表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mari&Golds  作者: 田中 友仁葉
1章
4/14

第三章「友情」

セイメルさんに笑えないことを告げた翌日。


彼女は相変わらず積極的に話しかけてきてくれた。


「ダイジョーブ?休んだ方がよくナイ?」


「ダイジョーブ。元気だよ。」


少し片言を真似して応える。


「ホント?ニホン人はHow are

you?と聞くと絶対I'm fine.て言うし…」


絶対というほどでは無いはず。


「うん、本当大丈夫。心配しないで。」


『心配しないで』が少しぶっきらぼうになってしまった…


でも、セイメルさんはそのわけを知っている。

だから明るく接してくれた。


「んー、ならイイけど…」


「…セイメルさんは僕のこと好き?」


「Why!?なんでソンナ聞くの?」


片言が増した。


「いや、この間付き合うわけないってかなり拒絶されたから。だから普通に友達として。」


「あ…イ、Yes。じゃなかったら、話さない」


だよねー。


「じゃあ、恋愛では?」


話の途中に折本さんが割り込んできた。なんてハレンチな。


「え!?やめっなんでそんなこと聞くの!?」


片言が無くなった!?


「そうだよ、恥ずかしいじゃないか。」


棒読み。


これは、酷いな。


「別に減るもんじゃないし。で、どうなの?セイメルさん。」


最初は口をあうあうとさせていたが、顔を俯けて呟いた。


「好き…かもデス。嫌いじゃないデス。でも…likeです。」


これは、僕まで恥ずかしい。

これは何という拷問だ!?


「そっかー!ありがと〜!」


「……。」


「あ、もしかして五百蔵くん赤くなってる?」


「そ、そんなこと…」


「ハハハ照れてる〜」


「せ、Seiya…。だ、ダイジョーブだからネ!?」


「う、うん…」


何がやねん


*******


セイメルさんに告白らしきものをされた放課後。


折本さんは友達と食事。

宮本くんは部活。

セイメルさんは補習ということで、一人で帰ることになったのだが。


一人はつまらないな。

以前は一人の方が多かったけど、やっぱり友達と帰るのに慣れてしまったのかな?


そう考え込んでると道を挟んで向こう側に見覚えのある女の子がいた。


「え」


なんでアイツが…!?


この数日はセイメルさんの一件以外発作が起きることがなかったけど、また来そうだ…


と、とりあえず家まで急ごう、発作が出る前に…


*******


家に着いて、姉は僕の顔色を見て少しばかり驚いた様子だった。

そのあと、ソファに寝かされて薬を飲まされた。


「これ…頓服薬じゃない…」


「飲まないよりはマシ。頓服切れてたから。」


暫くして、息もだいぶ整った。


「…ふぅ、ありがとう。」


「それ感情こもってる〜?」


「マジ感謝。せーちゃん感激して涙でちゃう。」


姉は僕の戯けに吹いた。


うわ、黒歴史かも。


「で、どうして家帰ったら、汗かいて鼻息荒くして大きく目をむいてたの?」


「その言い方やめて。気持ち悪い人にしか聞こえない。」


…まあ、気持ち悪かったんだろう


*******


「井上 いさぎ?」


「憶えてない?最後にうち来たの小学生だったけど。」


「…あ、あのツインテールのツンデレちゃんか。」


「デレ?デレってなに?井上にデレってあったかな。」


正直ずっと文句言われてた記憶しかない。

怒って泣いて帰って、また怒っての繰り返し。


僕のことも「誰にでも愛想良くするし、遠慮ってことも知らないし、なんでも顔に出てイライラする」って言われたし

家が隣で幼稚園から幼馴染だったけど、嫌われてたから距離を取ってた。

それが井上 いさぎ


高校を出る時も、誰も来ないような遠くの高校に家まで変えて通学することになったときに卒業式で「馬鹿」といわれて全くの疎遠になった。


なのに、


「で、いさぎちゃんが居たのか。この遠い学校地区に。」


「…あぁ。」


「…今日は風が騒がしいわね。」


「なんだそれ。」


急に巫山戯だした。

こっちは真面目に話したのに。


「気の所為だって、嫌ってたようなやつのところに誰も行かないって。私も絶対に職員室行かないし。」


「おい。」


この日は姉のせいで話が逸れたまま、終わってしまった。


本当に気の所為だったのかわからないまま。


********


答えはすぐに分かった。

いや思い知らされたという方が当たりかもしれない。


時は登校時。


場所は校門。


前にいるは井上本人。


僕はすぐに隠れたが、井上はなぜか辺りを見回して動く気配がない。


どうしようと戸惑っていると声をかけられた。


宮本くんだった。


「おはよう五百蔵。どうした追われてるのか。」


僕は小声で囁く。


「えーっと、いや、お腹が痛くて。」


「なら、保健室に…」


「いやいや待って。…あ、そうだ」


体格のいい宮本くんなら僕を隠して学校に入れるかも…


いや、僕も標準男子。さすがに宮本くん一人では無理だ。


「……。」


まずい、宮本くんで目立つ。

早くなんとかしないと…


そう思っているとセイメルさんが前を通りかかった。


「セイメルさん、こっちこっち」


「?…どうしマシタ?こんなトコでブラックマジックデスカ?」


「だれもこんなとこで黒魔術なんてしないよ。」


そうだ、セイメルさんも僕より高身長だし行けるかも?


「セイメルさん、宮本くん。行こうか。」


「「え?」」


二人で僕を間に挟ませて校門に入る。


他の生徒からは変な目で見られたけど、何とか誤魔化せたみたいだ。


********


「ミヤモト。変なゴシップデス。」


「ああ、まぁ暫くしたら噂なんて無くなるだろう。」


「ごめん。」


この作戦の結果、僕の代わりに宮本くんとセイメルさんが付き合ってるという噂が立ってしまった。


「ところで、五百蔵。どうしたんだ?というよりなんであんなことを?」


「素直に吐くデス!」


うぅ…さすがに黙秘権はないか。


「わかったよ。」


********


僕は昨日起こったことを素直に話した。


一度話し出すと吹っ切れたみたいで、今まで言い出せなかったことも口に出せるようになっていた。


「ツンデレか。」


「え?」


「ツンデレかわいいデス。」


「なんで?」


デレがない。


最近じゃデレがなくてもツンデレって言うのかな?


結局友人からも話を誤魔化されて一日が終わってしまった。


次の日に、何が起こるか知らないまま…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