽…。」


僕の声も虚しく、イサギの耳には入らなかったようだ。


ってか折本さんも機械的に答えないで欲しい。


「ほう、近くには温水プールもあるのか。」


「そういえばセイメルさん、水着の用意言ってたね。何故かと思ったらそのため?」


「…Eh?あ、い、Yes!そ、そうだヨ!」


?…なにか動揺しているらしいけど、気のせいかな。


「じゃあ昼ごはん食べたら行こっ!」


「昼までは?」


「温泉街回ればいいんじゃないか?先にお土産買っておけば帰りのお金の計算も出来るし。」


なるほど…さすが宮本くん、効率的だ。


「じゃあ先にお土産ね。」


そういうとイサギは旅行鞄を掘り返した。

…ふつう財布は簡単に出せるところにするべきだと思う。まあ、どうせそれ言ったら怒られるんだろうけど。


「…ねぇセイメルさん。水着って何か別の用途があるんでしょ。」


「!?…ユ、ユウナ…わかりマスか…」


「分かります。」


「…えっとソノ…実はーー」


******


「ところでさ、誰に買うの?」


とお土産屋が見えてきたところで折本さんが僕に聞いてきた。


「…姉ちゃんかなとりあえず。あとは近所にいくつか買う程度だと思う。」


「病院は?」


「病院の人とは暫く会ってないからなぁ…折本さんは?」


「とりあえずクラスの人の分と家族の分になると思う。」


そう言いながら折本さんは「まぁ形だけだけどね」と笑った。

…形だけなのはお土産だけでは無いんだろうな。


「Oh!スゴい!Seiya!」


「ん?…模擬刀?まさか買うの?」


「Yes!Oh…ワタシにもサムライが宿ってキマース…」


模擬刀に魂は無いと思うけど…。

お土産というか中学生の修学旅行みたいな買い物だけど、本人がいいなら別に良いか。


…かさばりそうだけど。


「…五百蔵。こういうところの温泉饅頭などのお菓子って長持ちするのか?」


「…温泉で殺菌とかされてるんじゃないかな、多分だけど。」


「なるほど。…じゃあこの菓子箱を3つくらいでいいか。」


そう言って宮本くんは12個入りの饅頭の箱を手に取った。


「かさばらないかな、それ。」


「大丈夫だろう。そのために先に買うというのもあるからな。」


なるほど。…ってさっきから僕宮本くんに感心しかしてない。


「い、五百蔵っ!あのさ!」


「うん、何?」


今度はイサギだ。


「あ、あのさ…この中で好きな動物なに?」


見ていたのはガラス細工のストラップだ。

セイメルさんと比べたら充分女の子らしい自分土産だと思う。

でも僕に聞くことないと思うけどな…。


…まあいいか、とりあえず細い部分が少なそうで割れにくそうなやつ。


「…犬かな。」


「犬?なんで。」


な、なんでって好きだからなんだけど…


「うーん…やっぱり素直だからかな。」


「…素直。」


な、なんでだろ。イサギが落ち込んだ。


「そ、それに犬だったらガラスが割れる部分も少ないし刺さって痛いって思う部分もないじゃん。」


「夢ない。そういうの無し。」


えぇ〜…


******


とりあえず全員会計を済ませたので途中で買った饅頭を食べながら旅館に戻ることにする。


「…ところで、五百蔵。いつから井上のことを名前で呼ぶようになったんだ?」


「あぁ、うん。実は前にイサギが登校拒否した日につい『イサギ』って言っちゃってることに気がついて、慌てて訂正したら、『イサギの方がいい。』って言われて…。でもそう呼んだら『呼び捨てにするな』って。よくわかんないからイサギのままにしちゃった。」


