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Mari&Golds  作者: 田中 友仁葉
閑話1
11/14

五百蔵旅行記 3

いい感じに日が暮れたので旅館に戻ることにした。

すっかりお腹も空いたから楽しみだ。


「あ、イサギ。はい、約束のジュース」


「……ん。あっ、これ」


「イサギ、昔からずっとセイダサイダー飲んでたでしょ。……好み変わってた?」


「……違わない」


そういうとイサギは何故かほんのり顔を赤くしてサイダーを口にした。


「……それにしてもセイメルさん、よくあの短時間で日に焼けたね」


「Seiyaに塗ってもらったおかげデス!」


セイメルさんはそう言うと、僕の手を握りしめた。


「セ、セイメルさん、恥ずかしい」


「大丈夫デース!ワタシSeiya、大好きデース!」


セイメルさんの言葉にイサギは過剰に反応し、激しく噎せた。


「えほっえほっ……五百蔵……! これ買いなさい! ジュースだけじゃ分が悪いわ!」


「え、ええっ!?」


イサギに引きずられる僕を見て、宮本くんは苦笑いしていた。


*******


旅館に着き、話し合いの結果風呂に入ることにした。

この時期は露天風呂が解放されており、広々としていて寛げそうだ。

また、まだ夕刻なのもあり人が少ないのでかなり良い。


「……五百蔵、肌白いな。プールに行ってたとは思えないぞ」


「そうかな、元々病院暮らしが長かったから色素が薄くなってるんだろうけど」


「そうか」


まあそんなこと言われてもよくわからない。


「……あ、石鹸忘れた」


「……俺のは使い切りだから、俺の分しかない」


「参ったな……」


すると、壁越しにセイメルさんのデースデースという声が聞こえてきた。


仕方が無い借りることにしよう。


「セイメルさんいるー?」


『Oh! その声はSeiyaデース!』


「悪いけど石鹸借りれる? ……ソープ、プリーズ」


『OK! 今投げマース!』


セイメルさんの返事がすると間も無く上から石鹸が飛んできた。

……良い匂いがする。


『……セイメルさん、何したの?』


『Seiyaがソープ忘れたので貸しマシタ』


『ふーん』


『なんだとぉ!?』


向こうも人がいないらしい、3人の声しか聞こえてこない。


とりあえず、背中を流しシャンプーを済ませ風呂に浸かった。


『……Oh!イサギ!ストップデス!』


『こんな……豊満な胸して……全く、私に喧嘩売ってんのかって言いたくなるわね』


『口に出てるよー』


『ア……ン……ヤンッ……ンッ♡』


……。


「おい、大丈夫か五百蔵。表情は変わらないが、顔が死にそうになってるぞ」


「……み、宮本くん。……こっちもやり返そう」


「?」


*******


「あれ? 男湯静かになったわね」


「さき上がったんじゃないデスカ?」


数分後


『宮本くんの大きいな』


『いや、五百蔵の方こそ……いや、本当に大きいな』


『待って、本気のトーンで言わないで、怖い』


『ふむ、この状態でも15センチぐらいはあるよな……』


この一言によって女性陣は半滅した。


「……憶えておこう」


「折本さん!?」


*******


……お風呂に入って40分くらいに差し掛かり、そろそろ心底から温かくなってきた。


「……」


「おい、五百蔵大丈夫か?」


宮本くんは僕がボーッとしているのを見て心配してくれたようだ。


「そろそろノボせそう」


「なら上がろう。女子を待ってる間に体調も回復するだろ」


「そうだね……そうしよっか」


こうして僕と宮本くんは女子よりも一足早めに湯船から上がった。


……

…………

さらに20分後


「遅いな」


「そうだね……まあ、女の子だから色々しなきゃいけないことが多いんだと思うよ」


「……まあそうか」


とりあえずもう少しマッサージ椅子に座ろう。

この年になって、ようやく気持ち良さが理解できた気がする。


******

一方


「セイメルさん、いさぎちゃん行くよ? 五百蔵くんたちが待ちぼうけしちゃう」


「ウ、ウエイト! 浴衣難しいデス!」


「ってこれさ、浴衣が難しいとか以前にサイズあってないし!! サイズ何選んだの!?」


浴衣を着てもセイメルの膝下は完全に露わになり、さらに胸が引っかかる所為で合わせの部分も完全に閉じきらないため、浴衣というよりは裸に法被(はっぴ)を着ているようである。


