十四回戦【おみくじ】
〈第十四回廃剣インタビュー〉
はい、始まりました!
毎回恒例の廃剣インタビューです!
今回の司会は滅多に出番のない五十嵐 雷です!
今回は俺の友人の一年軍団にインタビューしたいと思います!
では、Let's interview!
雷「俺にもやっと出番が!」
大「正直、忘れてた。」
椿「だってタイトル考えなよ。剣道部だよ? 剣道部じゃないバスケ部の雷の出番が多いわけないじゃん。」
雷「そこまで言わんでも……泣くぞ!」
元「大丈夫だって~学校編では出番増えるって!」
鷹「気休めだな。」
雷「お前らそれでも友達? まぁ、いいや。では、本題~」
大「お前のその適当な所、好きだわ。」
『大我は授業中に寝てるのが多いみたいですが、みんなはどうなんですか?』
雷「あぁ~大我凄い爆睡してるよな。」
大「別に寝たくて寝てるわけじゃないんだけど……」
雷「お答えしましょう! 基本、みんな寝てます!」
元「オレも寝てるなぁ~オレと大我席前後だから、二人で代わり番こで寝て、後でノートを貸し合うんだ。」
雷「それでダメだったら俺に借りるって?」
鷹「俺も寝る。」
雷「お前の場合は枕持参だもんな。」
椿「俺は起きてるよ。」
大「見た目は……だろ?」
椿「目を開けたまま寝るのは居眠りの基本。大我や鷹虎みたいに露骨に寝ない。」
雷「いや、基本寝たら駄目だから……」
元「雷は起きてるよねぇ~凄いよなぁ。」
雷「あの、学生の基本だと……」
大「うん、凄い。俺眠かったら寝る。」
鷹「あんな授業なんか起きてられっか。」
雷「お前たち欲望に忠実過ぎだろ!」
元「それにノート綺麗だし。宿題ちゃんとしてるし。きっと育ちがいいんだな。」
椿「バスケ部でこれまで授業に参加してるなんて、素晴らしい。俺の凄い栄誉賞あげよっか?」
雷「……いらない。」
鷹「それに比例して成績も良いのかぁ~」
大「あれ? 鷹虎比例なんか言葉知ってたんだ。」
鷹「そこまでバカじゃねぇよ!」
雷「お前ら……学校に何しにきてんだ?」
全員「……寝に?」
雷「せめてそこは剣道って言えよ!?」
=終了=
「こりゃ、筋傷めてるね……骨に異常はないだろうけど、試合は駄目だろうね。痛みがなくなるまで、当分練習も休みなさい。そうだなぁ~最低でも一週間は休みなさい。」
医療班の医者に言われて俺は絶望した。こんな怪我で一週間のドクターストップかよ……試合は諦めるけど、練習は……休みたくない。
医者の先生は俺を腕に包帯を巻いて、テープでとめた。
「そうですか……残念ね、大我。先生の言う通り、練習は見学させて貰いなさい。」
母さんもそう言って俺の肩軽く叩いた。これはそんな簡単に諦め切れないぞ。
「練習って、素振りも駄目ですか? 防具を着けないで素振りだけなら良いですか?」
なにやら書類を書く先生に質問をする。ここで食い下がる訳にはいかない。せっかくコツが掴めたのに、今休んだら……みんなに置いて行かれる。それは嫌だ。
「素振りかぁ~大丈夫かな……でも、右手を使わない様に素振り出来る? それなら出来るよ。」
右手を使わない様に素振り? つまり、左手素振りか……俺の腕力にはまだ難しいけど、この際に覚えちゃおう。
でも、それだけしかやらせてくれないのかな? まぁ、これは森先生に相談しよう……
「わかりました。やってみます。じゃぁ、俺試合見てきます!」
そろそろ向龍中の試合が始まる。出られないのなら、精一杯応援しなきゃ。
後ろで母親の声が聞こえるのを無視して、俺は医療室から駆け足で出て行く。
これから仲間が死ぬ気で戦うんだ。そんな中こんなところでのんびりしてられない。みんなが頑張ってたのに、応援しか出来ない。
****
帰ってきたらみんなでなにやら作戦会議をしていた。
恐らく俺が抜けたのをどうするか話しているのだろう。申し訳ない。
そう思っていると、元が俺の存在に気が付いた。
「大我! 手大丈夫かよ!」
包帯でグルグル巻きになった手を見て元が叫んだ。確かに動かすと痛いけど、そこまで大げさなことではない。
「大丈夫だ。心配させて悪かったな……っで、今どういう状況だ? なんかの作戦会議?」
手を軽く振って大丈夫という合図をしながら、円陣に入る。なんの会議だ?
