二回戦【斉藤元、参上!】
〈廃剣インタビュー!〉
始まりました廃剣インタビュー!(笑)廃剣とは廃部寸前剣道部の略でございまぁす~
ここではちょっとしたインタビューをしたいと思います~今回の司会進行は私外山椿がしたいと思います!
まず大我にインタビュー!Let's interview!
椿「大我さんは八百屋さんですが、嫌いな野菜はあるんですか?」
大「なんだよ、このコーナー・・・嫌いな野菜?あるよ。」
椿「意外な解答・・・八百屋としていいのでしょうか!じゃぁなにが嫌いなの?」
大「・・・言わなきゃ駄目かよ・・・」
椿「コーナーの進行状況から言わなきゃ駄目。」
大「・・・・・・ネギ」
椿「ネギ・・・ですか。」
大「・・・うん、ネギ。あの匂いがどうもだめ(泣)」
椿「めっちゃ料理とかに入ってんじゃん。八百屋の息子、ネギ嫌い疑惑!」
大「うるせぇ!嫌いなもんは嫌いなんだよ!っていうか嫌いって行ってる時点で疑惑じゃないから!」
椿「大我が怒り始めたのでここでドロンします~さらば!」
大「ドロンって古くね!って待て!置いてくな!」
椿と大我が逃走したのでコーナー終了~
くだらないコーナーですが、まだまだ続きます・・・聞きだい質問のリクエストも受け付けております!いつでもどうぞ~
「大我~椿君の所にお裾分け持って行ってあげて~どうせ椿君の所行くんでしょ!」
やっとチビ共を寝かしつけて、この前、椿から借りた漫画を一気に読んでいるっていうのに・・・しかも、今もう10時だぞ。まぁあと一巻で読み終わるし、これ読み終わったら返しに行くついでに行ってやるか・・・
そう思いながらベッドに仰向けに寝ころびながら漫画を読んでいると、ノックも無しに母親は俺の部屋に入ってきて“返事は!”と叫ぶ。その叫び声に驚き手を滑らせて、漫画を自分の顔に思いっきり落としてしまった。
「だ・か・ら!ノックしろよ!勝手に入ってくるなよ!」
体を起こしながら、母親に思いっきり枕を投げつける。椅子にかかっている上着を掴み枕攻撃でダメージを受けてる母親の横を通って下に降りる。返事をしなかったのは確かに悪かったけど、だからといって勝手に入る母親がいるか・・・数軒先の椿の魚屋まで歩く。
表はもう閉まっているので、魚屋の裏の玄関をノックする。すると椿よりずっと大きい長身の男の人が出てきた。
「おぉ、大我君じゃん。椿なら今風呂入ってるから、上がって待ってろよ。」
この人は椿の兄貴の睡蓮さんだ。今年で高校二年生になったのだが、背も高くて、ものすごく大人っぽい人だ。俺もこんな兄貴が欲しいと何度思ったことか・・・
睡蓮さんに言われて二階に上がり椿の部屋へ向かう。俺の指定席であるクルクル回る椅子に座り椿が来るまで漫画を読む。漫画を読んで待つこと10分、扉が開き椿が濡れた髪を乾かしながら入って来た。
「くつろいでるね~っで今日は何のよう?漫画読みに来ただけなら追い出すよ。」
ドシッとベッドに座って髪を乾かしながら俺に問いてこっちを見てきた。漫画を棚に戻してお裾分けの袋を床から拾い上げて椿の方に差し出す。椿は袋の中を見て、ありがとうと言いながら床に袋を置いた。
椿は大きなあくびをしながらベッドに寝ころんだ。寝ながら器用に髪を拭く椿を見ながらふと思った事を正直に聞いてみる。
「椿って剣道やったことあるの?」
「無いよ。見たこともないし、興味を持ったこともない。」
じゃぁ、なんで剣道部に入部したんだ。単にあの部活がおもしろいからか?
