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Mari&Golds  作者: 田中 友仁葉
閑話1
10/14

五百蔵旅行記 2

僕と宮本くんは水着に着替えて更衣室を出た。

プールは予想以上に多くの人で溢れかえっている。


「こんな人、僕の地域じゃ滅多に見れないね」


宮本くんは頷いた。


「あぁ、祭事のときくらいじゃないか?」


「下手すりゃそれ以上かもね」


声をかけたのは別の人だった。


「折本さん」


「どうかな、よくわかんないけど。 」


折本さんは作り笑顔を浮かべて水着姿を見せる。


黄色いセパレートは笑顔がいい折本さんにとても似合っていた。

いつも下ろしていたミドルショートの髪は全て後ろで結んでいる。

身体の線は直線的だが、普段の制服姿では見られなかった二つの意外に豊かな膨らみが目を引く。


「うん似合ってるよ」


「えへへありがとう」


笑顔が眩しい。


「い、五百蔵! こっちも見なさいよ!」


「イ、イサギ!?」


腕を掴まれ体ごとグイっとイサギの方をみた。


「わ、悪かったわね……私のなんか見てもそんなに面白くもないわよね」


慌てて手を離し、イサギは胸を腕を組んで隠す。


イサギの格好は青のワンピースだ。

長い髪は三つ編みをさらに集めてお団子の形にしている。いつもの凶悪な性格と異なりかなり可愛い。

確かに胸は折本さんに比べると控えめだけどイサギの華奢な体は守ってあげたくなる感じがある。


「いや、十分可愛い……」


「う……うるさいぃ!」


イサギは顔を真っ赤にして僕から目をそらした。

……流石にこれは照れてるのだろう、多少鈍感な僕でも分かる。


「えーっと……あとはセイメルさんだけど。どこ?」


あたりを見ても彼女らしき人物はいない。


「あ、うん。ジュース買いに行った」


「オマタセー」


折本さんが答えると間も無くあどけない日本語を話す女性の声が聞こえてきた。


「……セイメルさん」


「ン? ワッツ?」


「……なんでシャツ着てるの?」


なぜか一番張り切っていたセイメルさんは、髪を頭上で簡単に結び水着ではなく膝上まであるロングシャツを着ていた。


「あ……ソノ……実は、見せるのはサスガに……ハズカシイ……」


「……どうせ濡れるじゃん、白シャツだと透けるよ?」


「あ、あれデス!『逆にエロい』ってヤツデス!」


……まあいいや。

とりあえず体ほぐさないと


そう思っている間にセイメルがプールに飛び込んだ。


「あ、だめセイメルさん。いきなり泳いだら足釣るよ。あと飛び込み禁止。それに泳ぐならシャツ脱いで」


「……まるでマザーみたいデス。仕方ないデス、ワカリマシタ」


セイメルさんに手を貸しプールから引っ張り上げ……


……僕は手を離した。


「ウェップ! ……ゴホゴホ……な、なにするデスカ!?狂気に目覚めたデスカ!? は、鼻に入っ……ゲホゴホ!」


「どうした、五百蔵」


僕はありのまま思ったことを口に出した。


「……マイクロビキニ」


「うん」


なぜか折本さんが肯定を示す。


「……どうした、五百蔵」


「宮本くん、代わりにセイメルさん引っ張り上げて」


「もう既に上がってマス。酷いデス、残酷デス」


水を吸ったシャツを絞りながら、肩が下がっているセイメルさんを見る。


「あー、なるほど、そういう意味か」


宮本くんは免疫があるのか、動じる様子はない。


言わずもがな分かるだろうが説明すると、セイメルさんはまさに恥部だけを隠すようなマイクロビキニを着ていた。

色もまさにデンジャラスな黒で、まさにグラビアモデルのような体格も興じて、歩く人々の目を引きつけている。


「それにしても本当にエゲツないもの持ってるわね……」


そういうとイサギはセイメルさんの胸部に手を食い込ませた。

胸は手の形に応じて形状が変化する。


「イサギっ! イタイ! イタイっ!」


「イ、イサギ……やめてあげて……」


キツイのはセイメルさんだけでなくて僕もなんだから…。

あぁ…頭が火照ってきた…。


僕は我慢できずにプールに突っ込んだ。


「い、五百蔵っ!?」


「……大丈夫ー。少し頭冷やすだけー」


「くっ……天然ものかっ!」


「ヒリヒリするデス」


皆の言葉を聞き流すように僕も流水プールに流されて行った。


……………

……


「……」


中腹まで行ったあたりで気がついた。


なんか僕、他のお客さんに避けられてる?


