眠れる森の美女1
2作目は『眠れる森の美女』
今はしっかり起きています。
「こら!
クー!待て!」
飼っていたリスが逃げ出し、それを追いかけていった青年。
「あ!」
リスを追いかけているうちに、森の奥深くまで来てしまった。
「しまった…。
茨の森じゃないか…」
近づいてはいけないと言われていた茨の森。
そこには、魔女が住んでいるという噂がある。
「早くクーを連れて帰らないと…。
……!!こら!!クー!!」
リスは小さい体を利用して、茨を避けてスルスルと進んでいった。
「参ったなぁ…。
この茨を何とかしないと…」
青年はしばらくの間考えていた。
一方でリスは、茨の森の奥にある、塔にたどり着いていた。
高い位置に窓が1つしかない、寂しい塔。
リスはその窓目指して駆け上がっていった。
カリカリカリ…
「あら?」
音が聞こえた気がして、少女は窓の近くに行った。
「まあ。リスさんだわ」
窓を引っ掻いていたのは、あのリスだった。
「入りたいのかしら?
ちょっと待ってね」
少女が窓を開けると、リスは少女に飛びついた。
「ふふっ。くすぐったいわ。
…ねぇ、リスさん。
あなたは迷子なの?それとも誰かに飼われているの?」
問いかけても、リスはただ、少女にじゃれるだけだった。
「ねぇ、リスさん。
私、ここで独りぼっちなの。
ずーっとずーっと独りぼっち。
少しの間でいいから、一緒に遊んでくれる?」
リスは、まるで「うん」と言うように、少女に頬擦りをした。
数時間後。
茨を切りながら少しずつ進んでいた青年は、塔を見つけた。
リスと少女がいる、あの塔を。
「まさか。
こんな所には入らないよな」
男が踵を返し戻ろうとすると、きゃっきゃっと楽しそうな声が聞こえる。
自分の飼っているリスと、少女の声。