椿と俺は小さい頃からずっと一緒だったが、こいつの感性は俺でもよく分からない。しかし、こいつは前にも言った通り天才だ、何でもこなしてしまうのだから剣道もきっとうまくできる。興味を持ち始めたら人は強くなる。剣道に興味を持ち始めたらきっともっと強くなる。
これでこそ俺の親友、外山椿だ。そのまま、学校の事や漫画の事を話したら、椿の家を出たのは11時を過ぎていた。暗く、薄いオレンジ色をした街灯に照らされた商店街を1人歩いて帰る。ぶらぶら歩いていると、脇道から1人の髪の塗れた少女が出てきた。
「大我!どうしたの、こんな時間に1人で・・・」
少女はそう言いながら驚いた顔をした。タオルで塗れた髪を拭きながらこっちにゆっくりと近づいてきた。
「椿の家に行ってたんだよ。風香こそ、こんな時間に銭湯って、風呂好きにもほどがあるだろ・・・」
この風呂上がりの少女、春月 風香は椿同様、幼なじみだ。
商店街でお惣菜屋を営んでおり、一人っ子なのが羨ましい。幼稚園の頃から椿と三人で遊んできた仲で親同士も仲が良い。家も隣だ。
「良いじゃない、今日は柚風呂だったんだもん・・・」
そう言いながら、俺の横に並んで歩き出した。こいつの家は俺の家の隣。
「風呂に柚ぶちこんどきゃ良いんだろ・・・俺の所で安く売るぜ。」
「そういう話じゃないでしょ!大きなお風呂がいいのよ!ったく、大我は全く分かってないんだから。」
風香は小さなため息をついて首を横に振った。何が分かってないだ、風呂なんか一緒だろ・・・
家の前まで来て、風香と別れ家に戻る。お茶を飲んでから寝ようと思い、リビングに入ると、父親と母親が晩酌をしていた。
「あら、大我やっと帰ってきたのね。あなたも一杯いる?」
母親はコップを俺の方へ向けて、赤い顔の笑顔を俺に向けてきた。
「俺、未成年なんだけど・・・親が酒のましてどうするのさ・・・俺もう寝るから、お休み。」
冷蔵庫からお茶を取り出し飲みながら母親に文句を言う。
この母親、どうもどこか抜けている。俺は酒が苦手になったのも母親のせいだ。曾祖母の法事の時、母親はあろう事かまだ幼い俺にジュースと偽ってビールを飲ませた。俺は目を回して倒れ、母は大爆笑。
部屋に戻ると、俺のベッドに双子の弟、夏輝と冬輝が二人で寝ていた。寂しくなった時、時々こうやって俺のベッドに入ってくる。朝起きると俺の上に三人のっかている時がよくある。寝間着に着替えながら双子の頭を撫でてやる。
ん?待てよ、妹の春香がいない・・・どこ行ったんだ?三人の部屋に向かうために廊下に出ると、ぬいぐるみを持ったまま泣きながら廊下を歩いていた。まだ小学校にも入っていない春香が一番厄介だ。
「にぃ~ちゃぁぁ~ん・・・」
春香は俺を見つけた途端、走って俺に飛びついてきた。泣きながら何度も俺を呼んでいる春香を抱きかかえゆっくりあやす。泣き虫の春香をあやすのは小学校低学年の時からやっているから慣れているが、これからが大変なのだ・・・
部屋に戻り、ベッドの下に布団を引き双子を運ぶ。その間も春香は俺の足に引っ付いて離れない、正直邪魔だ・・・双子を移動させた後、春香を自分の横に寝かせ、“おやすみ”と言って電気を消す。
春香は始めはじっとしていたが、少しすると俺の腕にしがみついてきた。横を見ると涙目の春香が俺を見つめていた。小さなため息をついてから体を横にし春香を抱き抱える状態になる。春香は俺の裾を握りながらゆっくり目を閉じ、寝息を立て始めた。
昔からこうすると春香は落ち着いて寝てくれる。だが、子供の体温は異常に高いため熱い・・・今みたいな寒い時期ならいいが、夏にこうされると地獄だ・・・春香が寝たのを確認して春香から離れる。時計を見ると12時を回っていた。寝不足決定だな・・・そんなことを思いながらゆっくり瞳を閉じる。
無機質な目覚まし時計の音で目を覚ますと、俺の腹の上には下に寝かしたはずの夏輝と冬輝が乗っていた。こいつらどうやって移動したんだ・・・
「夏、冬、春起きろ。朝だぞ、早く起きないと先行くぞ。」
まだ寝ぼけている3人を起こし、自分はさっさと制服に着替える。自分の用意を済ませた後、チビ共を3人の部屋に連れて行き、着替えと用意をさせる。全て用意させてからチビ共を抱えて一階に降りると母親がお弁当を作っていた。
