一回戦【今日から中学生!】
前回のプロローグは短くてすんませんでした・・・これから頑張って続けたいと思いますので応援お願いします~
感想もお願いします・・・
無機質な音や母親の苛立った声に起こされる前に自ら目を覚ます。カーテンで遮られていた光を部屋に流し込み、大きく伸びをしてベッドから降りる。
今日から中学生になるのだ、早く起きてしまう気持ちも分かってくれるだろう。壁に掛けてあるぴかぴかの制服に手をかけ、ワイシャツに袖を通す。まだノリが貼ってあるので首もとが少し痛いが、少ししたらこれもなくなるだろう。
「大我、速く朝ご飯食べちゃってね。あっそれと登校する途中にゴミ出ししてね。」
ノックも声もかけずに勝手に部屋に入ってきた母親は用事だけ言って風の如く去っていった。まだ着替え中だし、年頃の男子の部屋にノックもなしに入る母親に少しむかつきながら、ネクタイを首からかけ勢いよく階段を降りる。
リビングに降りると緩いTシャツを着た父親に母親、弟二人と妹が朝食の用意をしていた。
「母さん、ノックしてから入るってこといい加減に覚えてくれない。中学生になったんだし母さんも少しは気を使ってよ。」
ブツブツと言いながらブレザーを椅子に掛けて座ると、弟二人と妹はくすくすと笑いながらパンをかじる。
「兄ちゃんだって僕達の部屋に勝手に入ってくるじゃんか~」
弟達はそう言って俺に文句を言った。
弟二人は一卵性の双子で年子の妹が少し背が高いからかパッと見三つ児か?と思うぐらい似ているのだ。仲良しでいつも一緒のこいつらは三人で一つの部屋を使っていて、俺はこいつらに用事があるとノック無しに部屋に入って用事を済ます。
しかし、それは兄弟だし年も近いからいいだろう。まぁこいつらが俺ぐらいの年になったら、ノックしてやっても良いけど、まだ小学校低学年のこいつらに気を使う必要性は全くと言っていいほどない。
「お前らだって俺の部屋からいろんなもん勝手に持って行くじゃんかよ。お相子だよ。」
母親はサラダとスープを運びながら俺の愚痴を受け流す。母親は俺にもチビ共にも気を使わったりはしない。父さんはニコニコ笑いながらサラダを口に運びながらゆっくり噛みしめる。俺もカフェオレを飲み干し食パンにジャムを塗り、チビ共から朝ご飯を死守しながらパンを食べる。
食べ終わり、台所の流し台に皿を入れて椅子に掛けてあるブレザーをはおい、エナメルを肩に掛ける。
「大我も、今日から中学生か~がんばれよ。やっと剣道ができるんだからな。」
父親はそう言ってゆっくり俺の頭を撫でてくれた。チビ共も俺の制服を見てキラキラした目でこっちを見ていた。
父さんはいつも俺や弟たちの事を考えてくれている。幼い頃から家は貧乏で、やりたいことも我慢してきた分、甘やかしてもらっている。
家の近くには剣道場があり、いつも道場の横を通って通学していた。剣道をしている声や踏み込みの音、竹刀の叩く音・・・そんな環境で俺は我慢し続けた。俺だってやりたい、父さんがやってた剣道をやりたい。幼い頃から目指してた俺の夢、それを叶えたい。
『大我、父さんのお下がりだがプレゼントだ。お前にはまだでかいかもしれないがこれをやる。』
三歳の時の誕生日プレゼントにもらったのは竹刀だった。初めて持った竹刀は俺にとってはとても重たかった。でも、初めての竹刀、剣道へ一歩近づいたみたいで嬉しかった。毎日父さんに教えてもらいながら素振りをして、足裁きを覚えて、父さんの知り合いの道場を少しだけ借りて稽古つけてもらったりした。でも、本格的な剣道はやったことがなかった。だから、中学にあがったら剣道ができる。そんな期待に胸を膨らませながら玄関で靴を履く。
「大我、あんた今日から部活行くとか言わないわよね?今日はうちのお手伝いしてよね。最近お客さん増えてるんだから。」
玄関を出る寸前、母親がそう言ってニコッと笑った。俺はそんな母親の方を向きながら嫌な顔をすると母親は俺を睨み付けてきた。
俺の家は小さな八百屋をやっていて、商店街の中ではちょっと有名になってきた。でも、まだ貧乏だ。客が増えてるのは良いが、父さんは気前が良いからいつもサービスとか言いながら少し量を増やしてやる。これが貧乏の理由の一つだ。