「次の相手がちょっと厄介でなぁ~中堅の椿の相手が手強いんだよ。」
中堅って……怪我してなかったら、その手強い相手と俺は戦えたのかぁ! あぁ、なんで俺ってこんなに運が悪いんだろう……無宗教だけど、神様の意地悪!
「まぁ、椿の粘り強さならなんとかなるやろ。椿、初戦の悔しさここで発揮するんやで!」
森羅先輩は椿の頭を軽く叩いて笑いかけた。
こういう時の森羅先輩の笑顔は程よく緊張を解してくれる。
椿はしっかりと頷き、俺を見た。
「まぁ、一応精一杯頑張るよ。お前の分まで働くつもりはないから、そのつもりで~」
そう言って椿は俺の肩を軽く叩いた。
まったく、どこまでもマイペースな奴だ。ひねくれ者の親友を持つと大変だが、面白い。それに、このマイペース振りを見てると俺の気が軽くなる。
「あぁ、お前は全力出し切ってこい。俺はお前の活躍をコートの外からきっちりこの目に焼き付けるよ。」
俺がニコッと笑うと椿もニッコリ笑い返す。ひねくれ坊主、頑張れよ。
「大我! オレもお前に負けないくらいの活躍してやるからな! その目ん玉に焼き付けとけよ!」
椿の上から元が身を乗り出した。椿は物凄く嫌そうな顔をして元の顎に頭突きした。元はアグッと変な声を出して椿の上から降りた。こいつも懲りないなぁ~
「お前は逆に力み過ぎなんだよ。元気なのはいいけど無駄な力が入りすぎてるんだよ。もっと力抜いて軽く行こうぜ。」
元は俺の言葉を聞いて少し考えるが、よく分からないといった顔をして笑った。こいつの頭には難しかったかな?
「おい、大我。俺にはなんもないのかよ。」
横から声をかけたのは鷹虎だった。こいつは今からが初試合。もっと緊張してると思ったが、結構落ち着いてる。
「鷹虎は充分力はある。今まで人一倍努力してたのも、俺は知ってる。だから、自分のやってきた事を信じてしっかりやれば大丈夫だよ。」
こいつは見た目はがさつで不器用そうだが、人一倍努力家だ。だるいやめんどくさいと言いながらも、俺や先輩の指摘すんなり聞き入れる。負けず嫌いの性格だから、負けたくないと努力する。
鷹虎の良いところだ。もとから身体能力は良いし、身長も高い。
「ほら、そろそろ移動するぞ。大我、手は大丈夫か?」
煌希先輩の掛け声に皆、防具を担ぐ。
防具を持った煌希先輩は俺の手を見ながら聞いてきた。
「はい、大丈夫です。迷惑かけてすみません。次の試合も頑張って下さい! 応援してます。」
煌希先輩に謝罪をしてから、応援の気持ちを先輩に伝えた。
「迷惑なんて、そんなの思ってないよ。さっきの試合は大我の一勝が俺たちを助けてくれたんだ。それに怪我してまで守ろうとするなんて、凄いよ。あと、応援もいいけど、お前もこのチームのメンバーなんだ。一緒に戦っている気で構えてろ。」
煌希先輩の言葉が心に響いた。怪我して使えないこんな俺にこんな優しい言葉をかけてくれるなんて……泣きそうだ。
俺は大きく頷いて選手の後を追った。後ろからは女子三人がついてきて記録をとるノートに記入していた。
二回戦目の学校は全員経験者。先輩のデータによると、中でも先鋒と中堅が手強いらしい。つまり、元と椿の相手が手練れと言うことだ。逆に大将はたいしたこと無いらしい。捨て大将っていうことか。
っていうか、相手は五人ともごついなぁ……小柄な元なんか弾き飛ばされちゃうんじゃないか?
