眠れる森の美女3
─その次の日─
青年はまた、リスを追う形で塔まで来た。
今日こそは、少女と話をしようと。
少女がリスを招き入れたタイミングで、声を掛ける。
「ねぇ!!
君の名前、何て言うの!?
俺、アルフォードって言うんだ!!」
少し遠い距離での自己紹介。
少女は何も言わなかった。
けれど今度は、逃げなかった。
「…君と話がしたいんだけど、いいかな!?」
少女は一度だけ、コクリと頷いた。
それから青年──アルフォードは、少女に語り掛けた。
少女は聞いているだけだったけど、嫌そうには見えなかった。
しばらくすると、アルフォードの下に縄が降ろされた。
アルフォードは深く考えず、その縄を伝って塔をよじ登っていった。
「よっと…。
お招きありがとう……って」
アルフォードが部屋に辿り着くと、少女は部屋の隅っこで固まっていた。
アルフォードが近づこうとすると、少女が「来ないで!」と叫んだ。
「お願い…。
そこから……こちらに来ないで…」
アルフォードは少女の声が震えているのに気づいて、その場に座った。
そして、話の続きをした。
その日はそれで終わり、アルフォードはリスと共に帰っていった。
また次の日塔に行くと、既に縄は降ろされていた。
アルフォードはまた、縄を伝って塔に登った。
「…ねぇ。
君はどうしてココにいるの?」
アルフォードの質問に、少女はリスを抱きしめ黙り込んだ。
が、しばらくすると口を動かした。
「…わからないわ。
気づいたらココにいたの」
「気づいたら?」
少女はコクンと頷いた。
「知り合いの…、男の魔法使いに……茨の森に連れてこられて……。
…いつの間にか、寝ていたみたいで…。
……起きたらここにいたわ」
アルフォードは感づいた。
その男が何かをしたのだと。