第95話 ひかりと仲間たちの出会い、そして決意
翌日――。
ひかりが召喚されてから、グランたちとの正式な対面の場が設けられた。
大広間の扉が開き、緊張の面持ちを浮かべたひかりが案内役に導かれて歩み入る。
整列していたのは、グランを中心に、セレナ、こはる、フェンリル、ユエ、ナツ、そしてクレア。
全員の視線を受けて、ひかりは小さく深呼吸をし、丁寧にお辞儀をした。
「……はじめまして。ひかりです。私は――この世界に来る前、日本という国にいて、蓮とは、施設で出会いました」
その言葉に、セレナとこはるが一瞬だけぴくりと反応する。
(またライバルが増えたかも……)
可憐な容姿と、蓮との繋がり。ふたりの胸に不安の影が差し込む。
だが、それはすぐに続いたひかりの言葉で和らいだ。
「……蓮は、私にとって憧れの人でした。いつも笑っていて、優しくて、辛い時にそばにいてくれた。あの頃の私は孤独だったけれど、蓮だけは……心に光をくれた人だったんです」
その真っ直ぐな想いに、セレナもこはるも安心したように息をついた。
(……そういう意味での“好き”か。なら――まあ、よし)
グランが一歩前に進み、穏やかな笑みを浮かべる。
「改めて、ようこそ。俺はグラン。この世界で……少しややこしい立場にいるけど、仲間として歓迎する。よろしく」
セレナが優雅に一礼し、軽やかに声を添える。
「私はセレナ。吸血鬼の一族で、グランの仲間。少し気が強いけど、よろしくね」
こはるは真っ直ぐな目で微笑んだ。
「こはるです。獣人の剣士で、グランさんと一緒に旅をしています。よろしくお願いします」
フェンリルはのんびりと手を挙げて、にっこりと笑う。
「フェンリルだ。グランの昔の側近。今はのんびりしてるけど、力が必要なら任せとけよ」
ユエは静かに一歩前に出て、短く告げる。
「……ユエ。元は悪魔。今は、主に仕えている」
ナツは元気いっぱいに手を挙げた。
「ナツっていいます! ユエの息子です。よろしくね、ひかりさん!」
最後にクレアが優雅に手を差し出した。
「私はクレア。この国の王女です。これから、しばらく一緒に過ごすことになると思うけど、気軽に話しかけてちょうだいね」
「はい……ありがとうございます」
緊張の面持ちのまま、けれどひかりは皆のあたたかい歓迎に微笑みを返した。
やがて窓の外を見つめながら、ひかりは小さく呟く。
「……ここ、日本じゃないんだね」
蓮が静かに頷き、グランが口を開いた。
世界情勢、剣聖の国、四季連合国との対立、そして迫る戦争――。
全てを聞き終えたひかりは、真剣な眼差しで蓮を見つめる。
「……私、蓮の力になりたい。あの時、私を助けてくれたから……。今度は私が、蓮を支えたいんです」
その言葉に、蓮はわずかに目を伏せ、苦しげに答える。
「……ひかり。ありがとう。でも、これは戦争なんだ。命をかけることになる。できれば……君には、そんな場所にいてほしくない」
ひかりはほんの少し寂しげに微笑み、静かに頷いた。
「……分かりました。じゃあ、私はここに残ります。クレアさんと一緒に、この国を守ります。蓮が帰ってくる場所を……私が作ります」
その決意に、蓮もまた微笑んだ。
(あの時、蓮が手を差し伸べてくれた。次は私が、蓮の力になる――)
ひかりの胸に芽生えた想いは、確かな決意となり、この世界の未来へと繋がっていくのだった。




