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1話

暇つぶしで適当に書いていたものがなんとなく溜まってしまったので投稿してみました。

気が向いたときにでも読んでみてください。

よろしくお願いします。

 俺は途方に暮れていた。




 仕事を終えて帰宅し、自分のアパートのドアを開くとそこは異世界だった。


 現在の状況を文章にして表すとたった一行で済むことなのだが、これ以上的確な表現もあるまい。


「……またかよ」


 俺はつい口にしてしまった。


 実は、今回のこれは3回目のことで、以前にも俺は異世界に誘われたことがあった。


 1回目は風呂からあがろうとして、風呂場のドアをあけたら異世界だった……。

 真っ裸で異世界の森に放り出された俺は、正に原始人のような暮らしを3年、そしてそれから帰る方法を見つけて地球に帰るまでに30年を費やした。

 俺の人生の中の33年を異世界で過ごしたわけだが、今の俺の外見は20代中ごろ。

 これには理由があり、実は異世界にいたときにエルフの秘薬を飲み、その効果で外見が若返ったのと、寿命が大幅に延びた為だ。


 そして向こうでは33年を過ごしたものの、こちらではほんの数分しか時間が経過していなかったようで、当時一緒に暮らしていた両親にも変な服装をして風呂から出てきたとしか認識されなかった。


 2回目は大学のトイレのドアが異世界に通じていた。

 事を済ませた後だったから良かったものの、あれが事前のことだったらどうなっていたことか……。

 トイレの先はどこかの地下室に繋がっていて、そこを抜けたらとある城の大広間。

 色々あって、勇者に仕立て上げられた。

 魔王を倒して帰る方法を見つけるまでに12年。


 帰ったら現実世界では数分しか経っていなかったのは相変わらずだったけど、講義の内容やらなんやらをすっかり忘れ去ってしまっていて、大変な思いをしたのも今ではいい思い出だ。


 それに比べたら今回はまだ良心的? な感じがするが、こちらの都合など関係なく誘うのはやめていただきたい。


 事前にお知らせがあっても、それはそれで嫌なもんだが……。




 パタン……。とアパートのドアを閉め、もう一度開けてみる。


 そこにはいつもと変わらない一人暮らしの部屋の風景が……無く、鬱蒼とした森が広がっている……。


「これ、無視しちゃいけないかな……」


 しばらくの間現実逃避していると、突然ドアの向こうの風景が輝きだした。


「……おおぉ!?」


 あまりの眩しさに目を瞑り、恐る恐る目を開ける。


 目の前にはいつもと変わらない一人暮らしの部屋の風景が……無かった。


 換わりにあったのは人、人、人。人の群れだった。


 周りを見渡せば俺は何やら大仰な祭壇の上に立っており、目の前には半裸な女性。


 考えてみて欲しい。


 明らかに何かを祀っている祭壇の上に立つ、くたびれたスーツを着ているサラリーマン。そしてそれを眺める人の群れ。シュールであることこの上ない。


「勇者様! お待ちしておりました!」


 半裸な女性が叫ぶように声を出す。そしてそれに呼応して群衆のどよめきが大きくなる。


「……またか」


 俺のつぶやきは喧騒の中、誰の耳にも届くことはなかった。








 半裸な女性はアミラリュードと名乗った。

 なんでも、彼女は月の巫女だそうで、勇者の召喚の為に儀式を行っていたらしい。

 そうしたら強い輝きと共に俺が現れたのだそうだ。


 魔王が怖いから倒してくれって、これまた「……またか」とため息をつく俺。


「んで? 魔王を倒すって話はいいとして、その魔王は何をやらかしたんだ?」


「え? ……えぇ、そうですわね。魔王をはじめとする魔族は私達と違って黒い肌や青い肌をしていまして、現在も私達人間の国と戦争中で、私達人間のの共通の敵です!」


「なるほど。具体的には魔族は何をしたんだ?」


「人間がたくさん殺されました! 魔族との戦争の為に家族を失った人たちもここに沢山います! お願いします、勇者様。魔王を倒して私達を御救いください!」


 そういってアミラリュードは俺に頭を下げる。


「アミラリュードさん、最初に聞いておきたいんだが」


「はい」


「俺を元の世界に返す方法はあるか?」


「…………」


「ないのか?」


「……申し訳ありません」


「ないのか」


 俺がため息をつくとアミラリュードさんはビクッ! と体を震わせる。


「俺を召喚した儀式で過去に召喚された人達はどうなってる?」


「……過去に召喚された人はおりません。勇者様が初めてです」


「……ということは、俺が初めての被召喚ってこと? まじか……」


 初めて召喚できたってことは、まだ召喚の技術が熟成されていないってことだし、何よりも返す技術なんて発想すらないだろうな……。

 頭痛くなってきたかも。


「あ、あの……?」


「とりあえず、俺が魔王を倒すか倒さないかは、俺がちゃんと元の世界に戻れることがわかってからだ。いいな?」


「えぇっ!? ……そ、そんな」


「いやいやいや。むしろショックなのはこっちなんだが……」


「…………」


「というわけで、帰る方法の目途がったったら教えてくれる? それまでは適当にこの辺りをブラブラさせてもらうよ」


「勇者様っ!?」


 後ろでアミラリュードさんの叫び声が聞こえるけど、それを無視して俺は歩き出す。


「とりあえず、向こうの話も聞かなきゃ状況がわかんないよな……」


 人目のつかない場所まで来た俺は認識阻害の魔法と飛行魔法を使って空から大地を眺める。


「さて……と」


 意識を集中すると、すぐに強い魔力を感じることが出来た。


「魔王っていう名前だしな。この強そうな魔力、間違いないかな?」


 俺はその方向に向かって高速で空を移動する。

 途中、音速を突破したような音がしたけど気のせいだろう……。

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