prologue
過去、同名で投稿した小説の再掲載です。
過去を知って居る方も結末までは読んでないかと思うのでどうぞ。
一気に終わりまで掲載します。お好きなペースでお楽しみ下さい。
prologue-about me
私にも正義を志した過去が有った。
私にも理想に燃えた過去が有った。
私にも世界を変えようとした過去が有った。
――世界は汚い。大人達は汚い。こんな大人には僕は為らない。こんな世界を僕は放っては置かない……。
彼の頃は若かった。何も知らなかった。何故汚れた大人達は、こうも汚い儘生きて行けるのかと思った。何故生き汚い事に耐えられるのかと思った。
其れは違う。今なら分かる。人が生きて行く事、其れが抑々汚いのだ。そして、生きて行く為には、愛する者を守る為には、生き汚くとも耐えるしか無いのだ。見えない所で手を回してでも、他人を蹴落としてでも、自分の利益を守らなくてはならないのだ。
だが、一方では未だに思う。
若しも、全ての人が若かりし頃の私と同じ思考なら、助け合って生きて行けるなら、世界は……。
詮無い事だ。世界はもう出来上がって居る。未だ成長の余地は在るかもしれない。だが、其れでも、世界の根底に渦巻いて居る汚い物は消えて無くなりはしないだろう。
そう。其れは必要悪。世界を動かす潤滑油。
頭では理解している。身体もその潤滑油に染まり切って居る。
……それでも、心の奥底には未だ、頭で何度否定しても割り切れない自分がいた。