猫、赤面。
“うさぎ”と出逢ってから私は
即効寝て、たった今起きた。
時間は…
下で掃除をする音が聞こえるから、
6時間目が終わったところか。
―それにしても。
中庭の掃除当番変わったんだなーっ
前は熱心に一言も喋らずに掃除する真面目軍団だったのに
今日から何もしないチャラ男軍団か…。
私はどんな奴等か気になったから、
ロッカーの上から下を見てみた。
するとー
「おいおい~今日マック行く?」
「俺ミスド~」
「合コンすんじゃねーの?」
「そうだったーっ!何時から?可愛い子いる?」
「いるいる~こいつとかぁー」
3,4人ぐらいのチャラ男が中庭にいる。
見た目も中身も「肉食です」って感じの奴等。
猫からしたらそんなの興味ないです…
「ちゃっ…ちゃんと掃除してくださいっ」
ぼーっとしてたら突然大声。
下の肉食軍団も口をポカン...とあけている。
だけど私は声の主に驚いた。
―さっきのうさぎ君、須藤だったから。
「何だよ須藤。てめーみたいなガリ勉は俺等の代わりに掃除しとけよ」
「そうそうっ!須藤ガリ勉のくせに前のテスト0点なんだぜ?」
「うっそwアホだこいつ!」
チャラ男は須藤を取り囲み、笑いものにしている。
あんなに笑ってアホじゃないの…?
そして須藤は何も言い返せないのか、ずっとうつむいている。
―こういう時、私はどうするべきだろうか。
バッとかっこよく降りてあいつ等を追い払う?
こっから必死に叫ぶ?
須藤をこっちに呼ぶ?
…どうすれば…。
迷ってる最中だった。
須藤の反応が面白くないのか、
チャラ男達は掃除をサボッてそのまま教室へ帰っていった。
―何も、出来なかった。
「須藤!あんたあーいう時は何か言い返すべきじゃないの」
私はどうすればいいかわからないまま、下に降りて須藤の傍にいった。
「あ、あ…日高さん」
少し俯きながら須藤はボソボソと言った。
眼鏡の奥の目は少しうるんでいる。
「はいはいーチャラ男よりも怖い奴が来てごめんなさい」
私は須藤を置いて、もう一度ロッカーへ上ろうとした。
「あ、の…一緒に掃除してくれませんか」
須藤は泣きそうな真っ赤な顔で私を見上げた。
…うさぎかよ!
いや、ほんとうさぎだこいつ…。
「はあ?何で私が掃除なんか」
何を言い出すかと思えば掃除かよ…
「だって…あの人たち高山君たちいっちゃったし…人手足りないし…」
須藤は私を上目遣いで見つめてくる。
男の上目遣いってこんなに…っ
何か照れるし…こっち見られると照れる!
「わ...わかった」
…だってあんな顔で見られたら断れない。
須藤に指示されながら、私は掃除を開始。
11月上旬だからそろそろ肌寒い…
セーターだけじゃ寒くて、
日向ぼっこのために教室においてきたコートが欲しくてたまらない。
「ね…すっどぉ...へっくしゅんっ!!!!!!」
須藤を呼ぼうとしたら、思いっきりくしゃみが出た。
須藤はぽかんとこっちを見ている。
ほんと寒いな…。
長い髪の毛を出来るだけマフラー代わりにしようとする。
…けど、上手くいかない。
「日高さんって髪の毛長いね」
…え?
今それ?
「あ、ご…ごめん。あの、僕の学ラン使う?」
須藤は学ランを脱ぎながら私に聞いてきた。
何何何!?
急に優しいとか何よ…。
「い…いいよ、いらない」
ふいっと背を向けて、掃除を続ける。
何か空気に流されてる気がする…
“自由にいる”
がモットーなのに。
“人と関わらない”
って決めてるのに。
何でこんなにドキドキしてるわけ…。