表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/107

第97話 全面戦争 ― フェンリルとベヒーモスの激闘

リベルノア王国、イーストランド、魔王国――。

三国連合の五万の軍勢は、剣聖の国と四季連合国の二十万の大軍と対峙していた。

三ヶ月の間に備えを整え、魔物の数を削り続けてきたグランたち。

しかし、戦況はなおも拮抗し、押し引きの応酬が続いていた。

その最中――。

「な、なんだあれは……!」

兵の一人が絶叫する。

黒い雲を突き破り、地響きと共に現れたのは、災厄級をも凌駕する巨影。

全身を鎧のような甲殻で覆い、山すら踏み砕く四肢を持つ怪物――ベヒーモス。

ミリアの強化魔法を施されたその存在は、もはや「魔物」の域を超え、生ける災厄と化していた

第90話全面戦争

兵たちが恐怖に後ずさる中、ただ一匹の獣がその巨体の前に立ちはだかる。

聖獣フェンリル。

「……二千年前の失態を、繰り返すわけにはいかぬ!」

咆哮が大気を震わせ、戦場に轟いた。

次の瞬間、巨獣と聖獣が激突する。

衝撃で周囲の兵も魔物も吹き飛ばされ、まるで神話の一幕が再現されるかのようであった。


■劣勢と記憶

しかし、戦いは苛烈を極めた。

鋼鉄の如き巨腕が振るわれ、フェンリルは幾度も大地に叩きつけられる。

立ち上がるたびに傷は深まり、血が大地を濡らした。

「ぐっ……まだ……終わって……ない……!」

朦朧とする意識の中で、フェンリルの脳裏に過去の記憶が蘇る。

――「またフェンリルが失敗したらしいぜ。魔王の四天王って看板倒れか?」

――「弱いくせに、よく隣にいられるな」

嘲笑が耳に焼き付き、胸を締め付ける。

失敗を重ね、地に落ちた評判。

それでも、ただ一人だけは――魔王グランだけは言ってくれた。

『大丈夫だ。気にするな』

その言葉が、何度も彼を立ち上がらせてきた。


■仲間の声、そして進化

「こんな所で……負けてたまるか……! 動け……俺の体……!」

必死に吠えるフェンリルの頭の中に、突然声が響いた。

――「そうだよ。僕たち、みんなでフェンリルなんだ」

――「大丈夫だ。俺たちがついてる」

それは、かつて共に戦った仲間たちの声。

すでに失われたはずの魂が、彼の背を押していた。

その瞬間、まばゆい光がフェンリルを包み込む。

毛並みは銀に輝き、瞳は黄金に燃え、身体は神々しい威厳を帯びて変貌していく。

――神獣フェンリル。

伝承にすら語られることのなかった、新たな姿がそこにあった。


■決着

「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

天地を揺るがす咆哮と共に、神獣フェンリルが最後の一撃を解き放つ。

全身を駆け巡る力が牙へと収束し、閃光の如き一撃がベヒーモスの巨体を貫いた。

轟音。

血煙。

巨獣は断末魔を上げ、地を揺るがして崩れ落ちた。

勝利の瞬間、フェンリルの身体から光が消え、元の聖獣の姿へと戻っていく。

しかし、その体は限界を超え、力尽きて地に伏した。

「フェンリルっ!」

兵たちが駆け寄り、彼を救護室へと運び出す。

戦場は一瞬、静寂に包まれた。

兵士たちは誰も言葉を発せず、ただその背中を見送るしかなかった。

だが、その沈黙は恐怖ではなく――確かな敬意と畏怖の証であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