「ちゃ、ちゃんとSサイズデス!」


「女性用なんだからSは中学生サイズだよ」


「……折本さん、私Sサイズなんだけど」


「そっか、ごめんね」


こうして刻々と時間が経っていく。


「てやっ!」


「痛い痛い痛いデス!! 」


「仕方ないよ。あとでご飯の前にフロントで変えてもらおうか、それまでは適当にタオルでも下に巻いておこうよ」」


「……OKデス」


******


「オマタセシマシター!」


「うん、ゆっくりできた?」


「まあおかげさまでね」


「ねえ五百蔵くん。15センチって本当?」


みんな仲良さそうだ、本当に良かった。


「……ところでイサギ? なんでセイメルさんの前に密着しながら歩いてるの?」


「え……えっと……あれよ! こうするとセイメルさんのおっぱいが丁度頭の位置に来るから気持ちいいのよ!!」


「そ……そうなんだ……」


意外とイサギってこういうところもあるんだな。


******

食事は部屋に運ばれるということなので僕と宮本くんはコンビニに適当なものを買いに行くことにした。


「とりあえず、お菓子とかジュースとかでいいのかな」


「そうだな。お茶とかは部屋に用意されてるから簡単な茶菓子程度も買っておくことにしよう」


そんなこんなで旅館に備え付けてあるコンビニについた……が問題があった。


「……高いね」


ほとんどセットになってる缶しかない。ペットボトルとかも同じだ。


「普通のジュースは、どこかの学校が演習に必要だから買い占めたらしいな」


「あーなるほどぉ」


しかし、参ったな流石に一晩でこんなに飲めないや。


「五百蔵、悪いが自販機でジュースを買ってきてくれないか?」


「うん」


…………

……


自販機は旅館のフロントから外に出たところすぐにあった。


そういえば退院してから自販機使うのも久しぶりだなぁ。イサギのジュースも売店で買ったものだし……。


……あれ? どれがジュースでどれがお酒なんだ?


やばいな、病院生活が長かった所為で忘れてる。


「宮本く……」


あ、そうか今は僕しか居ないんだった。自分の携帯も持ってないし……仕方ない適当に買うことにしよう。


******

一方部屋では


「……また五百蔵くんに酷いことしちゃった……」


「イサギはヒトリのときは『五百蔵』じゃなくて『五百蔵くん』って呼ぶデスね」


「セッ、セイメルさん!?……あうう……」


セイメルはイサギの隣に座り軽く寄りかかった。


「……イサギはミニマムデスね」


「やめてよ気にしてるのに……そういや折本さんは?」


「テレビ見てマス」


ちょっとだけ襖を開けて確認する。


……お茶飲みながらテレビ見てる。お婆ちゃんみたいだとイサギは思った。


「……イサギはSeiyaが好きデスカ?」


「……そんなこと」


「今更ソンナの言ってもSeiya以外にはバレバレデス」


「うそぉ……」


イサギは頭を抱えた。


「……イサギはジェラシーを感じやすいタイプデスね。よくワタシのバストアグレッシブに扱いマス。オフロから出たときもワタシの裸をSeiyaに見せないようにしてマシタ」


「……ごめんね」


「構わないデス。……それから態度もまるで違いマスよ。イサギはSeiyaに対してはナンデモ怒鳴り散らしマスが、ワタシにはどんなに腹が立ってもキョトンとしてマス」


「……うう嫌われる……」


イサギは堪えきれずにえづき始めた。


「Oh! ソ、ソーリー! 泣くとは思わなかったデス! 好きだからパニックになるのはワタシにも分かりマス!」


「……ヒック……セイメルさんも五百蔵くんのこと好きなんでしょ?」


「……ちょっとYesデスね。このクエスチョンはユウナにも言われマシタ」


セイメルはケラケラと笑いながら答えた。


「……ユウナ……折本さんのことか」


「でもワタシはずっとニホンには居なかったデス。だから、Seiyaにワタシのことをたくさん知って欲しいデス!イッツメニーメニーデスね!……だからワタシはフーリッシュだけど正直に。アンド素直に接してマス」


「素直……五百蔵くんも素直が好きって言ってた。……やっぱ私は範疇じゃないのかな?」


「……イサギはSeiyaとどうなりたいデスか?」


そう聞かれ、イサギは数秒悩むと頬を緩ませて答えた。


「……まずはデートしたい。 公園や海みたいなところで2人でゆっくりとお話ししたい……パニックになって暴言を吐かずに素直になってね。……もちろん笑って欲しいけど……今は無理して笑えなくてもいい。楽しむ気持ち自体は本人にもあるはずだから」


「……なら、一度でもちゃんと素直になるデス!」


「……でも五百蔵くんは私のこと苦手だろうし……それに最近は折本さんと出来てるって話も」


「……もし苦手だったらSeiyaはこのトラベルを断わったはずデス!……それにこう見ててもユウナとSeiyaに深い関係は見えマセン!」


セイメルが話し終わると同時に扉が開く音が聞こえた。


『おかえりー』


『おうただいま。まだ料理は来てないんだな』


『あれ?イサギとセイメルさんは?』


『襖の奥にいると思うよ』


名前を呼ばれイサギは少しビクッとした。


「ほらイサギ行くデス」


「う、うん」


2人は襖を開けて3人と混じった。


「……そういえば折本さん、なんの番組見てるの?」


「笑顔の上手な作り方特集」


「あー、あるある。旅館とかに行くとこういう番組にハマっちゃうんだよね」


イサギの反応に折本は微妙に首を傾げた。

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