十回戦【いざ出陣!】
〈第十回廃剣インタビュー〉
はい、始まりました廃剣インタビュー。
今回は俺、志導大我が司会進行をしたいと思います。いつも答えてるので、今回は質問する方に回りたいと思います。
では、Let's interview。
元「ちょっと待てぇぇぇ!」
大「なんだよ。俺が司会じゃ駄目なのか?」
元「いや、大我が司会なのはいいんだけど…主人公が十回目で司会って遅くないか!」
鷹「毎回出てるから忘れてた。」
大「出たくて出てるわけじゃないんだけどな……」
大「では、質問。『前話には一年生の家の様子が見えたけど、先輩方の家の様子が出てきてません。教えて下さい!』だそうです。」
煌「えっ、めんどう。」
葵「そんな大したことしてないわよ~」
森「そやで。まぁ、うちの事が知りたいなら教えたるわ~」
大「別に知りたくありません。」
煌「同感だ。」
森「ひどっ!」
葵「私の家は両親と二つ違いのお兄ちゃんが一人いるよ。兄妹の仲はまぁまぁかな~」
煌「あぁ、あのシスコン兄貴な。」
葵「お兄ちゃんはシスコンじゃないよ~」
煌「どうだか……」
大「シスコンかぁ~」
椿「お前もだろ?」
大「違うわ!?」
森「うちんちも両親と4つ離れた姉貴がおるわ~今は大学でエンジョイしてるわぁ~」
葵「都さん格好いいもんねぇ~」
煌「どうだか……」
大「4つって結構ですね。」
森「お前んとこには負けるわぁ~」
椿「こいつんとこ6つ違いと7つ違いですからぁ~」
煌「俺の家はシングルマザーで、母親と2人暮らしだ。父親はわからんが、死んだらしい。兄妹はいない。」
森「わからんって、病気やろうが!」
煌「あれっ?そうだったか?犬に食われて死んだんじゃ?」
葵「あんたねぇ~」
煌「どうだか……」
大「煌希先輩、どうだかって好きなんですか……」
煌「どうだか……?」
森「大我~今日は飲みに行くでぇ!」
大「って!何言ってるんですか!それに俺未成年だから!」
森「かまへん、かまへん~行くでぇ~元、鷹虎、椿もこいや。」
煌「はぁ~こいつは疲れる。」
=終了=
チャリを全力で走らせ、丘の上にある道場に到着。
道場に着き、チャリを止め玄関の前まで移動する。玄関前にはすでに色々な学校が集合していた。門が開くまであと15分。
先輩達と車から防具を取り出し、門の前の列に並ぶと中の係員が門を開けた。
ゾロゾロと人が建物の中に入っていく。人混みに紛れながら先輩に必死に着いていく。こういう時に鷹虎は便利だ。頭が一つ出ているため見つけやすい。
観客席に荷物を置き、重たかった防具を肩から下ろす。あぁ~しんどかった……
「さっさと着替えて防具着けろよ。山咲、女子は着替えてこい。」
煌希先輩の指示を聞いてエナメルから胴着を出す。
葵先輩と風香達女子は更衣室へ急いで行ってしまった。こういう時、男子は便利だな~観客席で着替えてそのまま防具を付けることが出来る。
胴着に着替えていると、元と鷹虎が静かなのに気が付いた。椿はいつも通り平然としているか、この2人が静かなのは変だ……もしかして、腹でも痛いのか? お気楽なこいつらでも、緊張ぐらいするだろ。
「おい、どうしたんだ?」
垂れを着けながら静かに防具を着ける2人に話しかける。元は少しゆっくりこっちを向いて呟いた。
「腹減った……なんか食いたい。」
元は胴紐を結びながらため息をついた。鷹虎にいたっては早々と防具を着け終わり、カロリーメイトをくわえていた。心配した俺が馬鹿だったよ。
「ほら、面と竹刀持ってアップ行くで~場所無くなってまう。」
煌希先輩と森羅先輩は速くも防具を着け終わり、面と竹刀を持って俺達を待っていた。俺達は急いで先輩達に着いていく。
会場に着くともうすでに何校かがアップを始めていた。俺達は壁際に面を並べ、各々体操をしてから面を着ける。少しして女子とも合流した。開会式が始まるまでに体を動かしておかなければ。
狭い会場でたくさんの学校がアップをしているため、物凄く狭く息苦しかった。いつもより少ないメニューだったが人が多いからかいつもよりしんどかった。
軽く汗を流してアップは終了した。
「開会式始まるから一列に並ぼう。」
煌希先輩を先頭に一列に並ぶ。俺達選手の前に審判の先生方が横一列に並び楽しげに話している。その中に森先生の姿があった。先生も審判だったんだ……
全選手が整列し、先生方も並び終えた10時ぴったり。本部からアナウンスが流れる。
『只今より開会式を始めます。一同、礼!』
それから長い長い開会式が始まった。開会宣言や会長の話し、試合のルール、会場使用上の注意、選手宣誓など話された。
『これで開会式を終了します。第一試合開始時間は10時20分です。解散。』
アナウンスがそう言うと、皆礼をして顧問のもとへ走る。現在の時間は10時10分。約10分後に第一試合が始まる。
先輩が駆け足で森先生の所へ行くのに着いていく。
少し下がった所に森先生は笑顔で待っていた。
「男子は第三試合、女子は第五試合だ。相手はどちらも無名だ、思いっきりやってこい。負けても構わないが後悔の残る負け方はするな。」
先生はそう言って拳を握った。試合の進行や対戦相手が書いてるパンフレットを煌希先輩に渡し、もう一枚の小さな紙を俺達に見せた。
「オーダーを発表するぞ。
先鋒、斉藤。暴れてこい。」
「御意! 任せろ大将!」
目をキラキラさせながら元は返事をした。
やっぱり先生も元は先鋒タイプと思ってたんだ。まぁ、こいつの元気はチームのモチベーションを上げてくれるだろう。ってか、大将って戦国武将かよ?