「えぇ~今日から見学行こうと思ってたのに・・・まぁ、きっと今日は部活やってないだろうし。しょうがない、手伝うよ。」
少し微笑みながら俺は玄関から出て行く。俺だってこれでも長男だし、チビ三人もまだ手伝えるってほど大きくないから俺がやらなきゃいけない。
それに、お手伝いも結構楽しいし、商店街のみんなとも仲良くなれる。エナメルから胴着を出して、代わりに鍵を突っ込んで片手にゴミ袋を3つ持ち、家を出て行くと玄関の塀から人が現れた。
「よう、さすがに今日は速いじゃん。じゃぁ早く行こうぜ、大ちゃん。」
そう言って出てきたのは幼稚園から同じの幼馴染み、外山 椿だった。こいつは小さい頃から何をやるのも一緒だった。
しかし、こいつは自分に利益のあること以外は積極的にやらないためいつも俺の事に巻き込んでしまう形になる。そこら辺は俺も少し反省している・・・
でも、こいつも飽きずに俺と一緒にいてくれるし、こいつだって俺を無理矢理巻き込む事もある。
俺が喧嘩をするときはこいつも巻き込み、まぁ滅多にないがこいつが喧嘩したときは俺が巻き込まれる。やんちゃだった俺は小さい頃から何かと突っ走っていってしまい、それをこいつが抑えてくれた。逆にこいつがやらないことを俺が代わりにやってやることもしばしば・・・まぁ悪く言えばパシリという奴だ・・・いつも喧嘩に巻き込んだり巻き込まれたり、逆に俺達が喧嘩したり・・・二人は相棒でありライバルである唯一無二の親友なのだ。
椿は俺と一緒で商店街で小さな魚屋さんをやってる家の次男坊だ。こいつの家は二人兄弟だから金に困ってる訳ではないが、こいつは興味が無いと自分から動こうとしないから小学校で部活にも入っていなかった。
しかし、こいつは何でもできる。勉強も運動も・・・なんでもできる完璧人間だ。そんな奴と親友なのもなんかの縁だ。だから今こいつに剣道部に入らないかと誘っているが、まだ頷いてくれた事は無い・・・
「おい、いい加減大ちゃんは止めろよ。それに、俺は大我!たいちゃんならまだしも、だいちゃんは無いだろ・・・」
「そんなことより速く学校行こうぜ、置いてくぞ!」
椿は俺の文句も無視してさっさと走っていってしまった。俺も仕方なく椿の後を追って走り出し、商店街を駆け抜け知り合いやお互いの得意さんに挨拶を交わし、家の近くのゴミ置き場にゴミを投げ捨て中学校まで走り抜ける。小学校の時は遅刻ギリギリで走るのはよくあったが、これほどわくわくした気分で学校まで走ったことはない。
走って約5分、向龍中学校の校門に着いた時には二人とも息が上がっていた。まだ集合時間には30分もある、学校見学と行くとしよう。
息を整え、大きなエナメルを背負いながらゆっくりと校内に入ってくとなんだかとても嬉しい気分になった。やっと中学生になれた、もう子供じゃないんだ、もう大人の仲間入りだ。
この学校は二つの小学校が上がってくるので全部で8クラスもあるマンモス校だ。クラス分けは椿とは違うクラスになってしまったが、隣のクラスで体育は同じになるらしい。
入学式はかったるいので半分目を開けたまま寝てしまった。みんなが立ち上がる音で俺は起き、入学式を終えた。
帰りは椿と椿の母親と俺の母親と四人でガストで昼食を食べた。椿の母親と俺の母親は幼馴染みだったらしく、俺達がお互いの家に行くので親二人もよく家に来る事がある。
「ありがとうございました。また来てくださいね~」
野菜をお客さんに渡し、営業スマイルを向ける。小さい頃から磨いてきたこの技はこの年になったらプロ並みになり、近所のおばさんからは結構有名になっているらしい。俺は自分ではそうは思わないがモテるらしい。だから、やたら母親は俺に店番させたがる。その方がおばさん達からの評判が良いし、俺がおすすめしたらおばさんは買ってくれるからだ。
「大ちゃん、今日晩ご飯何が良いと思う?」
うちの常連さんのおばさんがよくこう聞いてくる。正直俺はおばさんの晩ご飯なんてどうでもいいんだが、答えてやるとその料理に使う野菜を買ってくれるから、なるべく野菜を多く使う料理を選ぶ。そうすればうちの家計が黒字に少しずつ近づいていく。
