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眠れる森の美女4
「私…数時間しか寝ていないと思ってた…。
でも違ったわ…!
少ししか生えてなかった茨が、森のようにたくさん増えていたんだもの…っ」
少女はポロポロと涙を零し始めた。
「どんな魔法が掛けてあるのかはわからないけど…、この塔だけ時の流れがおかしいの…!
私…、もう何十年もこの姿のまま…!
周りの人からは“魔女”なんて言われるし…っ。
ずっと…ずっと独り…。
私はずっと独りなんだわ…!」
わあああっ…と泣き出した少女を見て、アルフォードは胸が痛くなった。
少女の気持ちが、ようやくわかった気がした。
「…俺も最初は、茨の森には魔女がいるんだと思ってた。
でも違った」
アルフォードは、1メートルだけ空けて少女に近づいた。
「俺の目の前にいるのは、ただの女の子だ。
泣き虫で、リスが好きな、普通の女の子。
でも…とっても可愛い」
少女はもう、泣き止んでいた。
「…君の名前を、教えてくれる?」
少女は一歩、また一歩とアルフォードに近づいた。
「私…、私の名前は……」
そして、涙でぐちゃぐちゃになった顔をアルフォードに向けて言った。
「………エレナ」
─END─