向龍中学の五人が今相手と向かい合って立っている。試合が試合が始まる。
俺は先生の横に座り、みんなの戦いを見る。
「お互いに、礼!」
審判の掛け声で一斉に礼をする。皆、コートの外まで下がり先鋒の元だけがコートに残る。先生の横で正座して元の後ろ姿を見る。
「大我、しっかり見ておけよ! オレ様の戦い!」
ふざけたこと言ってないで、さっさと試合場に行け。小手の親指を立てながら試合場へと歩む。
そんな元の背中は小柄なのにとても頼もしく見えた。
元の素早い速攻攻撃は相手にはなかなか当たらず、ただ時間だけが過ぎていく。
元はただ相手の攻撃に当たらないように、当たらないようにと避けていたが試合後半に技が尽きた所に面を打ち込まれてしまった。
そのまま、時間切れになり一本負け。初心者が経験者相手に一本で抑えるのは、並の技じゃない。元はこの試合で確実に成長している。
少ししょぼんってして帰ってきた元。そんなにしょげることじゃないのに。一本で抑えただけですごいんだ、自信を持て。
元の次は次鋒の鷹虎。椿の相手は先鋒ほどでは無いがなかなかの相手だ。
鷹虎は少し緊張している様だが、そこまでガチガチになっている訳じゃない。俺をチラッと見て少し拳を掲げて試合場へと歩んでいく。なんだか鷹虎がやると格好いいな。
鷹虎の相手は一方的に打ってくる。しかし、明らかに体格差が出た。
相手の身長は170前後、鷹虎の身長は180。剣道で10㎝の差は結構大きい差だ。相手はなかなか面に当たらないが、鷹虎は上から叩けばすぐに面が当たる。
相手の怒濤の攻撃にも鷹虎は落ち着いて受けていた。試合慣れしている鷹虎は相手の攻撃が尽きた所を狙って上から面を叩きつける。
『なぁ、相手に打ち込むタイミングがわかんねぇんだけど……』
朝練をしていた時、鷹虎に聞かれた。
確かに鷹虎と稽古していると良く分からないタイミングで打ち込んでくる。それは稽古の経験を積んでいけば、いずれ分かってくること。しかし、試合が近いとなるとそんなのんきなことは言えない。
「そうだなぁ……まぁ、簡単に言うと相手の技が尽きたところ、だな。難しいかもしれないけど、相手の攻撃を当たらないように受けて、相手が技を出し終わった時に打ち込む。お前は背が高いし、大丈夫だろ。」
っと助言したのは俺だ。それを確実に実行中の鷹虎。
でも、鷹虎の戦闘スタイルだったら普通に戦っても大丈夫そうだけど。
しかし、なかなか決まらないまま試合終了のブザーが鳴った。
引き分け。これで鷹虎の初試合が終わった。お疲れ様だな。
鷹虎がコートから出ると、椿と入れ替わった。
これからが椿の試合だ。なかなかの手練れらしい。こう言ってはなんだが、これは見ものだ。
椿は礼をして三歩前へ歩き、蹲踞。審判の初めの声と同時に立ち上がる。
構えた瞬間、相手の強さが分かった。オーラと言うか、雰囲気がまるで違う。森羅先輩とは違う雰囲気だ。
相手は大きく気合いの声を出し、素速い面を打ってきた。椿の面が真っ二つに割られた。
そして、赤旗が三本まっすぐに上げられた。
速い……。スピードが違いすぎる。椿もただ呆然と立っていた。二回連続で一本を取られ、こいつのプライドはボロボロだろう。もう、戦意喪失したか?
