第77話 魔王として立つ者 ― 未来への誓い ―
◆魔王国の地にて
重く冷たい空気が漂う中、グランを中心とした一行は、かつて魔王国と呼ばれた荒廃の地へと戻ってきた。
瓦礫の街、崩れかけた砦。だがその道を仲間と共に歩む先には、再び希望の光が灯されようとしていた。
魔王城に到着したグランは、直ちに各地の代表者へ緊急招集をかけた。
会議室に集まったのは魔族の要人、かつての配下、そして旧時代を知る古き者たち。
その場に立つグランの瞳は、静かに燃える決意を宿していた。
◆魔王の宣言
「……本日より、俺は“魔王”として再び立ち上がる」
その第一声に、ざわめいていた空気が一瞬にして凍りつく。
誰もが息を呑み、耳を傾けた。
「今、世界は大きく動いている。
剣聖の国、そして四季連合国――彼らは手を取り合い、世界を掌握しようとしている。
その目的はただの同盟ではない。“支配”だ。
この魔王国の地もまた、戦いの渦に巻き込まれる運命にある」
言葉を切り、グランは全員を見渡す。
「俺はかつて魔王だった。そして二千年前、“守るため”に戦い、すべてを失った。
だから今度こそ、同じ過ちを繰り返さない。俺は再び立つ。
だが、もう一人じゃない。イーストランド――俺の“故郷”と手を結び、人と魔の間に道を拓く。
この戦いは過去の清算じゃない。“未来”のための戦いだ」
その力強い言葉に、場の全員が息を詰めた。
◆仲間たちの覚悟
最初に声を上げたのは、かつて共に戦った魔族、シスだった。
「……お前がそうしたいなら、迷う理由はねぇ。
俺たちは“あの時”から変わったんだ。
今のグランは、ただの王じゃねぇ。“背負う者”としての覚悟がある。
だったら、俺はいくらでも力を貸す。今度こそ、俺たちで終わらせようぜ」
続いて精霊が立ち上がる。
「私も……契約者として、グランの意志に従います。
あなたが選んだ道は、私が望んだ未来でもある。命を預ける覚悟は、とうにできています」
ユエは鋭い眼差しを向け、毅然と告げた。
「異論はありません。……二千年前、主が選んだ道を私は最後まで見届けられなかった。
だから今度こそ、最後まで共に在りましょう。主が魔王であること――私は誇りに思っています」
レイスもまた拳を握り、真剣な声で言った。
「うん。僕も覚悟はできてる。グランがこの国を、この世界を変えようとしてるなら、僕もついていくよ。
昔みたいに誰かを傷つけるだけの戦いじゃない。守るための戦いなら、迷わない」
その場にいた誰もが、目の前に立つ存在を“魔王グラン”として認めていた。
◆新たな時代へ
やがてグランは魔王国全土へ通達を発する。
――魔王復活。
――イーストランドとの正式な同盟締結。
その報せは瞬く間に広がり、世界の均衡は再び大きく揺れ動き始める。
◆闇に潜む影
一方その頃、暗き部屋にて。
“あの人”と呼ばれる存在が玉座に身を預け、薄く笑みを浮かべていた。
「……いよいよか。ようやく舞台が整ったというわけだな。
さあ、踊ってもらおうか、“魔王グラン”……」
その言葉は不気味な余韻を残し、戦乱の気配は世界の隅々にまで忍び寄っていった――。




