表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最高な悪夢を見ていた  作者: なもゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/2

ソマーヴェル隊の失敗

 時は、1924年6月4日、英国エベレスト探検委員会のエベレスト標高約7000m地点、ノース・コルにある第四キャンプ。

 ジョージ・リー・マロリーは、第四キャンプの中で自分の机に向かい、作業をしながら、ソマーヴェル隊、の帰還を待っていた。

 しかし、マロリーの思っていた帰還とは、晴れやかな成功の帰還だと思っていた。

 何故なら、ソマーヴェル隊には、マロリー自身が高く評価するエドワード・ノートンと、友人のハワード・ソマーヴェルがいたからだ。

 ノートンは持久力や、判断力などを非常に優れており、ソマーヴェルについては山岳医としての腕も、登山者としても慎重で無理をしない。

 このことからも、マロリーは二人をとても信頼していた。

「ソマーヴェル隊が帰ったぞぉ」

 部屋の外からアルパイン(Alpine)クラブ(Club)の一人が叫んだ。それを聞いたマロリーは、すぐさま自身の部屋を出た。

(帰還が予定より早い。登頂中に何かあったのか?)

 テントの中は騒然となった。アルパイン・クラブの人間だけでなく、第四テントの人物全員が驚いていた。

 何故なら……

 テントの中に目を手で押さえたノートンと、その彼を支えているソマーヴェルが倒れそうになりながらも、駆け込んできたからだ。

 ソマーヴェルは、ノートンを支えてはいるが、のどを押さえながら激しく咳き込んでいた。

 見ただけでも非常に危険だと言うことが、はっきりとわかる。

「リチャード!」

 マロリーが、第四テント内のすべてに聞こえるほどの大きい声を放った。

「あぁ、分かっている」

 すでに医療主任のリチャード・ヒングストンが駆けつけていた。彼は彼で、顔が真っ青になっている。

 彼とキャンプの人間がソマーヴェルとノートンを医務室まで運ぼうとしていた。それを見てマロリーも急いで手を貸しに行った。


 ノートンはずっと目を瞑った上で、手で目を押さえていた。これを見たリチャードは、心当たりがあったようだ。

「紫外線による雪盲だ……」近くにあったタオルを素早く取り、ノートンに目を押さえつける。「明かりを消せ! すべてだ!」

 それを聞いた隊員たちは、素早くすべての明かりを消した。

(雪盲もそうだが、極度の疲労だ。登頂アタックの再挑戦は不可能だろう)

「いいか、ノートン。これから一切目を使う行動は取れないぞ」

「あ、あぁ。分かった」

 リチャードは、他の隊員に目を冷却させるようにと指示を出し、急いでソマーヴェルの方へ駆けていった。


 医務室まで運ばれたソマーヴェルは、言葉を発そうするが、咳がひどくとても喋れる状態ではなかった。

「感染症か?」マロリーが言った。

「いや……」リチャードが言いかけたが、ソマーヴェルが食い気味に言った。

「呼吸トラブルだ……ゴホッ、ゴホッ」

「即時下山はしたか?」

「も、もちろんだ」

 それを聞いたリチャードは少し、安堵の表情を浮かべた。

「マロリー、できる限りの毛布を持ってきてくれ」

 マロリーが急いで医務室の外にかけていくと、ずっと目を瞑っていたソマーヴェルが何かをつぶやいた。

「……は…いけ………」

 リチャードは、耳を近づけた。ソマーヴェルは息がまだ荒く、目は焦点が合っていなかった。

「上には…いけなかった……」ソマーヴェルの顔は苦しさと戦っていながらも、どこか悔しさを宿している表情だった。「今回は…山は…許してくれなかった……」

 そう言った彼は、気絶したように眠りについた。


 ソマーヴェルの処置が終わったリチャードは、マロリーに向かって話し始めた。

「彼は、高所の冷気や乾燥によって、のどの粘膜が腫れてしまい、呼吸が妨げられた状態さ」

「大丈夫なのか……?」

「あぁ、発症してすぐに高度を下げたため、今は大して問題ない」リチャードは、ラフな格好になり、再び話し始めた。「下山そのものが最大の治療さ。しかし、再び登れば再発しかねない。再挑戦は認められないな」

「そうか……」

 マロリーは、安堵の表情をした後、何かを覚悟したかのように自身のペンダントを握りしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