表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/17

7話

「……あれ?」


「あーあ、こんな子供に手加減もなしにあんなことするなんて、マコトって随分と酷い人間なのね?」


 二人の少女を抱き上げてベッドに寝かせるルファ。


 何故かベッドの上には今の今まで闘っていた赤と青のグラマラスマッチョではなく、小柄な少女が二人横たわっていた。


「え……? もしかして、これがアカとアオなのか?」


「そうよ? この子達は魔力を身体能力に転換して、並みの巨人以上の力を出すことができるの。まあ、マコトはその巨人以上の力を持つこの子達に勝っちゃったわけだけど」


 ベッドに横たわる赤と青の二人の少女は、確かにさっきまで闘っていたアカとアオらしい。

 伸び縮みするのか、身に纏っている衣装はきわどさそのままで小柄になった体にもフィットしていた。


「これは二人ともしばらく起きれそうにないわね……。悪いけどマコト、二人が起きるまで一緒にいてくれる? 私は少し用事があるから」


「え? おい?」


「二人が起きたらここから出る方法を聞くといいわ。それじゃあねー」


 俺が引き止める間もなく、ルファはこの部屋にたった一つしかないドアから出て行く。


 俺はすぐに駆け寄りドアを開けようとしたがドアノブはびくともせず、魔力を込めた掌底でもドアをぶち破ることはできなかった。




「……はぁ」


 俺はベッドに寝ているアカとアオを見てため息をつく。


 ……まさか本当はこんな小柄な女の子だったとは。


 あどけなさの残る顔立ち、すらりとした華奢な手足、サラサラの髪、胸は……これからに期待か? 本当にさっきまで闘っていた相手だとは思えない。

 アカとアオは見た目が小柄な少女になっても、肌や髪の色以外はそっくりなままだった。


「一応、傷くらいは治しといてやるか」


 俺は二人に回復魔法をかけてやる。

 魔法の光が二人を包み、目に見える切り傷や痣は消えていった。


 二人の寝息が穏やかになるのを見届け、俺は二人が寝ているベッドを離れて椅子に座り、虚空を眺める。


「それにしても、こっちに来てから流されるままだな、俺」


 ほんと、いろいろとペースを崩されまくりな気がする。


 ん……? でもよくよく考えてみれば、一回目のときも二回目のときもこんな感じだったような……。


 一回目はいつの間にかエルフと獣人と人間の橋渡し役みたいなことをやってたし、二回目は頼まれるまま魔王退治なんてやっちゃったしなあ。

 実は俺って意外と流されやすい性格なのかも?




 物思いにふけること一時間。俺は自らの流されやすい性格や意外と押しに弱い自分に気がつき、軽く落ち込んでいた。


「……ウ……ン」「……」


 アカとアオと俺の息遣いしか聞こえなかった広い部屋の中、ゴソゴソと寝返りをうつような布の音と、アカのものだろうか? うわごとが響く。


「お? 起きたか?」


 俺はベッドに近づき二人の顔を覗き込んだ、その瞬間――。


「いただきっ!」「……き!」


 アカとアオの細い手足が俺を捉え、アカの顔が一気にアップになる。


「ムグ!?」


 ガツンッ! と歯と歯がぶつかり、口の中に鉄の味が広がった。


「次っ! アオ、早く!」「……うん!」


「なにしやが――ッムグ!?」


 アカが離れたと思ったら、間を空けずに今度はアオが俺の唇を自らの唇でふさぐ。


「これで私達は婚約者同士だなっ!」


 俺と唇を重ねるアオを見て、満足そうに宣言するアカ。


 ……やられた。





「マコト!? どこに行っていたのですか!?」


 ルファの部屋から脱出し、城の廊下をアカとアオの三人で歩いていると、俺を見つけたフィレーネが声をかけてきた。


 俺の右にはアカ、左にはアオがそれぞれ俺の腕を抱きかかえるように寄り添っている。

 歩きづらいことこの上ないんだが、めちゃくちゃ強い力で両腕ともガッチリとホールドされているので、ほどくにほどけないのだ。


 それを見たフィレーネは眉をひそめ、俺にではなく両隣の少女に問いかける。


「アカお姉さま、アオお姉さま。どうしてマコトと一緒に?」


 うん? ……お姉さま?


「ンフフー……。婚約者なんだから、一緒にいるのは当たり前だよ」「……当たり前」


「マコトの婚約者は私です!」


「フィレーネだけがマコトの婚約者だなんてズルイから、私達も婚約者になったんだよー」「……よー」


「……マコト! どういうことですか!?」


 キッ! とフィレーネが俺を睨む。


 その迫力に思わずたじろぐ俺。


「フィレーネ、マコトを怒るな! マコトは私たち二人に勝った。私たちは決めていた。私たちに勝つことができる男がこの世にいるなら、その男を夫としようって」「……だから」


 二人は俺を見上げ、フィレーネに視線を戻す。


「それにそもそも、お母様はマコトが私たちの中から一人だけを選べなんて言ってなかった」「……なかった」


「……それは、……そうですが」


 ……なんとなく、話纏まった、か? それにしてもさっきの発言が気になる。


「……あのさ、アカとアオって、フィレーネよりも年上?」


「そうだよ」「……よ」


 当たり前のように答える赤青の双子。


 見た目じゃ完全にフィレーネが年上なんだけどなぁ。


「じゃあ、アカとアオはいくつなんだ?」


「21だ」「……だ」


「……。んじゃ、フィレーネは?」


「私は17歳です」


 そうだったんだ。いや、まじで見た目じゃ年齢がわからん。


「ちなみにフォルスナは? 何歳なんだ?」


「お母様?」「……さま?」


「そういえば、私は知らないです」


「私達も知らなーい」「……なーい」


「ルファお姉さまなら知っているかしら……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