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13話

 魔王城に帰って、数日が経った。


 あのあと、町では戦勝記念の祭りが開かれたらしいが、あそこには人間僅かに残っている。

 魔族に操られているという設定の俺は、残念ながらそれに参加することはできなかった。

 フィレーネに、参加させてもらえなかったのだ。

 ……俺、かなりの功労者のはずなんだけど。

 町を取り戻したことをあの四姉妹に報告に行こうとしたが、今は不在らしい。

 魔王もどこかに行ったままだし、どこでなにしてるやら。


 朝食を食べていると、フィレーネがやってきた。

 その顔には笑顔が浮かんでいるが、あれはなんか企んでいるような顔だな。


「マコト。ちょっと面白いことになりましたよ」

「どうした? フィレーネ」


 面白いことって、なんだかちょっと嫌な予感がする。

 フィレーネは続ける。


「この間の聖女の件なんですが」

「うん」


 聖女って、マリーのことか?

 相変わらず笑顔のフィレーネからは何も読み取ることは出来ない。


「あの女、面白いことをはじめました」

「……面白い、こと?」


 そして俺の予感は的中する。

 フィレーネの言葉に、俺はつい声をあげてしまうことになった。


「どうやら、魔族に奪われた勇者様を取り返そうと、仲間を集って、こちらに向かっているようですよ」

「……はあっ!?」


 何やってるんだ、あのシスターは!?

 一人で魔族の中を突っ切ってきたときも、その行動力に驚いたが、いくらなんでも、アグレッシブすぎるだろ!?

 いや、突っ込みどころはそこだけじゃない。


「というか、なんで俺が勇者なんだよ!?」

「え? だってマコト、あなた、人間の前で飛んだでしょう?」


 さも当然というような顔で言うフィレーネに、俺はまたしても嫌な予感を感じていた。


「あ、ああ、飛んだけど? それがどうかしたのか?」


 なんだよ、勇者であることと、空を飛ぶことがなんの関係があるんだよ。


「空を駆ける勇者っていって、空を飛ぶ人間こそ勇者だって言い伝えが人間たちにはあるみたいなの」

「……あ、ああ」

「単身、魔族に挑んだ男。魔族の魔法にかかっても己の意志を取り戻し、命がけ空を飛んで、聖女を救った男」


 ……うん。俺、それやったね。


「容姿は黒目黒髪。言い伝えにある勇者も同じ。人間がその男を勇者と呼んでも、仕方なくないかしら?」

「はい、すみませんでした!」


 やっちまった!?

 知らないでやったこととはいえ、見事に全部被っちまってる、だと?


「まあ、そんなことはいいの。問題はあの聖女のことです。来たら今度こそ捕まえて、一般兵の慰み者にしてあげますよ。フフフ……私だって、まだ揉んでもらっていないのに、あの女は……!」


 フィレーネの笑顔にほの暗いものが灯っている。

 来ちゃいけない! ……逃げるんだ、マリー!


 つーか、本当に行動力ありすぎだろ! 大人しく教会とかで祈ってろよ!


「あ、そうでした、あとマコトに伝えなければいけないことが」

「ん?」

「戦勝記念パーティを開こうと、今計画しています。マコトがなんだか残念がっていましたから、この城で、私たちだけで」

「おおお! まじで!?」

「ふふふ。あの街でマコトに助けられた住民も、少しばかりですが参加できると思いますよ」

「そっか、そっかー……。ありがとうな、フィレーネ!」

「一週間後に予定していますから、楽しみにしていてくださいね」

「おう! ほんと、楽しみだよ!」


 そのとき、俺は気付くことができなかった。


「うふふふふ……。本当に、私も楽しみですよ……」


 そのパーティに、あんな罠が仕掛けられていたなんて……。


「いやー。ほんと嬉しいなー。一週間後かー」


 フィレーネの怪しい笑みに。


「お酒やご馳走もたくさん用意する予定ですから、いっぱい飲んで、いっぱい食べてくださいね」

「おお、まじか! そういやこっち来て、酒とか飲んでなかったな。どんな酒か楽しみだよ!」

「そうですか。とってもおいしいですから、遠慮しないでくださいね」

「おう勿論だ!」


 浮かれていた俺は、気付けなかったのだ。


「うふふふふふ」

「あはははは」


 その瞳の奥に灯っていた、黒い炎に……!


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