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Mari&Golds  作者: 田中 友仁葉
閑話1
12/14

五百蔵旅行記 4

お風呂を上がったら早速晩ご飯である。

料理は浴場に行ってる間に旅館の人が用意してくれたようだ。


「どう座る? 僕は真ん中がいいな」


僕が問うとセイメルさんが素早い返事をした。


「ハイハイ!! ならSeiyaの隣がいいデス! あと正面はユウナ来てくだサイ!」


「私? まあいいけど」


「じゃあ折本の隣……扉側は俺が座ろう。こういったことは率先したい」


「Oh! ならイサギはSeiyaの隣になるデスネ!」


セイメルさんのからかうような声にイサギは強く反発した。


「ちょ、ちょっと待ってよ!? 私、五百蔵の隣は……」


「……」


なんか傷つくなぁ。


「井上、その言い方だと五百蔵が傷つくぞ」


「べ、別にそういうつもりじゃ……もう、分かったわよ」


そう言うとイサギは僕の隣の座布団にポスンと音を立てて座り込んだ。

こう隣で見てみると、本当にイサギは小さい体だなと思う。


「じゃー食べマショー!冷めちゃいマス」


「そうだね。いただきます」


それぞれ各自で食前の言葉を言うと割り箸を取り出す。


「……?」


「セイメルさん、これはこうしてお箸にするんだよ」


そう言って僕は割り箸を二つに割る。


「Oh……アメージング」


「……それほどの物なのかな」


「ビニールに入ったフォークよりもファニーデス」


セイメルさんはそう言って、僕の真似をするように割り箸を二つに割った。


「わ! 凄い、セイメルさんお箸持てるようになったんだ」


「ふふふ……嫌い箸もマスターしまシタ」


おお、それは凄いな。


「嫌い箸って家庭科でやった気がするけどなんだっけ」


折本さんの問いに宮本くんが答えた。


「嫌い箸って言うのは簡単に言えば箸のマナーのことだな。寄せ箸、刺し箸、ねぶり箸などは有名だが、マイナーなところだと違い箸、かき箸、重ね箸などがある。特に箸渡しとわたし箸は名前が似てるが全然違うぞ」


