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6話

「邪魔者がようやくいなくなったわね」


「フィレーネのことか?」


「他に誰がいるっていうの? それにしても貴方、魔力はすごいくせに魔法耐性は大したことないんじゃない? あんなあからさまな魅了の魔法にかかるなんて」


「……魅了の、魔法?」


「ええ、あの子の得意魔法よ」


 魅了の魔法……ねえ、確かにさっきフィレーネの目を見ていたら吸い込まれるような感覚がしたけど、あれがそうなのか?

 今まで精神系の魔法にかかった経験がないからなあ。前回の魔王討伐のときもガンガン敵をぶっ飛ばしてただけだったし……。


「ところでマコト、だったかしら? ここにいたらそのうちフィレーネが戻ってくるから、場所を変えるわよ」


 ルファはそう言って俺の手を掴む。


 そして突然目の前が真っ暗になったかと思ったら、俺はいつの間にか見慣れないだだっ広い部屋の中に移動していた。


 部屋は学校の体育館ほどの広さで、部屋の中にはシンプルなテーブルセットとベッドがひとつだけ。壁や天井に窓はなく、壁には木のドアが一つだけある。


「ここなら誰も入ってこないわ」


 ルファはそう言いながら椅子に腰掛ける。俺も座ることを促され、ルファの対面に座った。


「さて、改めて自己紹介させてもらうわね。私はルファ。お母様の53番目の娘で、魔王軍の中では主に魔法具関連の開発を担当しているわ」


 褐色の肌をしているルファはその豊満な胸を強調するようなドレスを身に纏い、更にそれを強調しているのか、挟み込むようにして腕を組んでいる。

 髪の毛は少しウェーブがかかった黒色、頭部には2本の角が生えていた。


 ルファの自己紹介を受け、俺も改めて自己紹介をする。


「俺はマコトだ。まあ、知ってるよな? 先日人間の召喚魔法によって呼び出された異世界の人間で、攻撃魔法や武術なんかはそれなりだと自負している」


「ふうん、魔法はともかく、武術ね……」


「それにしても、この部屋はなんだ? いつの間に移動したのかもわからなかったし、どういう魔法なんだ?」


「いきなりの質問がそれ? ……まあいいわ。そう、私の魔法よ。この場所は異次元空間に作られた私だけの場所。私が招待しない限りこの場所には誰も入ってこれない」


「へえ、便利な魔法だな」


「うふふ、そうでしょう? ここなら何をしていても、絶対に外部にはわからないのよ?」


 ルファの金色の目が妖しく光る。


 ……これはまさか、フィレーネと同じパターンか!?


 俺は思わず身構える。


「ああ、そんなに警戒しないで、私じゃないの。私じゃなくて、用があるのは……」


「私達だ!」「……だ」


「ッ!?」


 ドカッ!


 不意に聞こえた声と同時に衝撃が走る。


 俺は文字通り吹っ飛び、背後の壁に背中から叩きつけられた。


「ごめんなさいね、この子達にどうしてもって頼まれたのよ」


 言葉とは裏腹に全く謝っている態度ではないルファの両サイドには、さっきまで絶対にいなかった、二人の女性が佇んでいた。


 見た目そっくりなこの二人だが、片方は赤い肌に赤い髪、もう片方は青い肌に青い髪。頭には1本の大きな角が生え、筋肉質な体は大きく、二人とも身長は2メートルを超えている。

 身に纏っているきわどい衣装も、色は違えど全く同じだ。


 二人はルファと同じような金色の瞳を真っ直ぐ俺に向けている。 


「この子達はアカとアオ。私の妹なんだけど、是非貴方と闘ってみたいらしいのよ」


 赤と青って、もうちょっと名前を捻れよ! 誰だ、名づけたのは!?


「私が二人の名付け親なのよ。ウフッ」


「……お前かよ!?」


 漫才のような俺達のやり取りには目もくれず、二人は名乗る。


「私はアカ!」「……アオ」


「俺はマコトだ。受けてたってやる」


「行くぞ!」「……ぞ」


 アカとアオはその言葉と同時に、その巨体には似つかわしくないスピードで距離を詰めてきた。


 アカの繰り出す拳をギリギリでかわし、アオの蹴りを肘で受ける。続いてアオの攻撃をかわせばアカの攻撃が、アカの攻撃を受ければアオの攻撃がと、息をつく暇もないほどの猛攻。


 双子なんだろう二人の攻撃は絶妙のコンビネーションで、俺に攻撃する隙をなかなか与えない。


 それでも俺は突きや蹴りを攻撃の合間に返すが、アカを狙えばアオが、アオを狙えばアカがフォローし、決定打にはならなかった。




「なかなかやるな、マコト!」「……ト!」


「そいつはありがとうよ」


 そんなこんなでもう30分は攻防を繰り返しているが、一向に勝負がつかない。

 目の端ではルファがどこから運んだのか、ティーセットを用意してお茶を楽しんでいた。


「もし私達に勝ったら、マコトを私達の婿にしてやる!」「……やる」


「っと!」


 アカとアオから同時に蹴りを食らって、そのまま距離をとる俺。


 それにしてもあれだ、コンビネーションが抜群過ぎて、まるで4本腕4本足の相手と戦ってるみたいな感覚だ。

 昔読んだ漫画の中に複数を相手取る場合はそいつらを一人だと考えて対処すればいいとか書いてあったけど、こいつらは一体になりすぎてて逆にきっついぞ。


 婿になるとかそんなんはどうでもいいんだが、負けるのは断固拒否だ!

 お互い息もあがっていないからまだ余裕しゃくしゃくなんだけど、いい加減飽きてきた。


 ……そろそろ終わらすか。


「どうした! これで終わりか?」「……か?」


「いや、お前らが女だから手加減してたけど、ちょっと本気出すわ」


 俺はわざと二人を挑発するような言葉を吐く。


「なんだと!?」「……!?」


 二人の目つきが一段と険しくなる。どうやら挑発に乗ってくれたようだ。


「随分と舐めたことを言ってくれるじゃないか!」「……か!」


「いいから、さっさとかかってこいよ」


「……この!」「……の!」


 俺の駄目押しの一言を受けて、アカとアオが同時に地面を蹴る。


 二人とも頭に血が上っているのか、速さはさっきよりも速いが、攻撃は真っ直ぐに拳を突き出してくるだけだった。


 俺は力を抜いて自然体で二人の手を往なすと、それぞれの腹に向けて掌底を放つ。

 魔力を込めて放つ掌底は、車程度なら粉々にできるくらいの威力が込められている。


「なっ!?」「……!?」


 カウンターでまともに俺の掌底を受けたアカとアオはそれぞれの方向に吹っ飛び、壁に叩きつけられて意識を失ったのだった。

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