告白
休み時間になると
さっきまですごく静かだった
「教室」という「小さな箱」の中が
まるで小人が飛んだり跳ねたり歌ったりするかのように
すごく騒がしくなる。
まるでサーカスみたいだ。
私は
やっぱりそんな「小さな箱」の空間が苦手。
サーカスみたいな騒がしい場所が好きじゃない。
…昔は大好きだったけど。
私は机の上に教科書を積み重ね、そこに突っ伏した。
そうすると、少しだけ自分の世界に入り込めてスッキリする。
「日高さんっ」
頭上から爽やかな声が聞こえてきた。
何事か?と思って顔を上げると
目の前にはにっこりと笑う小野崎がいた。
「ああ…小野崎、何?」
小野崎の後ろにいる数人の女子達は少し私を睨んでいる。
「今日の放課後、体育祭の委員だけ会議室3に集まって話し合いするらしいんだよね」
私は後ろの女子達と目が合った。
小野崎ってこんなに人気なんだ、とやっと実感した。
こういうややこしい馬鹿な女子とは関わらないほうがいいんだよね…
「で、そこでクラスごとに体育祭のスローガン考えないといけないらしくてさっ日高さん、今考えよ。」
爽やかな笑顔だけど、私にはどうも気に入らない。
何故だかよくわからないけどすごく苦手。
雰囲気か?
「あ、うんわかった」
適当に返事をして、机の上に紙とシャーペンを出した。
「書記は日高さんがよろしく。」
はい、という風に紙とシャーペンを渡された。
私はゆっくりとシャーペンを持った。
紙に『体育祭スローガン』と
書こうとした。
「…ん?」
あれ?文字が書けない…
久しぶりにシャーペンを手に取ったからかな?
ちらり、と小野崎のほうを見る。
すると
小野崎はクスクスと笑っていた。
「…ごめん日高さん…、芯…出て…ない…」
笑いがとまらないのか、途切れ途切れに喋る小野崎。
「え…あっ」
恥ずかしいことに気づかれて、焦る。
ずっと笑ってる小野崎に、次第に腹が立ってきた。
馬鹿にしてんの?って思う。
「日高さんって意外と可愛いところあるよね」
小野崎はしゃがんで、上目遣いでにっこり笑った。
爽やかで綺麗なその笑顔に、少しだけ頬が熱くなった。
「別にっ」
私は小野崎に気をとられないように慌てて芯を出した。
だけど出しすぎて、ポキッと折れてしまう。
すると小野崎はまだ笑っている。
「日高さん、さ、やろうよ」
「あ、うん。」
我に返って、話し合い開始。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
放課後になって、会議が終わった。
今は私と小野崎の2人で
教室の中。
静かにカーテンが揺れて涼しい風が吹く。
心地良い空間だ。
最近行ってないあのロッカーの上みたい。
ぼーっと夕焼けを眺めていると
突然小野崎に呼ばれた。
「え?あ、何?」
ぱっと振り向くと、すぐそこに小野崎がいた。
「あのさ…」
少しの沈黙。
時計の針の音と様々な部活の音だけが響く。
「俺…日高のこと好きなんだっ」
え…!?
考える暇もなく、小野崎に抱きしめられた。
「え…あの、え…?」
混乱する私を落ち着かせるかのように、強く。
「あの…小野崎…?」
こんな私が誰かに告白されるとか…
想像もしてなかった。
「返事、待ってるね」
また同じ笑顔で笑って、小野崎は教室を出て行った。
1人
取り残された。
頭がついていかない。
私が…
告白!?