10話
気がつけば2年もほったらかしになってた……!?
書きかけもほったらかしになってたから、せめてこれだけでもと思い投稿。
こんな感じの話で良かったっけ……?
俺はそれから奴隷を解放してはフォルスナのもとに送り込んだ。
捕らえた奴隷商人からは他の奴隷商人の情報を引き出してはどんどん潰していった。
人間側が危機感を持ち始めた頃には既に全ての奴隷商人は刈りつくした。
残念ながら、船で連れ去られた奴隷達までは今は救うことができない。
今この町の奴隷にされた奴らにできることはこれが限界だろう。
さて、本格的にこの町を取り戻すには、この町を覆っている結界をなんとかしなくてはならない。
俺は町の結界の中心である教会に来ていた。
教会に入り、皆が祈りを捧げている十字架が重なったようなオブジェに目を向ける。
そこには確かに強い魔力が宿っていた。
魔力の集積装置であるこれを壊せば話は簡単だよなあ。
でも、もし無理やり壊した結果、大爆発して町が壊滅なんてなったら駄目だし、さあどうするかな。
「もし、貴方も何か悩み事ですか?」
ふと声の方向を向けば、小柄なシスターと思われる格好をした女性がこちらを優しげな目で見つめていた。
「ああ、ちょっとな」
俺は曖昧に返事を返す。……流石にお宅のご神体を壊す方法を悩んでいます。なんて言えないだろ。
だが、このシスター。やけに俺の悩み事に食いついてきやがった。
「なんですか? お悩み事でしたら私が承りますよ!?」
顔が近い。
あとちょっとでキスできそうなくらい近い。
俺はもう婚約者を増やす予定は……ないんだ。うん。ない。ないと思う。
「うぷぷ! ……って! 顔を抑えないでくださいよ、息が出来ないじゃないですか!?」
「悪い悪い。あまりに近かったもんで、つい」
「そうですか。じゃあしょうがないですね!」
「ああ」
なかなか愉快なシスターだ。
それになかなか可愛い。
髪は見えないが、クリクリっとした大きな瞳に、つんと尖った鼻。艶やかな唇は大きく、ぷりぷりっとしている。
胸はまあ普通に見えるが、あまりからだの線がわからないような服装だ。もしかしたら脱げばすごいのかもしれない。
「それで、あなたの悩み事はなんですか?」
「……実は、ちょっと仕事を頼まれてましてね。どうしようかと、静かな場所で考えたくて来たんですよ」
「そうだったんですか。ここは心の安寧をもたらす場所です。心ゆくまでいらっしゃってください」
「ありがとうございます」
「それでは」
そういって一礼したシスター。
彼女が立ち去るのを待ったが、俺の顔をジッと見つめたまま動かない。
「……あの、俺に何か?」
「あ、いえその。……何かご相談があるなら、懺悔室もありますのでそちらでお聞きしますよ? ……なかなかかっこいい人ですし……ここでお近づきになれればいいな……」
「……? それは、ありがとうございます」
後半はぼそぼそと何を言ってるかわからなかったが、懺悔室か……。教会の人間に相談してもなあ。
だって、この教会の力を無効化したいんですけど、何かいい方法はないですか? なんて聞けるわけもない。
だけどまあ、情報は必要だ。聞くだけ聞いてみるか。ご神体の情報を。
「じゃあ、お願いします」
「……! そうですか! じゃあ今の時間ならだれもいませんので、あちらのドアからお入りください」
「わかりました」
俺はシスターの指し示した懺悔室のドアを開け、中の椅子に腰かけた。
中は暗く狭く、目の前はカウンターと木でできた衝立で仕切られている。
向こう側に神父が座るのだろう。
少しの間そのままで待っていると、向こう側でドアの開く音が聞こえ、衝立の向こうの椅子に火が座る気配がした。
「お待たせしました」
聞こえてきたのは女性の声だ。
さっきのシスターか?
「いえ、大して待っていませんよ。……さっきのシスターさんですよね? 俺、こういうのって神父さんが担当するものだと思ってました」
「え!? ち、違いますよ!? さっきのシスターは別の用事がありまして! ……確かに本来は神父の役目なんですが、今は手が離せない重要な用事がありましてですね……!」
「そうなんですか」
「そうなんですよ!」
まあ、こっちはだれでもいいし、問題ない。
「そ、それで、ご相談というのは? あ、さ、先にお名前を伺ってもよろしいですか?」
……? 懺悔室って、こんな個人情報を言わないといけないのか?
これがこの教団のやりかたなのかな? まあ、名前くらい別にいいか。
「マコトです」
「マコト様ですね? ……名前も素敵だわ……!」
「はい。……ええと、何か言いました?」
「いえ! なんでも! ……それで、貴方は現在独身でしょうか? もしくはお付き合いしている方などはいらっしゃいますか?」
「ええと、いませんが?」
「……! ……やった! じゃあじゃあ、どんな女性が好みですか!?」
……絶対俺の相談に乗るとかじゃないよな、これ。
俺の相談に俺の女性の好みなんて聞いてどうするんだ。
「……ええと、そんなことより、相談していいか?」
「え?」
俺はもう相手の言うことなど聞かず、一方的に喋ることにした。
「実は、あるものを壊す仕事を請け負いまして、その方法をどうしたらいいかなぁと考えていまして」
「え、あの、女性の好み……」
「それも、大事にしている人が多いものなんですが、それを壊さないと困る人もいたりしてですね」
「……女性の好み……」
「しかも結構頑丈そうで、人目につかず仕事したいのです」
「……うう……好み……」
「何かいい方法はないでしょうか?」
俺が彼女の質問を無視して喋っていたら、声はどんどん小さくなっていった。
というか質問に答えろ……。
「……俺の女性の好みは」
「……はい!? 好みは!?」
「俺の話を聞いてくれる女性。ですね」
「……!?」
「うん。チョロすぎだろう、あのシスター……」
情報はうまいこと聞き出せた。
あのシスター、口が軽い軽い。
適当に女性の好みを言ったら、ものすごい口が軽くなった。
それから参考までに、この教会の結界はどのように発生させているのかを聞けば、え? そんなことまで教えちゃっていいの? といった、本当に肝の部分まで教えてくれたのには本当に助かった。
教えてくれた情報? パソコンに例えれば、パソコンの情報全てを変更できる、管理者のアカウントとパスワードを教えてもらった。というレベルかな。……な? やばいだろ?
シスターの名前はマリーさんだそうだ。
ありがとうございました、マリーさん。
そんなこんなで夜である。
俺は気配を消す魔法を使って教会に侵入。
教会のご神体にアクセスし、結界をいじる。
……人間は弱体化。魔族は強化するように変更して……と。
「うん。これで魔族がこの町に攻め込めるな!」
あとは、フィレーネたちに兵を派遣してもらえばオーケーだ!