しかし、審判の二本目の声と同時に椿が今まで見たことない速さで相手の小手を打った。椿の竹刀はまっすぐ相手の小手に当たり、綺麗にパコッと音を鳴らした。そして、相手に体当たり残心を取る。
「コテェェェェェェェ!」
椿の渾身の一撃。白旗が三本、ゆっくりと上がったのが見えた。
「小手あり。」
審判の声を聞いて、俺たちは大きく拍手をした。
まさか、椿が一本取るとは思っていなかった。っていうか、あんな速い小手、椿は練習で見たことなかった。
これで、一本同時。勝負は次の一本で決まる。
「勝負。」
審判の声で試合は再開された。
二人は竹刀で間合いを計り合い、お互いなかなか動かない。
椿は俺から見たところ、もうすでに半分やる気を無くしている。“一本相手に返せたし、もう打たれなければいいかぁ~”的な感じに考えているのだろう。まぁ、実際それで良い。
椿は目標の引き分けが達成出来たわけだ。ここで無理して隙が出来、相手に一本取られてもチームの為にもならない。
試合が終わりに近づくと相手も焦りだした。何も考えず、打ち出した。それを椿は上手く逃げる。打突を受けるだけなら俺の練習を手伝ってたし、元々動体視力の良い椿にとってそんなに苦ではなかった。
そして、試合終了のブザーがコートに鳴り響いた。
そのまま、コートから帰ってきた椿は少し嬉しそうだった。
そうだろうな。価値はしなかったが、負けなかったし、一本取った。俺も一本取ったときは嬉しかった。
今俺達の学校は一本負けの状況だ。
しかし、今から試合するのは煌希先輩だ。そして、今俺の横で体操をしている大将森羅先輩がいる。この二人は二勝してくれる。そんな安心感がある。
「こりゃ、勝たなきゃ駄目だろうね……」
「やろうね~まぁ、俺に良い感じで回してやぁ~引き分けとか嫌やで。」
煌希先輩と森羅先輩はそんな会話を少ししてから拳をぶつけ合った。
そして煌希先輩はコートに入り、蹲踞。
試合開始の合図が審判の声で出された。
立ち上がり、煌希先輩はいきなり数歩下がった。
数歩下がり、相手との間合いを切り、遠間で竹刀を上下に動かす。煌希先輩は足を器用に使い、相手との間合いを詰めていく。
近間へ入り、一足一刀の間合い、遠間。3つの間合いを行き来し、相手を翻弄する。
痺れを切らした相手は遠間の時点で大きく面を飛んできた。
しかし、煌希先輩は相手の面を竹刀で止め、その反動を使い胴を打ち込む。
先輩は咄嗟に返し胴を打ったのだ。
俺とは違い、読んでいた訳でなく、恐らく体に染み着いてるのだろう。綺麗な音がなった。
そして、白旗が三本まっすぐ上がった。
打った後、煌希先輩は何事もなかったように開始線へと戻っていった。相手も呆然としながらも開始線へと戻る。
「胴あり。二本目。」
審判の声が聞こえた瞬間煌希先輩は小手面を打ち、綺麗に面を決めた。
これで一勝。さすが煌希先輩。試合が始まって1分ぐらいしか経ってないのに、簡単に二本決めてしまった。
蹲踞をして下がってきた煌希先輩は次で待っている森羅先輩と拳を合わせ退場した。
次は森羅先輩の番。
「お互いに、礼。」
二回戦が終わった。
森羅先輩はまたしてもわずか10秒で面と小手を決めてしまった。
みんなが防具を置きに行ってる間に、俺はトーナメント表で次の相手を確認する。そうしていると、先生が覗いてきた。
「うぅ~ん。今回はなかなか厳しいなぁ……」
