シンデレラ1
最初の話は『シンデレラ』
主人公は何でも出来ちゃうすごい娘です。
「レイラー!どこにいるのー!」
屋敷の中に響く、お義母さまの声。
「ここにいるわよー」
まあまあの声で返事をする。
ほどなくして、義母が現れる。
「…もう、また屋根裏部屋に来て。
あなた、ピアノのお稽古はしたの?」
怒る義母に、溜め息をつく。
「したわよ。
ヴァイオリンも、ダンスも、お洋服のチェックだってしたわ。
もうやることがないの」
私がそう言うと、義母は少し困る。
「あら、そう…」
普通の子なら1日掛けてやることを、あたしは半日で終わらせてしまう。
どうやら、生まれつき天才肌らしい。
「なら、たまには外へ出てみたら?
お姉さんたちは遊びに出てるわよ」
「…わかってるわよ」
それを聞くと、義母は何も言わず立ち去った。
私の名前はレイラ・バーナル。
ボルト・バーナル伯爵の一人娘。
実の母は、私が生まれてすぐに死んだ。
だからずっとお父さまと2人だったんだけど、最近になって家族が増えた。
お父さまが再婚したから。
お父さまが再婚した女には、娘が2人いた。
年齢が私よりも上だから、自動的に義姉になってしまう。
別に姉妹が増えることは嫌じゃなかったけど、この2人は特別気にくわなかった。
理由は、単に馬鹿だから。
お義母は優しい性格で、血の繋がらない私を凄く気遣ってくれた。
優しいけれど、母として言う時は言う。
それはどうやら、私だけだったみたいで。
実の娘は、存分に甘やかしていたらしい。
やりたいことだけやって、遊びたいだけ遊んで。
私が初めて義姉に会った時、彼女たちはこう言った。
『まあ!男にモテなさそうな顔!』
死ねばいいと思った。
生憎、生まれてこの方男に苦労したことはない。
ただ好みでないから、断り続けていただけ。
そんな、男と遊ぶことしか脳がない馬鹿な義姉たちは今、この国の王子にご執心らしい。