「…なるほどな、本人の希望か。」


「なに?どういうことなの?」


「さぁな、俺にも分からないよ。」


そう言うが宮本くんは何かわかったかのように笑った。

なんか僕だけ分からないのは癪に障るなぁ…。


******


僕を含めた5人は部屋で水着を鞄に入れたのち、食事をとることにした。


「どっかいい店あるかな…」


「…此処とかどうだ?」


宮本くんはタブレットで和食店を出した。


「でも宮本くん、和食食べ飽きたんじゃない?それなら洋食の方がいいと思うんだけど。」


「…確かにそうだが、俺一人の意見を聞くわけにもいかないだろ。」


固いなぁ。


「セイメルさんは?」


「…there!」


セイメルさんが差したのはどこにでもあるようなファミリーレストランだった。…確か、学校の近くにもあったと思う。


「…ごめん。それはない。」


「Noooooooooo!!」


そんな洋画ばりの悲鳴をあげられても…


******


結局、温泉街ということもあり和食店しか特に無かったため。宮本くんの選んだ店に行くことになった。


「いらっしゃいませ〜。何名様ですか?」


「5人です。」


「ファイブファーイブ!」


「ちょ…セイメルさん、静かにして。」


と、こんな風なことがありながらも掘りごたつの座敷へ案内された。

セイメルさんはどうやらこの座席が珍しいらしく興奮している。


「Oh!ネーSeiya、コレってユカにアナが空いたの?」


「た、たぶん違うと思うよ。」


その考えは無かった。


「そういうことなら宮本くんの方が…」


「?…うちの座席は掘りごたつじゃ無いぞ?」


そういえばお邪魔しに行ったとき、胡座かいてた気がするな。


「とにかく何食べる?さっさと決めてよね、私はお冷と笊蕎麦だけでいいわ。」


「でも、イサギの髪長いし。蕎麦食べるのには向いてないんじゃ…」


「だから汁蕎麦を避けたのよ!そんなのもわからないかな…」


…さいですか。


「セイメルさんは?ってか読める?」


「ムム…Seiya!訳してくだサイ!」


「いやいやセイメルさんの所まで遠いよ。それなら折本さんに頼めば?近いじゃん。」


すると、セイメルさんは何故かグッと息を飲んだ。流石に少し無粋な言い方だったかな。


「そ、それもそうデス…。ユ、ユウナ、教えてくだサイ。」


「うん、いーよ。これはね…釜玉うどん。」


…もしかして、セイメルさん。折本さんが苦手なのかな。

初めて顔を合わせたときはそんな様子なかったのに、


「宮本くんは?」


「親子丼だ。うちには丼ものが置いてないから。」


「そうなんだ。」


まあだからといって特に感想もないけど。


「そういう五百蔵はどうするんだ。」


「うん、西京焼き定食にする。」


「サイキョウヤキ!つ、強そうデス…」


言うと思った。


「何で西京焼き?」


折本さんが聞いてくる。


「いや、僕、顔の筋肉動きにくいから大きなものを食べたりとか麺を啜ったり出来ないんだよ。」


「…成る程な。でもそれならけんちん汁とかの方が良いんじゃないか?」


僕は首を振った。


「いや、実は汁物を食べると何故か絶対噎せちゃうんだ。」


「それって病気で?」


「ううん、前からよ。」


イサギが代わりに答えた。


「小学生の時に知ったんだけどね。五百蔵って飲むときに鼻呼吸する癖があるらしくて肺に入っちゃうことが…あ、ごめん、五百蔵。」


何故か急にイサギは途中まで言って謝った。


珍しいな、イサギが謝るなんて。


「どうして謝ったの?」


「だ、だって五百蔵。過去は嫌いなんだろうし…」


「そんなことか。いいよ、今の僕と昔の僕は少し違うから。」


気を使って言ったつもりだが、それを聞くとイサギは少し機嫌を損ねた。


なんでだろ。


******


軽く雑談を踏まえながら食事を終えた僕たちは会計を済ませ、その足で温水プールへ向かった。


「ちょ、ちょっと五百蔵!…もしかしてあそこ?」


イサギが差した方向にあったのは巨大な植物園のような建物だった。


「…そうみたいだね。」


ここまで大きいとはいやはや驚きである。…顔は驚いてないけど。


「チケット人数分買ったから入るぞ。」


「あ、ごめんね、宮本くん。あとで自分の分出すから。」


それにしてもプールなんて久しぶりだ。

最後に入ったのって確かリハビリのときくらいじゃなかったかな。

…我ながら思い出が生々しいな。


******


「じゃ、また後で。」


「Yes!楽しみにしてくだサイ。デンジャラスな水着デスよ…フフフ」


それはちょっと困ると思いながら苦笑いするとイサギに睨まれたため、僕はさっさと男子更衣室に逃げた。


「…なんでイサギ、あんなに怖い目で見てくるんだろ?」


僕は使われていないロッカーをようやく見つけ、600円を投入しながらボヤいた。


すると、宮本くんは苦笑を漏らしながら同じく隣で小銭を投入した。


「いずれ五百蔵に分かるときがくればいいがな。」


「えっ!?なにそれ…。」


半ば諦めた口調で僕は服を脱いだ。


「…。」


「…む。」


「…えっと何か?」


「い、いや五百蔵のモノも中々だと思ってな…」


モ、モノって何だよ。わかるけどっ!


******


「イサギ…もっと食べるべきデスよ。」


「そ、そういっても…そんなの水着着れなくなっちゃうじゃん…」


「セパレートじゃダメなのー?」


「…なんで二人とも大きいのよ」

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