「なにがですか? 順調にすすんでますが。」
トーナメント表にマーカーで印を付けると次の対戦相手を見る。
『虎博中学』
と書いてあった。
「この虎博中って、結構強いんだよ。森羅は大丈夫だろうけど、他の子達はどうだろうなぁ……まぁ、そう簡単には負けないと思うけど。あっ、あの学校だよ。ほら、あの黒いジャージの学校。」
先生が指差す先に黒いジャージの軍団が通った。背中には大きく「虎博中学剣道部」と書いてあった。みんな背も高く、がっちりしていた。これは、ひょろい椿なんかは飛ばされそうだな……
虎博中学、確か川の向こう側の私立の中学だ。あまり気にしたことなかったけど、確かお金持ち学校って噂を聞いたことがある。
俺と先生が彼らを見ていると、虎博中の部員の一人が俺達の方へ歩いてきた。まさか、ガン見してたから怒った?
近づいてきた人は背が高かったが、他の部員にしては細い方だった。
「森先生、ご無沙汰してます。」
俺は身構えていると、虎博中の人が森先生に頭を下げた。森先生のお知り合い?
「おぉ~トシ、久しぶりだな。今年の新人はどうだ?」
「ぼちぼちですかねぇ~まぁ、元気なのが一人入りましたよ。そちらはなかなか良いメンバーを集めましたね。」
虎博中の人はそう言って、先生の後ろに隠れるように立っている俺をチラッとみて微笑んだ。
「だろ? 一年は皆初心者でな。なかなか皆筋が良い。そうだ、大我にも紹介しとおこう。こいつは虎博中学剣道部の二年中吉 歳だ。昔に強化選手の時に知り合ったんだ。」
強化選手って、強い人が選ばれるやつだよな……凄いんだこの人。
「志導大我です。よろしくお願いします。」
俺は名乗って一礼した。こんな強豪校の人と知り合えるのもなかなかないだろう。顔をあげると、中吉さんは俺を見て微笑んでいた。
「君が志導君かぁ~始めましては、中吉歳です。おみくじの中吉って書いて『なかよし』って読むんだ。変わってるだろ? でも、おみくじで中吉が出たことないんだ。なんかの運命なのかなぁ~」
中吉さんはそう言って軽く笑った。爽やかで感じで面白くて、良い人だ。
森先生が俺の頭に手を置いて、ガシガシと髪を撫でる。
「こいつはさっき手を痛めてな……トシ、見てやってくれ。お前こういうの詳しいだろ?」
先生はそう言って俺の腕を前に出させた。
「あぁ、一回戦の最後ギリギリの庇った奴だね。確かに変な音したもんねぇ。見せてごらん。」
中吉さんは俺の手を掴み、見た。筋を痛めている為、触られるだけで痛みが走る。中吉さんは痛めている部分ではなく、腕の付け根の方を触った。
「見ていたんですか、俺達の試合。痛っ……」
付け根の部分から徐々に痛めてる部分に移動してきた。痛みが腕に走る。
「見ていたよ。凄いね、向龍中は。あぁ、確かに筋痛めてるね。こりゃは相当痛いと思うよ。」
中吉さんは俺の腕から目を離さずにそう答えた。一番痛いのは今押されてることなんだけどな……
「そんなに痛くないですよ。痛っ……うちの中学は先輩が強いですから、俺達後輩からしたら頼もしい限りです。」
「うぅ~ん、戸隠達もそうだけど。俺が注目してるのは志導君なんだよ。」
中吉さんは“はい、終わり”と言って俺の手を離した。少し動かしてみるて、さっきより痛みが弱まっていた。
俺に注目してる? なんで煌希先輩や森羅先輩じゃなくて俺なんだ?