「へぇよく知ってるわね」


「まあ俺の家が和食屋だからよく叩き込まれたんだ」


なるほどね。


「でもマナーは難しいデス……」


「まあこういう場だったら気にしなくてもいいんじゃないか? 別に礼儀をわきまえる場所じゃないんだから」


「そうデス?」


宮本くんはセイメルさんの言葉に頷く。

この2人もいつの間にか親しくなったようだ。


「……うーん」


「? イサギどうしたの」


「……この汁椀、全然開かないんだけど」


「それワタシも思いマシタ!」


えっと、そう言う時は確か……


「ここをこうして気圧を抜けば……ほら」


「Oh! イッツミラクル!」


「大袈裟だなぁ、じゃあイサギのも……」


パコッ


「……あ、開いたわ。ふ、ふん別に五百蔵の助けなんていらないんだから……」


「……その割には悲しそうデス」


「そ、そんなことないわよ!」


そう言うとイサギは顔を隠すようにお吸い物を啜った。


「……Oh……OSASHIMI……」


ふとセイメルさんはそう呟くと周りをキョロキョロし始めた、食べ方が分からないらしい。


すると宮本くんもお刺身を食べ始めた。セイメルさんはどうやら宮本くんを参考にするらしい。


……まず、ワサビを少しだけ魚の上に乗せて

……そのまま口に入れると


「むむぅっ……悪くない味デス」


そういうがワサビが効いていたのか少し涙目である。


見ていて美味しそうだったので僕もお刺身を食べることにする。


……

…………


「っ!!!!!??????」


悶絶。


鼻の奥からツーンを飛び越えてジンジンと迫ってくる痛みに僕は耐えられずに後方に倒れた。


「い、五百蔵どうした!?」


「五百蔵っ!!?」


「……そんなにワサビキツイかな」


「……Oh……」


犯人確定。


僕は無表情のまま涙目で鼻を抑えながらコーラを飲む。聞いた話だとコーラはワサビの痛みを和らげるらしい。


「……ふぅ……セイメルさん」


「……ソ、ソーリー」


どうやらセイメルさんがイタズラで僕の醤油皿にワサビをとことん盛ったらしい。


「……まあいいけど、もう本当にやめてよ」


「……無表情で言われると怖いデス」


…………


数分後、僕は醤油を刺身に掛けながら食べていると、またセイメルさんの感嘆の声が聞こえてきた。


「ミヤモト……よくそのクロ食べられマスネ……」


見てみると宮本くんは焼き魚の腸を残さずに食べている。凄いな。


「ああ、実際魚っていうのは殆どが内臓以外を食べることができる。骨だって油であげたりオーブンで焼くことで簡単なスナック菓子にもなるからな。ほら、折本を見てみろ」


宮本くんが示した折本さんを見ると、魚の目玉をほじくりながらそこから頭部の身を掻き出して食べていた。


「……こ、これは……レベル高いデス……」


……言っちゃなんだけど。

……本当、折本さんってサイコパスだよな。


*****


食事終了後、明日は起きたら帰ってしまうので僕の買ったお菓子やジュースを飲みながら少し駄弁ることにした。


「それにしても、日本は面白いデス」


「そう?」


「イエス! イッツアメージング!」


セイメルさんは浴衣をパタパタさせながら気持ちを表現していた。


「そうか、やはり日本人だとそんなこと思わないが……」


「それデス!ジャパニーズケンソン!素晴らしい文化デス」


「け、謙遜……」


「ねえ他には?」


イサギの問いにセイメルさんは首を傾げた。


「そうデスね……自動販売機が外にありマス! カナダだと盗まれちゃうので室内にしかナイデス」


「盗まれるの!? 凄いことするわね……」


「そう思うトコロ、日本は保険の国と言われる理由かもしれないデス」


「うん……なるほどね」


確かに日本は他の国と比べてもかなり安全だというのはよく知ってる。

だからこそ盗むという発想がないのかもしれないな。


…………

……


数分後


「……3人なんかおかしくなってないか?」


宮本くんが言う3人と言うのはセイメルさんとイサギ、折本さんの女性陣ことである。


「そ、そんなことないデスヨォ……」


「うんダイジョブダイジョブ……」


「うん大丈夫だよ?」


いや、折本さん以外大丈夫じゃなさそうだ。


「……い、五百蔵、3人の飲んでるの酒だぞ」


「そんな」


よく見ると缶のラベルに『お酒です』と黒い丸の中に書かれていた。


「あー僕、自販機久しぶりだったから……」


「……そ、それは悪かった」


すると突然セイメルさんが脱ぎ出した。


「暑いデスゥ〜、日本の夏はどうしてこうも暑いデスカ〜?」


「ちょ、ちょっとセイメルさん」


「おい!!」


「そうよセイメルさん……浴衣の下に下着なんてイラナイわよ……ほら脱ぎなさい……」


僕と宮本くんは2人で女性2人を止めようとするが


「……な、なかなかの力だな……」


「ってか折本さんは?」


「私は悪酔いする前に寝るから。お休み」


「折本さん……」


ありがたい。ありがたいけど酔ってないのなら助けてほしい。


「コラァッ!! 静夜っ!!」


「ど、どうしたのイサギ」


突然イサギは僕を見ると床に押し倒した。

……っていうか静夜?


「……静夜! チューしなさいっ!」


「なんでそうなるの」


「拒否権は無いわよ! ほら、口出しなさい! 舌出しなさい! むしゃぶりついてやる!」


「やるデス! イサギィィィィ!」


僕の視界にはイサギの顔と……淫らな格好ではしゃぐセイメルさんの姿があった。


「……ムラムラしてキマシタ。ワタシも加勢するデス」


「み、宮本くん!」


「悪い……も、もう俺は限界だ……」


僕は心の中で宮本くんの名前を強く叫んだ。


そして、僕は30分に渡ってよく知る女子2人に揉みくちゃにされた。


*****


翌日


「……ひどい悪夢を見たわ」


「……っていうかなんでワタシ、畳で寝てたデスカ」


「……」


「……」


「ここは……あー、旅館か」


散乱した部屋で僕ら5人は何のドキドキもない一夜を過ごした。


「……ってか、五百蔵その顔どうしたのよ」


「……イサギに迫られて」


「……ああああああっ!!お、思い出しちゃった……わ、忘れなさい! 忘れなさいよ!?」


「ゲフ」


僕は布団越しにお腹を蹴られたが、それ以上にイサギの浴衣がはだけていることが気になっていた。


*****


僕らは顔を洗い朝食を済ますと帰路についた。


「なんだかんだあったけど楽しかったわ」


「デスね! またこうしてお泊りしたいデス!」


「ああ、たまにはこういうのも悪くない」


「うん、楽しかったよ」


すると突然イサギは視線をふと下げるとキーを落として話しだした。


「……えっと五百蔵? なんか無理に誘ったみたいで悪かったわ。……もし迷惑だったらゴメン」


……

……やっぱりイサギの気持ちはよく分からないなぁ。


「……どうして謝るのさ。とても楽しかったよ。笑えなくても、気持ちはとてもワクワクできたもん。誘ってくれてありがとう、イサギ」


するとまたボンッとイサギは顔を赤くした。


「う、うるさい!! 静夜のクセに変なこと言うなぁっ!!」


「ええっ! 理不尽」


文句を言ったあと、イサギは軽く微笑んでいるように見えた。

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