「おはよう、今日から部活なんでしょ?頑張りなさいよ~はい、おまけの林檎。」
母親はそう言って俺の前に林檎を出してくれた。チビ共のブーイングが飛び交う中“ありがとう”と言って食パンをかじる。母親はお弁当を完成させると直ぐに店の方に行ってしまった。朝食を終えてからがまた大変なのだ・・・保育園に春香をチャリで届けた後、家にチャリを置いて椿と学校に行く。
「っで、今日から部活なんだけど・・・体操服だけ持って行けばいいの?」
椿はてさげに入った体操服を確認しながら俺に聞いてきたので頷いて返事をした。
「じゃぁ、なんで大我は竹刀持ってるの?」
椿は不満そうに俺の持ってる竹刀袋を指差す。
「俺は一応かじる程度だけど経験者だから、素振りだけでもって思って。俺竹刀二本持ってるから椿にも貸してやるよ。」
そう言うとまだ不満だがしぶしぶ了解して手を頭の後ろにしながら少し大股で歩くのを速めた。これは椿の機嫌が悪い時によくする癖だ。結構わかりやすい奴だ。
そんなことをやっているうちに学校に到着。教室の前で椿と別れ、一人で教室に入る。竹刀を教室の後ろに立てかけてから席に座る。大きな欠伸をしながら机に俯せになって寝る。
「なぁ志導、お前剣道部に入るんだよな!ならオレも連れて行ってくれよ!オレ昔から剣道って興味あったんだよな!」
頭を叩かれて顔を上げるとクラスの男子が俺に話しかけていた。短髪で少しつり目、見た目からして人懐っこそう奴だ。こういう奴は馴れ馴れしいんだよな・・・そう思いながらそいつの方を向いて頬杖をつく。
「自分で行けばいいだろ、それにお前誰?なんで俺が剣道部に入るって知ってるわけ?もしかしてストーカー?」
「そんなわけあるかよ!昨日お前が武道館に入るところをたまたま見たし、今日お前が竹刀を持って学校来たから!それに、つれねぇな~出席番号も席もお前の前だぜ、覚えてくれたっていいじゃん~オレは出席番号13番の斉藤 元。元気の元って書いて『はじめ』って読むんだ。」
っと元は俺の机に自分の名前を書いて“メモリーに叩き込んどけよ”と言って俺を指差した。なんかよくわからない奴・・・まぁどちらにしろ、現在部員の少ない剣道部としてはこういう奴でもありがたいかもな・・・
「っで、なんで一人で行かないんだ?見学なんて一人で行けばいいだろ。」
元が書いた落書きを消しゴムで消しながらだいたいの想像はつくが元に聞いてみる。そうすると元は頭を掻きながら少し目を逸らして言った。
「だって、オレ剣道に興味はあるけど全く剣道の事知らないんだよな~だから、なんか素人が入って良いものかわかんなくて・・・」
やっぱりな・・・剣道ってそういう風に見られるのか多いんだよな。経験者しかダメとか、痛そうとか厳しそうとか・・・確かに痛いし厳しいけど、それはやっている間に慣れていくものだ。初心者がダメな訳がないし逆に素人の方が欲しいって学校だってある。逆に、こいつみたいに興味はあるけど無知な奴はたくさんいる。
「言っとくけど、俺も初心者だよ。本格的に剣道をやったことはない。」
そう言うと、元は“マジ!”と俺に顔を近づけてきた。
「じゃぁなんで竹刀持ってんの?初心者なのになんで礼儀とか知ってるわけ?」
耳元ででかい声を出すな・・・耳を塞いで五月蝿いことをアピールするが全く伝わってくれなかったようだ、さっきと変わらないボリュームで“なんで!”と繰り返す。
「俺の親父が昔剣道有段者でさ、ガキの頃から親父の姿見てたし、礼儀は親父に片っ端から詰め込まれた。竹刀も親父のお下がりだよ。でも、俺んち自営業で道場に行く金無かったから中学から始めるんだ。」
そう言うと元はへぇ~っと言ってやっと落ち着いたのか椅子に座り直した。こいつみたいに無駄に元気があるやつは結構剣道に向いてたりする。元気に自分のチームのモチベーションを上げ、テンションMAXで特攻先手を決める一番手、先鋒タイプだ。
「っで、お前は何で剣道に興味があるわけ?なんか理由でもあるのか?」
その動機次第ではこいつは使えるかもしれない、そう思って聞いてみた。