まぁ無表情を保った少年が仰向けで流されている状態なのだから、考えてみたら避けられるのは当たり前か。


…流石に背泳ぎもどきは疲れた。


そろそろ頭も冷えたしプールサイドに上がることにする。


……………


「あ、いた。五百蔵くん」


「うん、折本さんか」


近くのベンチで休んでいると、シャチのフロートを持った折本さんが声をかけてきた。


「そのシャチどうしたの?」


「セイメルさんに預けられた」


なるほど。


「五百蔵くん、いつも思うんだけどこのシャチってどうやって遊ぶものなの?」


「うーん、幼い時は乗ったりしてたけど……どうするんだろうね」


「……ふーん」


「そういえば、最近の折本さん。キャラ作ってないよね」


小首をかしげる折本さんに、僕はふと思ったことを告げた。


「そうかな?いつも通りだと思うけど♪」


今更作り直されても……


「そういやセイメルさんは?」


「あっちだよー!♪」


「折本さんは素の方がいいな。」


「そう」


……………


「Seiya〜っ! 来マシターっ!」


「五百蔵っ! どこ行ってたの!」


どうやら二人とも自分自身のせいだとは思ってないらしい。


「お、五百蔵戻ってきたのか」


そういう宮本くんの手にはビーチボールが握られていた。そういえば、このプール。コートがあったっけ?


「五百蔵、体の筋肉は大丈夫なんだよな?」


「うん、それじゃやろうか」


その後も僕たちは多いに楽しんだ。

バレーは男子チーム、女子チームでやって負けたほうが何でも相手の言うことを聞くといったルールを決めた。


……その結果、セイメルさんとイサギは血が騒いだのか見事に女子チームの圧勝となった。


「……」


「2対10とは狂気の沙汰ではないな」


肩を落とす男子チームとは対照的に女子は歪んだ笑顔を見せていた。


「……ふふふ。ついにこの時が来たわね、五百蔵 静夜!それじゃーー」


「それじゃ、Seiya。オイル塗ってクダサイ」


……

……え?


「……僕が?セイメルさんを?」


「満更でもないなさソウデス」


いや顔歪められないから。

ってかセイメルさん、満更って言葉よく知ってるな。


「ちょ、ちょっとセイメルさん!私が先でしょ!」


「ならイサギはミヤモトに頼めばいいデス」


「……ぐぬぬ」


既にセイメルさんの手にはサンオイルの瓶が握られている。


僕は宮本くんに助けを求めようとした……が。


「『五百蔵……そこは……ダメだ……』」


「うん、いいよ。ありがとう」


「こんなの録って何に使うんだ?」


既に取引が行われていた。

ってかどんな趣味してるんだ、折本さん。


そんなことよりも、セイメルさんはもうビーチでうつ伏せになっていた。


「ほらほらSeiya。今ビキニ外すデスから、塗るデス」


そういうと、セイメルさんは背中に止めていたビキニのフックを外した。

よって、型を取っていた胸は抑えるものが無くなり圧力によって左右に広がった。


僕はそれを見て鼻の奥が熱くなるのを必死に堪えながら、顔を俯けた。


「Seiya〜早くしてくだサイ!このままだとフツーにシミになっちゃいマス」


「し、仕方ない……」


僕はイサギの白い目線を感じながらもサンオイルを手にとった。

初めて触ったがすごくヌルヌルしている、これを体に塗るのか……。

早速、セイメルさんの背中に手を乗せる。


「Oh~!!」


「な、なに?」


突如セイメルさんは外国のAV女優ばりの声を出した。

……まあAVなんか見たことないけど。


「ち、違いマース!手で温めないと!……とんだサプライズデース」


「ご、ごめん……初めてだから」


「はっ初めてっ!!?セイメルさんが初めて……」


何故かイサギが1番反応したが気にしないでおこう。

これ以上こんがらがるのも苦しい。


「……これで大丈夫?」


「Oh…ナイスデス…」


その後もセイメルさんはAh~とかmm…とか変な声ばかりだしていたが暫くするとイサギが中断させてきたため、そこで終わりとなった。


「酷いデス」


「仕方ないでしょ!あんなの見てられない!」


「……なんでイサギ怒ってるのかな、宮本くん」


「……五百蔵、鈍いな」


うん、宮本くんにも言い返したい。


「じゃあ最後はイサギの命令だね」


「わ、わたし!?え……えっと……」


すると困ったように、独り言を呟き始めた……


「……オイル……?いやダメ……なら、ウォータースライダー……ダメそれは私が苦手だった……なら……うーん……」


「……イサギ?」


声を掛けると突然目を見開き、大声を上げた。


「……い、五百蔵!」


「なに?」


「……ジュース買ってこい!」


イサギはそう言った瞬間顔を青ざめさせて頭を抱え、そのままプールに突っ込んで行った。


……ていうかパシリをさせられるとは思わなかったな……まあいっか。


「あとで、買ってあげよう」


「……鈍いな」


「私は何のことかわかんないけど、なんとなく五百蔵くんが人の感性が掴めない人ということは分かったよ」


二人に言いたい。


お前が言うな。

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