「そうですね~八宝菜なんかどうですか?」
少し悩んだ素振りをしてからにこやかな笑顔を向けて言った。そうするとおばさんは“じゃぁ八宝菜に使う野菜を下さい”とニコニコしながら言った。これでまた黒字に近づいた。心の中で小さくガッツポーズをして籠の中に野菜を入れる。
横では父さんと母さんが商売をしながら立ち話をしている、その周りで弟二人と妹が走り回っている。こいつら商売する気あるのだろうか・・・っと思うほど緩い。これじゃぁせっかく俺が儲けた分のも無くなってしまう・・・
「大我、お母さん夕ご飯の用意してくるから後はよろしく。」
くそばばぁ、立ち話しかしていないのにさっさと退場しやがった・・・閉店ギリギリまでおばさんへの商売は続き、閉店する頃には疲れ切ってしまった。
しかし、家に入ったからといって楽になるわけではない・・・
弟二人と妹の喧嘩する中さっさと晩飯を済ませ、三人にご飯を食べさせお風呂に入れ、なかなか寝付かない妹に添い寝するまで休めない。両親は明日の店の用意や今日の売り上げ計算なんかで大変だからチビ共の面倒は俺が全てしている。
チビ共が寝たらやっと俺の自由の時間、部屋に戻りゲームや漫画を読む。しかし昼間の疲れですぐに眠たくなって寝てしまう。最悪、妹の添い寝の途中に一緒に寝てしまう事もしばしば。こんな生活をしている中学生普通はいないと思う。部屋の電気を消し布団に入り重たい瞼をゆっくり閉める。
入学式から三日後、やっと部活見学が許可された。俺はうきうきしながらめんどくさそうな椿をつれて武道館へ向かう。今日配られた部活案内によると剣道部は四時から始まるらしいが、少し速めに行ってもきっと誰かしらいるだろう。
武道館の入り口に立ち、大きく深呼吸をしてから扉を開け、“失礼します”と大きな声で言って入る。入るとそこには胴着を来た先輩が二人竹刀手入れをしていた。一人は長い黒髪のポニーテールの女の人で、もう一人は長身で短髪の男の人だった。
「あら、新入部員さん?ならどうぞ~見学していって~」
女の先輩は笑顔で俺たちに座るように言った。俺たちは武道館の端に行き、正座して見学をする。きっとまだ部員が来ていないんだ、もう少ししたらもっと部員が来るのだろう。しかし、四時になると二人は向き合って体操をし出した。遅刻・・・って訳ではなさそうだ。防具置き場に名前は二つしかなかった。ってころは・・・
「あの・・・もしかして剣道部の部員って二人だけですか?」
恐る恐る聞いてみると少し二人はびっくりしてこっちを向いた。俺はこの二人の様子でわかった・・・二人しかいないんだ・・・
「そ・・・そうなのよ。私たち二年生二人しかいないのよ・・・あと一人は幽霊部員だから・・・」
女の先輩は苦笑いで俺達の質問に答えてくれた。三人って・・・練習なんてできないじゃないか。中学になったら剣道ができると、そう思ってたのに・・・
でも、二人でもちゃんと部活しているんだ、良い方に考えればすぐにレギュラー入りできるっと言うわけだ。でも、三人って・・・
少しボーとしていた俺の肩を椿は急に叩いた。そして、少し不気味で裏のある笑顔を見せて、
「大我、俺剣道部入ってやっても良いよ。この部活おもしろそう。」
椿は変わった事が大好きな変わり者だから、この変わった部活が気に入ったのだろう。気に入ったのは分かるがその裏のある黒い笑顔はなんだ・・・しかし、これで椿を剣道部に入れる事ができたし、一人で入るにはこの状況は少しきつい・・・
でも、確かに部員は少ないがやっと剣道を出来る環境になったんだ。しかも、部員が少ないならすぐにスタメンに入れる。こんなチャンスを逃すわけにはいかない!俺はここで、この剣道部で俺の剣道を突き進むんだ。
「一年三組十四番、志導 大我、」
「一年四組十七番、外山 椿、」
俺は意気込んで自分の名前を大きく言い、椿も今まで見たこと無いほどの笑顔で名前を言う。俺と椿は今日からこの向龍中学のこの廃部寸前剣道部でトップになってやる!
『この剣道部に入部します!』
こんな駄作を読んでいただき、ありがとうございました!次回はなるべく早く投稿したいと思いますので応援お願いします。




