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Mari&Golds  作者: 田中 友仁葉
1章
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第四章「罪と罰」

次の日昨日のことを引きずりながらも登校して、いつもどおり学校についた。


「…五百蔵。」


「あー、宮本くん。おはよ。」


「…あぁ。おはよう。」


宮本くんも僕のことを気遣ってか、それ以上は話して来なかった。


そして、嫌な妄想が真実となる。


「最近転校生が多いですが、またこのクラスに生徒が一人増えます。どうぞ。」


入ってきた生徒を見た瞬間、鳥肌が止まらなくなった。


なんであいつがこんなところまで…


こっちを向くな。

気づかないでくれ!

誰か僕を隠してくれ!!


「曽野原高校から来ました。井上 いさぎです。これからお世話になります。」


その声を聞きついに、机に突っ伏して気を失ってしまった。


気絶してることに生徒が気がついたのはそれからしばらくしたあとのことだ。


…………

……


また保健室で寝かされたようだ。


「….う…ん。」


「あ、気がツイタ。センセイ!来てクダサイ!」


「あ、セイメルさん。」


「……Seiya.昔が嫌ナノ?」


少し驚いた…が頷く。


過去の人たちには今の僕と会わせたくない。彼らが知っている五百蔵 静夜とは全くの別人になっているのだから。


それに昔を思い出すと苦しくなる。

多くの人に迷惑を掛けたのがわかるから。


「…ソウ…。」


「…セイメルさん。今のセイメルさん。なんかいつもより大人っぽいね。」


「…そうだネ。変わったSeiyaに会ってワタシも変わったのカモ。」


「……。井上さんは?」


「教室でナイテル。」


そりゃそうだろう。

完全に人が違うのだから。


「…セイメルさん。」


「?」


「今何時?」


「11オクロック。」


「なら3時間目だね。戻ろう。」


「…イエス」


教室に戻るのは少し怖かったけど、一度気絶してしまったから、吐いたり倒れたりすることはもうないだろう。


教室の戸を開ける


一斉にこっちを向く生徒たち。


先生は大丈夫かと身体を気遣ってくれたが心配はないと伝えた。


自分の席につく。


井上さんはこっちを睨んでいる様だった。


まぁ忌み嫌われているのだ。仕方が無いだろう。


癖で苦笑いを作ろうとしたら、頬が痛くなってしまった。


そして、そのまま授業が続いた。


……


昼休み


「イノウエ!カム!」


「えっ!?ちょちょっと!」


井上さんはセイメルさんに連れ去られてしまった。


様子が気になり二人の後をつけると物理準備室に入って行った。

外で待っていると、中から会話が聞こえてきた。


「なに?貴方は誰?」


「イノウエ。Seiya…イオロイくんと関わらないで。」


「え…?あ、貴方はなんなのよ!」


「アメリカのホストシスター。」


「…そういえば留学行ってたとか聞いたことあるわね。」


「関わるの辞めて。イオロイくん言ってた。過去は忘れタイ。迷惑をかけたカラ。前とはチガウ僕だからって。」


「そ、そんな…」


「ワタシはもうイオロイくんと執拗に仲ヨクならナイ。」


「!?」


「だからオネガイ、イノウエ。Seiyaを苦しませないデ。」


セイメルさんは泣いていた。

本当はこんなことが言いたいんじゃないのだろう。

でも、僕のことを気遣ってくれたから…。


昔からセイメルさんはお姉さんぶりたがった。

でも、成績や性格から妹にそんなことが出来なかったらしい。

だから、今度はと思いそう言っているのだろう。


でもそれは…


ーキーンコーンー


…チャイムがなる


「…授業デス。」


急いで教室に向かったが、入るまでに扉の開く音が聞こえた。


セイメルさんは僕の後ろ姿を見てどう思っただろうか。


これで終わりだとか思ったのだろうか。


でも、セイメルさんに伝えたい。

僕はこんなことは望んでない。

受け入れてくれることが嬉しいのに、目の前であからさまに避けられるのは余計に苦痛だ。

それが知り合いならばなおさら。


……

放課後が来た。


結局、今日は井上さんに話しかけられなかった。


その夜は眠ることもきつく苦しかった。

人の痛みを知ることは、こんなにも苦しいとは思いもしなかったから。


………

翌朝


学校で自分の席に着くと、井上さんが来た。

なにされるか心配だったが、手に持ってるもので分かった。


「五百蔵。これ。」


「え?あぁ休んでた分のプリントか。ありがとう井上さん。」


井上さんの部分で眉が動いたようだった。


「もっとしっかりとしないから倒れるのよ!もう弱々しいなぁ。」


「….ごめんね。」


そしてその後放課後まで、誰とも話すことはなかった。


放課後……


忘れ物を取りに教室に戻ったら、中からすすり泣く声が聞こえてきた。


井上さんだった。


「なんで…なんでなの!なんで文句言っても本当に申し訳なさそうな顔をするの!

いつもみたいに苦笑いしてよ!

それに井上さんなんて呼ばないで!

前みたいに『いさぎ』って呼んでよ!

そんなの…そんなの五百蔵を追ってきた意味ないじゃん!!」


ガタッ


廊下にかかってあった置き傘を倒してしまったらしい。

完全に気づかれてしまった。


こちらを涙目で睨む井上さん。

今日は黙って立ち去ることにした。

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