「次鋒、外山。粘れよぉ~」
「ある程度頑張る。」
椿が次鋒か。椿がどんな剣道をするかまだ定かではないが、粘り強い性格の椿なら意地でも繋げるはず。ってある程度かよ……
「中堅、志導。楽しんでこい。」
「はい!」
中堅……ここで勝負が決まるかもしれない。前が負けてたら勝たなきゃ、前が勝ってたらキープしなければならない。所謂、砦。なんか緊張してきた……
「副将、沖林。森羅に繋げろよ。」
「分かってますよ。」
煌希先輩が副将、後で巻き返しをするのか。でも、煌希先輩が中堅の方が俺は良いと思うんだけど……
「大将、戸隠。お前で決めて来い!」
「了解や! まぁ、煌希までに決めてくれたら嬉しいんやけどなぁ~」
森羅先輩が大将。この1ヶ月見て来て分かったが、森羅先輩は本当に強い。大将で頼もしい人だ。
「藤明は二回戦目に外山と交代する。その身長を活かして頑張れ。二回戦目まで行くように応援しろよ。」
「はい! みんな一回戦勝ってくれよ!」
鷹虎が外されたのは恐らく2人より遅かったからだろう。でも、二回戦目で出れるんだ。俺達が頑張らないとな。
「女子先鋒、天地。中堅、春月。大将、山咲。女子は3人だから厳しいが山咲、引っ張ってやれ。」
「はい!」
女子も気合いが入っている。初めての試合で高ぶってるみたいだ。それは俺達も同じ。皆ドキドキしている。初試合、緊張してきた。
10時20分ぴったり、3つのコートに第一試合の学校が並ぶ。第一試合はだいたい一斉に始める。
『これより第一試合を開始する。お互いに礼!』
「お願いします!」
第一試合が始まった。
俺たち向龍中は第三試合、第一試合が終了するぐらいに用意を始めれば余裕だ。第一試合が終わる前に水分補給をしておこうと、みんなで観客席に戻っている途中だ。
「「あっ、兄ちゃん!」」
観客席に戻ると、双子が俺に飛びついてきて胴に額をぶつけた。
「だ、大丈夫か!? ってか考えろよ……」
額を抑えてしゃがんでいる2人の頭を撫でる。こいつら本当に馬鹿だ……
「なっくん、ふーくん! お兄ちゃんの邪魔しちゃ駄目でしょ。」
2人に気を取られていて気が付かなかったが、母さんと春香、椿の母親が当たり前の様に観客席に座っていた。春香が俺の所に来ようとしたが母さんに捕まっていたため来れなかったらしい。
「こんにちは、部長の沖林煌希です。今日はわざわざありがとうございます。」
煌希先輩が俺の母さんと椿の母さんに頭を下げて挨拶している。先輩、そんな挨拶しなくてもいいですよ……
「あら、ご丁寧にどうも。あなたが煌希先輩ね、椿がよく話してくれるのよ。」
「余計なこと言うと今すぐ追い出すよ。」
母親の顔を見た時から嫌そうなオーラを明らかに漂わしている椿が冷たく言い放った。怖いよ、椿。
「大我、あんた何試合目? あとどこなの? 中堅?」
「第三試合。ってかよく分かったな……」
「パパが大我は中堅が適任だろうって言ってたのよ。さすがパパね~」
俺の母親は父親と大学時代から付き合っていたらしく、父親の試合を毎回観に行っていた為剣道を理解している。それに、父親に剣道の話を聞かされまくっていたから剣道のルールも分かっている。
父さんも中堅が良いと思ってるんだ……なんでだろう?俺ってそんなに中堅向きなのかな……?
