表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

epilogue-the end

 エピローグです。

 〝ノアの箱舟〟の〝出航〟から一年が経った。

 地上の除染作業が終わった頃だ。

「不知火代表、そろそろ」

 浦沢が声を掛けて来た。

「ああ、私もそう思って居た頃だ。〝ノアの箱舟〟代表として命じる。地上視察部隊を向かわせろ」

「分かりました。直ぐに向かわせます」

 私は制御盤でシェルターの蓋を開け、地上視察部隊を向かわせた。放射線量等を測らせ、人間が地上で暮らせるか確かめさせる為だ。

 暫くして、地上視察部隊が帰って来た。彼等の報告は驚くべき物だった。

「想定外の事態が起きました。放射線量が迚もじゃないが人間の過ごせる程度じゃない」

「如何言う事だ。放射性物質除去装置は機能しなかったのか」

「いえ、其れは機能して居た様なのですが……其の除去能力を遥かに超える放射性物質が残留して居た様です」

「何だと……如何言う事だ。

 浦沢君、計算では完全な除去は可能だったのだろう?」

「ええ、間違い有りません。何度も計算して確かめましたし」

「と為ると……」

 頭が回転する。考えられる可能性は何だ。何故計算以上の放射線汚染が起こって居るんだ。

 放射性物質の量が多い。此れが鍵ではないか。いや然し、確かに各国は核兵器の所持量を発表して居た。

 いや待てよ。其の発表が正しかったとは限らないじゃないか。そうだ、各国が嘘の発表をして居たとしたら……本当はもっと多くの核兵器を所持して居たとしたら……。

 合点が行った。矢張り、人間は醜かった。核兵器保有国は嘘を吐いて居たのだ。発表通りの核兵器の廃棄等して居なかったのだ。

 汚い人間を信じた我々の自業自得なのか。

 資本を以て〝乗組員〟に潜り込んだ者が居たから罰が当たったのではないか。

 いや、違うな。

 我々が、私が、驕って居たのだ。

 神に為ろう等と考えて居たのがいけなかったのではないか。

 何だ、正に〝バベルの塔〟じゃないか。

 神に為ろうとした人間に、神からの本当の罰が与えられたのだ。

 我々の不穏な空気を感じ取ったのだろうか。〝乗組員〟の間で諍いが起こり始めた。〝一体如何言う事だ〟等と罵声が飛んで来るのが聞こえる。端から見て居ると話が全く噛み合って居ない。

 其れは丸で、怒った神に拠って言語をバラバラにされたノアの一族の如く。

 人類の滅亡は決定的だ。此れで完全に人間に拠る汚い世界は滅びた、と言う事か。

 シェルター内の食料が尽き、我々が死に行くのもそう遠い事ではないだろう。

 扨、私の、そして人類の残り少ない寿命。何をして過ごそうか。

 以上で『ノアの箱舟』は完結です。

 個人的に気に入っているラストです(笑)。

 お付き合い頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