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第72話 勇者との邂逅 ― 迫りくる再編の影 ―

◆すれ違う視線

一夜が明け、王国は静けさを取り戻しつつあった。

グランたちはミシェル女王、クレア王女、ルーク王子を護衛しながら、元の国への帰路についていた。

街道を進む途中、別の使節団とすれ違う。

四季連合国の旗を掲げ、その護衛には新たな冒険者パーティーの姿があった。

その中心に立つ少年――間違いなく“勇者”だ。

グランと勇者の視線が交わる。

言葉はなくとも、互いに感じ取ったのはただ一つ。

――力と宿命。

やがて視線は離れ、馬車は走り去っていく。

勇者は何も言わずに目を伏せ、グランもまた空を仰いだ。

その眼差しには、静かな決意と、言葉にできぬ哀しみが滲んでいた

第73話一夜が明け


◆密やかな密談

同じ頃、四季連合国の中心地では、重厚な扉に閉ざされた会議室に各国の王や代表が集まっていた。

そこには勇者パーティーのメンバーも同席し、巨大な円卓を囲んで座している。

「――剣聖の国との同盟は、想像以上に有益だった」

「世界を再編するには力が必要だ。その力を我々は手に入れた」

国王たちの声は昂揚を帯び、室内は熱を帯びていく。

「次の段階は、“魔王国の完全消滅”だ」

「そして――我々の“新国家”の建設」

各国の王たちは頷き合いながら言葉を交わす。

「新たな秩序を築く。それは、剣聖と勇者を神の如く崇める国だ」

「下民どもからは重税を徴収し、我らはその頂点に立つ……!」

その場にいた勇者が静かに口を開いた。

「世界は力のある者が支配すべきです。

 混沌の時代が再び訪れるなら、我々がそれを正しましょう。

 支配とは悪ではありません。“秩序”なのです」

「さすがだ、勇者。頼もしい」

王たちは満足げに頷き、ますます自らの計画に酔いしれていった。

◆狙われる王女

だが、会議はそれだけでは終わらなかった。

「そして……この再編には、もう一つ必要なピースがある」

「クレア王女の王国だ。あの国も我々の支配下に置かねばならん」

「すでに“婚約破棄”は済んだ。次は強制的な“政略結婚”だ」

別の王が冷酷に告げる。

「王女を我が息子に嫁がせ、王権を手にする。象徴さえ手に入れれば、あとは我々の意のまま」

「問題があれば……事故に見せかけてすげ替えればいい」

冷たく吐き捨てられたその言葉に、誰一人として異議を唱える者はいなかった。


◆蒼き魔族の影

その時、重い扉が開き、一人の魔族の女性が現れた。

「紹介しよう。我らの“切り札”だ」

姿を現したのは、蒼きドレスを纏い、冷たくも妖艶な気配を纏う女性。

その名を呼ぶ声が響く。

「2000年前、魔王国で“四天王”の一角を担った魔族。

 “海の化身”と恐れられた存在――リヴァイアサンこと、ミリアだ」

彼女はゆっくりと微笑み、円卓を一巡するように視線を巡らせた。

「――また、人間たちは愚かな夢を見ているのね。けれど……それも悪くない」

「戦乱の中でしか見えない真実がある。私はそれを見届けるために来たのよ」

「私の力が必要なら……貸してあげる。あなたたちの“未来”が、私を楽しませてくれるのなら、ね」

その声は甘美にして冷酷。

円卓に集った者たちは酔いしれるように頷いたが――

その瞳の奥には、人間の運命を弄ぶ闇が揺らめいていた

第73話一夜が明け


◆新たな時代の幕開け

この瞬間――

世界は新たな戦乱の時代へと、確実に歩みを進めていた。



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