「おっ、聞いてくれたか大我君!オレの名前『斉藤元』って新撰組にいた『斉藤一』と漢字は違うけど読みが一緒だろ!っでオレそれを知ったとき“絶対最強の剣士になる!”って決めた訳よ~でも、両親は全く剣道に興味なくてさ~道場すら行かせてくれなかったんだぜ、ひでぇよな~。」
真っ当な理由とは言えないが強い意志がある。でも、斉藤一は居合の達人で剣道より居合道の方がいいような・・・っていうかいつの間にか俺の事を大我って呼ぶようになったんだこいつ、馴れ馴れしいにも程があるだろ。元が喋り終わったと同時に俺の横に誰かが立ち止まった。
「大我、あんた今日春ちゃん迎えに行くんだよね~その時ついでに呼んでよ、いつ行けばいいか分からないし。」
そう言ってきたのは風香だった。元の話でもう疲れてるのにそこに風香って・・・それに、元の話声が大きすぎて周りに男子が集まりだした。
「いいけど、俺今日部活行くから遅くなるぜ。それでもいいか?」
風香は人懐っこい笑顔で頷いて女子の団体に戻っていった。ったく風香は所構わず俺に話しかけるの止めてくれないかな~
「なぁ、大我って春月とどういう関係!つき合ってんの?」
ったくこういう馬鹿げた奴らがいるから嫌なんだ・・・
「んなわけないだろ、あいつは家が隣でただの幼なじみ。」
机にもたれ掛かりながらため息混じりにそう言うと元は俺の方を見てニヤリと不気味な笑顔を浮かべていた。
「呼ぶって何?二人でどこか行くのか?」
「いや、あいつんちの両親今日いないから俺んちに晩御飯食べに来るんだよ。っで妹の迎えに行くついで呼んでって事だよ。」
へぇ~と周りの男子が変な目で見てくる・・・なんなんだこいつら!!
授業中は全て爆睡、昨日春香のせいであまり寝ていなかったせいかとてつもなく眠たかった。そして、やっとくだらない授業が終わり昼休み。
今日は寝坊したため弁当を持っていなかったため購買にパンを買いに行く。大きなあくびをしながら廊下を歩いて購買部に向かう。
そんな時後ろから走る音が聞こえてきた、ふと振り返ると元が勢いよく走ってきて俺にタックルしてきた。前のめりになりながら体制を立て直す。立て直した反動を使って思いっきり元に回し蹴りを喰らわす。
「何すんだてめぇ!いきなりタックルしてくること無いだろ!」
「だからって蹴ってくること無いだろ!」
二人で怒鳴りあったあと、俺はゆっくり振り返って歩き出す。あぁ~元がぶつかってきた肩が痛い・・・肩をさすりながら歩いていると俺の横に元が並んだ。
「なぁ、お前も買い弁なんだろ?俺も購買でパンなんだ、一緒に行こうぜ!俺の両親共働きだから弁当作ってくれないんだぜ~全く子どもに愛のない親だよな~」
俺はそんな元の話を流しながらさっさと購買部まで行き、さっさと教室に帰る。そんな中でも元はずっと俺の興味のない話をし続ける。俺ってなんでこういう変なのに好かれちまうんだろう・・・
やっと午後の授業が終わり、放課後。よっしゃ部活だぁ~体操服に着替えて竹刀を持って大きく伸びをする。午後の授業も全て爆睡したため背骨がボキボキ言ってる。
「おぉ~い、大我!部活行こうぜ~」
教室のドアの方を見ると体操服姿の椿が手を振って立っていた。鞄を持って教室を出ようとすると、
「よしっ、部活行こうぜ!早く行こうぜ~オレ待ち遠しいぜ!」
俺に肩を組んで笑う元・・・なに当たり前のようにいるんだこいつ・・・椿も不思議そうな顔で俺と元を見ていると、元は椿の前まで立って顔をまじまじと見ている。
「なぁ大我、こいつも剣道部なのか?オレ斎藤元な、大我の友達でありこれからライバルになる男だ~」
椿に向かって手を顎にかけてカッコつけて言っている。おい、俺がいつお前の友達でライバルになったんだ!
「へぇ~俺、四組の外山椿ね。外山魚店、いつでも来店をどうぞ~サービスするよ。」
こいつ商売精神ありすぎだろ・・・元はへぇ~と言いながら椿の手を握ってブンブン握手している。まったくこいつらなんなんだ。なんか全く逆の性格だがこの二人なんか似てるような気がする。
なかなか剣道にならないねぇ~次から剣道に入りますから次話を期待してください・・・あっ、やっぱ期待しないで(泣)