「そろそろ行かなあかんな。ほな、大我のお母様と椿のお母様俺達はここらで~」
森羅先輩はにこやかな笑顔をして煌希先輩と行ってしまった。俺達も2人を追おうと母さんに背中を向けると、母さんに腕を引っ張られた。
「パパからの伝言よ。」
そう言って母さんは俺に耳打ちをした。その伝言を聞き、頷き先輩の後を追う。
会場に戻った時、第一試合が終了した。俺達向龍中もそろそろ用意しなくては……
試合開始時は先鋒と次鋒のみが面をつけ後の3人は何も着けずに整列する。元と椿が面を着け始め、俺と鷹虎と先輩は二試合目の試合を観戦。目には試合が映っているが、頭には全く入ってこない。頭は緊張しっぱなしだ……
この試合が終われば俺達の試合が始まる。緊張で心臓が破裂しそうだ。やべっ、気持ち悪くなってきた……
少しすると森先生が近づいてきた。1人ずつに何か言っているようだ。元も椿も先生の話が終わるとさっきまでカチカチに緊張していた顔が緩んだ。
先生って凄いな……そう思っていると先生が俺の方へ近付いてきた。
「志導は剣道が好きか?」
「はい。」
「ははっ、即答だね。その気持ちは剣道にとってとても大切なことなんだ。そして、君の気持ちはいつか強い武器を生み出す。今日はその武器を見つける為鍵になる試合だ。勝ち負けは気にしないでいい、気楽に行こう。志導はいい武器を持ってるよ。探してみな。」
先生はそう言って俺の頭を撫でた。俺の頭を撫でてから煌希先輩に話に行った。
先生は本当に凄い……先生と話したら少し気が軽くなった。
俺の中の武器、その武器を探すんだ。今回の試合で何を掴むか分からないが、何かを掴むための試合だ。
先生が森羅先輩と話し終わって少ししてから第二試合が終了した。
いよいよ、俺達の番だ。
「よしっ、初試合だ。行ってこい!」
コートの線の前にオーダーの順番に並び、相手と睨み合う。
さっき別れ際に母親に言われた父親からの伝言。“礼で弱い面を見せては駄目だ、舐められる。”ここに立つまでは何か考えていたが、今は何も考えられない。頭が真っ白だ……
審判の合図で一斉に挨拶をして俺達はコートの外にはける。
コートには先鋒の元だけが残った。ピョンピョンと跳ねながら気合いを溜めている。俺達はコートの外から元を見送る。
ここからは元の戦い。
***
コートの外枠の線に立ち、大きく深呼吸。今からオレの3分間が始まる。審判が定位置に着くまでの少しの時間の間にジャンプをしながら気を落ち着かせる。大丈夫、大丈夫と何度も自分に言い聞かせ、先生の言葉を思い出す。
『斉藤は新撰組が好きだったな。新撰組は幕府を守る為に戦ったんだ。君は斉藤元君だろ? 幕府ではなくこの学校を、この剣道部を守る為に戦うんだ。それで負けたって、局長は怒らないよ。』
そうだ。斉藤一は新撰組を守る為、組に従って戦ってきた。オレも憧れの斉藤一のようにこの剣道部の為に戦おう。
横を見てみると次の椿が立ってアキレス腱を伸ばしてオレを見ている。大我は面を着けながら、煌希先輩とシンちゃんは面の前に座ってオレを見ていた。少し視線を横に移すと先生と平助がじっとオレを見ていた。このチームの為に……オレは戦うんだ!
審判の合図で開始線まで行き、竹刀を構えて蹲踞をする。
「始め!」
みんなを守る、部活の為に、チームの為に戦う。
それがオレの剣道だ。
まずは謝罪m(_ _)m
前回、試合に入ると言いましたが入れませんでした(ρ°∩°)
書きたいことがありすぎて……試合始まるまでにどんだけかかるんだよ(`o´)
本当にすみません(>_<)
次回こそ、試合に入ります!
ってか、この終わり方で始まらないとヤバイ(;¬_¬)
廃剣インタビューのネタが尽きてきました(-.-;)
案を出していただけると嬉しいなぁε=ε=┏( ・_・)┛
もし、リクエストも無し、作者が思いつかなかった場合、廃剣インタビューが無くなる可能性があります(・_・;)
なるべくリクエスト下さいp(´⌒`q)
では、Have a nice day!