「君、初心者なんだろ? まぁ、ちょっとかじったことはあるみたいだけど。それにしても、君の剣道は面白い。それに、俺達や戸隠達にないものを持ってる。今まで色んな人を見たけど、君の剣道は人を引き寄せる。それが、これからどう磨かれていくのか俺は興味があるんだ。」
中吉さんは俺の顔を見ながらそう言った。
この人、あんな一回の試合見ただけで俺が剣道をかじってるのを分かった。それに中吉さんや森羅先輩達にないものって……? 俺、そんな変な試合したかなぁ~
「こらトシ。大我が混乱している。ふざけたことを言うのは止めてやれ。」
森先生が俺の肩を叩きながら中吉さんを制止する。ふざけてるのか? いや、中吉さんの俺を見る瞳は笑いながらも真剣だ。
「俺は至って本気ですよ。俺が冗談でこんな他人を褒めたりしないの、先生もご存知でしょう。それに森先生も同じ考えでは?」
中吉さんの言葉に先生は黙ってしまった。
ちょっと待て! 二人共俺を過大評価しすぎ!
「あの……俺、そんなに良い選手じゃないですよ。まだ弱いし、癖もあるし……なにかの勘違いでは? それに……」
俺が話そうとすると、ロビーの入り口の方から俺を呼ぶ声が聞こえた。この声聞き覚えがあるぞ……
「おぉ~い! 大我~飲み物買いに行くけど、来るかぁ?」
元の声がロビーに響く。その声を聞いて中吉さんも元の方を見た。
「彼は確か……斉藤君だっけ? 彼も初心者にしては癖もないし、スピードはあるね。でも、速いだけならまだ上がいる。まぁ、鍛え次第で良い先鋒になるかもね。これからが楽しみですね。」
中吉さんは元を見ながらそう呟いた。
元と椿が財布を持って近づいてきた。その時、椿が急に足を止めた。
「元、大我誰かと会話中。邪魔になるから先行っとこ。大我、先行っとくから後で来い。」
椿は俺へと突進しようとする元を掴んで自動販売機へと向かっていった。ってか、なぜか命令形?
「外山君だっけ? 最後に決めた子だよね? あれも五月蝿くなりそうだ。本当に今年は面白いですね。では、三回戦で会いましょう。あっ、お互い恨みっこなしですよ。では……」
中吉さんはそう言ってスタスタロビーを歩いていってしまった。なんだか不思議な感じの人だったな。
「あいつはこうやって相手を分析するのが癖なんだ。あの性格さえなければ、あいつはモテると思うんだが……」
確かに容姿は綺麗だと思う。ってか、先生ツッコむとこそこなんすね……
「さぁ、次はあいつらとの試合だ。気引き締めて行かなきゃ、さっきみたいにはいけないからな。お前もあいつらの剣道を見るのも一つの勉強だ。」
森先生はそう言って笑いながら会場に入っていった。
俺は痛みが和らいだ腕を見つめた。それから財布を取りに席へ戻った。
はい、十四回戦が終了しましたぁ( ~っ~)/
また新たな人が出てきて、作ってる本人もびっくり。
まぁ、他校の人との交流は大切ですしね(^O^)
それにしても、変わったキャラになりました……
始めはあんなんじゃなかったのに(-_-#)
あっ、前回試合終わる予感って言ってますが、終わりませんでしたぁ(-o-;)
次こそ終わります!
あと、自分的に1ヶ月に1話って決めてたのに今回はちょっと遅れました(≧ヘ≦)
先月と今月にちょっといろいろありまして……(¬_¬)
来月にはちゃんとします!
廃剣インタビューのネタ募集中です(・o・)ノ
ネタが切れてます。
なんでもいいのでネタ下さい!
では、次回で会いましょうε=ε=┏( ・_・)┛
Have a nice day!