うさぎと出会いました。
人間なんて、信じるのが馬鹿なんだと思う。
派手な人に気に入られれば誰にも嫌われない
とか
地味な人と一緒にいたら私まで嫌われる
とか。
結局誰もが自分のことしか考えてない。
もちろん私もその1人。
だからせめて、誰にも迷惑かけない自己中な生き方をしたかった。
誰とも関わらなくていいと思った。
―君に出会うまでは
「はー…。よく寝た…」
中庭の端にある、掃除用のホウキが入ったロッカーの上で
私は日向ぼっこをしていた。
これが私の毎日の日課。
昼休みにここでご飯を食べて、そのまま6時間目の後の掃除までサボる。
けど、今日はまだ5時間目が終わったところだった。
て、事はまだ50分ぐらい時間が余っている。
二度寝…しようかなあ…
そう思ったときだ。
爽やかな風が吹き、髪の毛が綺麗に散らばる。
それと同時に、下の方で「ひゃーっ」って声が聞こえた。
…男?
そして、2秒後ぐらいに景色が全て真っ白になった。
顔を触ってみると、どうやら白い紙が私の顔を隠したようだ。
ピラッ
四角に折りたたまれたその紙を開くと『第一学年中間考査 解答用紙』という文字が
見えた。
『第一学年』ということは同い年だ。
「待ってえええ!僕の答案~~~!」
下で叫び声が聞こえる。
…これは声の主のテストなのか。
何となくだけど、悪いことだとはわかっているけど…
私は声の主の点数を見てしまった。
『0点』
赤い、はっきりとした文字で点数は書かれていた。
一瞬100点なのか?と疑ってみたけど、
ひっくりかえしても裏返しても『0』は変わらない。
そして、同時に0点の人が誰か気になったから、名前も見てみた。
『須藤 修平』と書かれている。
字はものすごく綺麗で、こんなに綺麗なら普通は高得点をとるような感じ。
クラスは4組…。
私の隣のクラスなのに、名前は聞いたことも見たこともなかった。
…と、いうことはかなりの真面目君か地味なのか、どっちかだろう。
「だ…誰かいますかっ?」
必死にロッカーと言う高い壁を越えてきた『須藤修平』は、
息を荒くしながらこちらを見ている。
髪はボサボサ、かけている眼鏡は微妙に傾いてる。
まるで、必死にライオンから逃げてきた
小さなうさぎのようだった。
じーっと見ていたら、目が合った。
そして、目が合った瞬間に須藤の血の気が引いていくのが分かった。
「うわ…本当に今日は最悪な日だ…」
ボソボソとそういう声が聞こえた。
須藤は真顔でそういってるから、多分独り言。
「ん、須藤修平さん、0点のテスト用紙」
膝をついて、まだ息を荒くしている須藤に私は解答用紙を渡した。
須藤はすごくビクビクしながら「あ、え、う、ん、あ…ありがとう」
といいながら、急いでその紙を取った。
…確実にビビッてるじゃん。
「須藤が最悪な日っていってる理由、当ててあげようか」
そんな須藤に嫌気がさしたから、そう言ってみた。
すると須藤は、独り言が聞こえてるとは思っていなかったようで
すごくすごく焦っている。
「①今日の『おはよう!モーニング!!』の星座占いが最下位だった②テストで0点、しかもその補習でGWは丸つぶれ③解答用紙が飛んでいって点数がバレた。しかもその解答用紙を拾ったのが、よりによって学年で一番怖いといわれてる『日高柚麻』だった。 でしょ?」
にっこりと笑って、須藤を見る。
『図星だ…』ってきっと思っているのだろう、眼鏡ごしに目をすごく大きく開いている。
「あ…あの…日高さん…何でわかるんですか…」
須藤は同学年なのに何故か敬語で聞いてきた。
「私もあんたと同じ山羊座だから」
くすっと笑いながら高みの気分で須藤を見る。
「山羊座…今日最下位ですもんね…日高さんも…今日最悪でしたか?」
まだビクビクしてる須藤が、だんだんと可愛く見えてきた。
「そうだね。二度寝しようとした瞬間に真っ白な解答用紙が飛んできたんだし」
そういうと、須藤はまたまた血の気が引いていた。
真っ青だ。ドラえもんじゃないんだからあんた…。
「あ、ほんとごめんなさい…!あの…わざとじゃないんで…!それに、運動神経…悪いだけなんで…ほんと…すいません」
泣きそうにながら須藤は言う。
これ以上からかったら可哀想かなあ?
「いいよ別に。私、寝るから」
須藤に背を向けて、私はゴロンッと寝た。
「あの…6時間目はサボるつもりですか?」
声がしたので目を開けると、すぐ目の前…人差し指一本ぐらいの距離に須藤の顔があった。
「わっ!?ちょっ!!!あんたっ///何っ!?」
「何って…サボるんですか?」
「サボるよ…いつもそうだし」
「駄目ですよ!!!さ、いきましょうよ」
ぐいっと須藤が手を引っ張る。
「意味わかんないんだけど何なのあんた。何様?」
須藤の手を跳ね除け、早口で言う。
すると須藤はしょんぼりした。
「ごめんなさい」
そしてそのまま、後ろから誰かに追われているかのように
ロッカーから降りていった。
―それが、君との出会い。